43話:歓迎パーティー
時計の針が午後6時を指そうとしている頃、僕はそっと部屋の灯りを落とした。真っ暗な部屋の中、僕はわくわくしながら岳と待機していた。
もう少し、あと少し。合図は6時の鐘が鳴ってから。緊張と楽しみと、上手くいくかどうかという不安が混じりあう。若干汗ばんできた左手をきゅっと握りしめ、気を落ち着かせる。
「岳、ok?」
「大丈夫だよ」
僕とは違い、冷静な岳の声。彼とコンタクトをとっていると、カチリと何かがはまるような音がした。同時に鳴り響く、7時を知らせる時計の音。それに合わせて、ガチャリとこの部屋のドアの開く音。
「星夜? 岳? 帰ったよー、ただいまー。……って、え、何でこんなにくら……」
依頼から帰ってきた雅華の声が聞こえるや否や、僕は部屋の灯りをつける。目の前には、翔と雅華。彼らがどんな顔をしているかなんて全く気にせず、僕は再び岳と素早くコンタクトをとると、2人同時に手元のクラッカーを引っ張った。
パァン! と弾ける音と中身。赤、白、黄色、青、緑といった紐や紙吹雪が舞い、2人を歓迎する。
「な、何よ、これ……?」
「クラッカーか? ……何の為に……?」
驚愕する、というよりは状況について行けてないような2人の声。なんだなんだなんだ、解らないのかね君たちは。本当は解っていただきたかったのだが、まぁ仕方ない。困惑する彼らに向かい、ふふっと笑いながらネタばらしをすることにした。
「実はですねぇ。翔と雅華のためにパーティーを開いたんですよ!!」
そして額と顔を見合わせて、2人で同時に。
「翔! 雅華! テロリストへようこそ!」
満面の笑みで、彼らを歓迎する。岳は微笑していた。
「えッ……えぇ? こ、こんな豪華なパーティーを? わ、私たちの為に……?」
「マジかよ……! すげぇな……有り難う! めっちゃ嬉しい……」
2人の感嘆の声をいただいたところで、ソファに腰掛けた。その後、それぞれのグラスにオレンジジュースやらウーロン茶らやをつぎ、乾杯の合図でグラスを合わせる。チンッ、と特有の音が響いたところで、皆は中身をいただく。
壁や天井には折り紙をわっか上に繋いだ飾りや、太いきらきらしたモールのようなパーティーグッズを装飾。
赤と白のチェック柄がおしゃれなクロスの引かれたテーブル上には、揚げたて故にジュワジュワと油のあふれ出す唐揚げやとろとろチーズのピザに、これまたチーズがふつふつと踊るグラタン。生クリームやベリー類をふんだんに用いたホールケーキや、色とりどりのマカロン。とりあえず上げだしたらキリがない、たくさんの食べ物がそこにはあった。
「こ、これ、すげぇなおい……一体どうしたんだ……?」
「んふふふふッ」
翔の言葉に、僕は得意げに笑った。部屋の装飾は岳が担当。そして、目の前の料理は僕が主に作ったやつなんだよね~。途中、岳に手伝ってもらったり、彼に作ってもらったりしたけれども。
「とりあえず、なんでもいいから食べないと。せっかくの料理が冷めちゃって台無しだよ」
そう言ってサラダを口にする岳。シャキシャキシャキシャキ。新鮮な音が伝わってくるのと同じくして、彼の表情が微妙にだけど変化する。この変化はきっと僕にしかわからないもの。美味しいのであろう、嬉しそうな顔をして食べる。うーん、サラダはなんというか野菜農家さんの腕が主だから、僕が作ったとはちょっと言いづらいんだけれども……。でも僕がその野菜農家さんだったらすっごく嬉しくなって、これからの野菜作りに精を出しちゃいそうなほど、彼は美味しそうに食べていた。
「あっ、そうだ。このケーキを切り分けたいと思うから、お好みの大きさ教えてねー」
「星夜。僕は小さめのでよろしくね」
発言者は岳。彼は生クリームといった甘すぎるものが苦手らしい。甘すぎる、が苦手なので、多少の糖分は大丈夫のこと。甘いものもそれ以上のものも、美味しいと思うんだけどなぁ。それにこのケーキだって僕が1人で頑張って作ったんだから、食べてほしいところ何だけれども。苦手ならば仕方ないよね。
「おうけぃ」
残り2人はサイズにこだわらないらしいから、僕が少し大きめのものをもらった。とはいっても主役はあくまでも彼らなので、彼らには飾りとしているベリー類を少し多めにして切り分けた。
それから先は皆で楽しくおしゃべりしたり、テロリストの活動方針を説明したり、料理を食べたりとどんちゃん騒ぎ。主役の2人がとても楽しそうにしていたからほっとした。これでテロリストに馴染んでくれたらいいんだけどな。もので釣るわけじゃないけれども。
時刻は午後9時を少し過ぎた頃。パーティーも幕を閉じ、適当にチャンネルを回しながら団欒していたとき。
『さぁ、今年もいよいよ開催目前となりました! 己の銃の腕前を試せ! 皆様お待ちかねッ、イーラ主催の”狙撃大会”……――!』
とある1つのテレビ局では、元気いっぱいの女性アナウンサーがこんな報道をしていたのだった。




