41話:本日のまとめ
お風呂から上がった後、僕はとある1つの部屋の前に佇んでいた。
部屋の主も、僕らが上がってすぐに入り、部屋へと向かう姿を目撃したから、ここにいるであろう。
「岳、いる? 入っていい-?」
コンコン、とノックをしながら部屋の主、岳に問った。
「いいよ。どうぞ」
了承を得たところで、ドアを開ける。
岳の部屋は薄暗く、ベッドのそばに置かれた机上のランプがほのかに暖かな光を灯していた。彼はベッドに腰掛け、読書をしていた。
「うっはぁ。相変わらずシンプルな部屋だねぇ~」
彼の部屋内は、机、本棚、タンス、ベッド、ランプやそれを置く小さな机、備え付けのクローゼットといった、至って必要最低限なものだけのシンプルな部屋だった。
「シンプルも何も、星夜の部屋が余計なもので溢れているだけだろ」
そう指摘され、何も言えない。自分自身の、可愛い動物のぬいぐるみで溢れかえった、お世辞にもきれいとはいえない部屋を思い出す。ま、まぁそれもそうなんだけどさぁ……
「だ、だからって、壁紙も初期の真っ白なままで、カーペットも水色ってシンプルすぎない!?」
「星夜の部屋は……ああ、そうか……。まぁいいや。ところで、何かあってきたんだよね。いいよ、隣どうぞ」
僕の部屋についての言葉を濁されていて、すごく気になるけどまぁ置いておこう。
「ありがとう」
促されたとおり、彼の隣に腰掛ける。ポフッと、ソファに劣らぬ柔らかさが伝わってくる。
「……実はね。雅華の方が大きいと知ってショックを受けましたッ! 何なのこれ格差社会!? というわけで、僕ももっと大きくしようと思いました……はぁ……生キャベツ!!」
「……星夜。何のことを言っているのか解らないんだけど」
絶望的な僕を、岳が冷めた目で見てくる。ああー違う違う、こっちじゃないこっちじゃない。
「ああ……ごめんごめん。いや、翔と雅華が加入して、随分賑やかになったよね。あっ、明日は歓迎パーティーしようね!」
本当賑やかになったと思う。初めは僕と岳しかいなかったから、なんというか盛り上がりに欠けていたから。
「それなら大賛成だよ。……それで? 他に何かあるんだろう?」
「うん。それでさ、僕……もっと強くならなきゃな、と思ったの」
「そうなの?」
岳が驚いたように聞いてくる。僕はそれに対し頷く。
「うん。僕はよく感情的になったりするからさ。今日だって岳に止められていなかったらどうなっていたか……僕、リーダー向いてないなぁ」
「そんなことないよ。皆をまとめあげて、笑顔にしてくれる星夜は、立派なリーダーだよ」
岳が褒めてくれる。それがなんだか、ちょっぴり嬉しかった。
「有り難う。もっと強くならなきゃ、だね!」
えへへっと笑う。それに対し、彼は何かを思い出したような顔をして言った。
「……翔といえばさ」
「うん?」
「僕らに何かを隠しているよ、彼」
「えっ!」
翔が、僕らに隠し事をしている!? いやでも、隠し事というか、話したくないことの1つや2つはあるんじゃないかな……? 僕だって、忌まわしい過去を雅華と翔に語ってないし……語る必要だって、どこにもないし。寧ろ、聞いた方も話す方も気分が暗くなるだけだし。
「隠しているというよりは、なにかあるんじゃないのかな。主に、組織のことに対して。解散の話をしているとき、どこか悲しそうだったんだ」
「そうなんだ。忠告有り難う」
忠告かどうかは解らないが。そこで、僕も1つの物事を思い出す。
「あ……そうだ」
「ん?」
身体と顔を岳の方に向けて、神妙な顔で話す。
「黒幕のあいつ、言ってたんだ。魔法反対派の殺害がどうのって……」
それを聞いた岳の顔が強ばっていくのが解る。どうやら、彼も僕と同じ結論に辿り着いたようだ。
「……そんな、まさか……」
僕と同じ反応。考えたことは同じ、と断定してよいだろう。魔法反対派。殺害。
そう、実は、魔法反対派の殺害を目的とし、活動している組織がいるという噂があるのだ。
本当は口に出したくない。噂ではなく、本当に実在するから。そして、まさか本当に実行するとは思っていなかったから。
いつか、向き合うことになるかもしれない組織の名前。
「まさかだけど、関わっているのかもね。魔法反対派殺害組織、”イグジスタンス”が……!」




