13話:依頼人は令嬢様
「どうぞ」
岳が気を利かせてくれて、僕と少女の前に、ティーカップを置いた。
「あ、ありがとー。……もう大丈夫なの?」
「まぁ、完全ではないけれど」
短く答えると、彼はキッチンへと戻っていった。
「あ、ありがとうございます。……いただき、ますっ」
少女はおずおずとティーカップを両手で持ち上げ、口へ運んだ。「お、おいしい……」という感嘆の声と共に、幸せそうな表情が浮かぶ。僕も彼女同様、レモンの浮かぶ紅茶をいただく。
口に広がる、甘さとレモンのハーモニー。レモンティーか……それにしても、岳の入れる紅茶はおいしいなー。なんかこう、茶葉をお湯に入れてから、取り出すまでのタイミングが絶妙だから、おいしいんだよな。僕がやるといつも、薄かったり極端に濃くなっちゃう。
「んで、星夜。この子に何を聞くの」
戻ってきた岳が、隣に腰掛け足を組む。……それ、失礼なんじゃないの。
心では言うものの、口には出さないでおいた。
「急に引き留めちゃってゴメンね。ちょっと、いろいろ聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」
「あ、はい」
彼女はコクッと頷き、了承してくれた。
「……そういえば、名前、まだ言ってませんでした……。私、瑞希雅華っていいます」
ほぉ……雅華ちゃんか……って、何その名前!!? 何その如何にも美人お嬢様って感じの名前!? 名は体を表すとは、まさにこのことッ!
僕が驚愕していると、隣で岳がピクッと動いたような気がした。
「瑞希、って、まさか……だけど。まさか、あの大規模を誇る呉服屋のことか……?」
「……? そうですが」
岳が少しだけ、目を見開く。……え、ちょっと待って、どういうこと。話についていけないんだけど。
「え、岳。どういうこと?」
「この子は全国に展開する呉服屋の、社長令嬢様だよ」
「え……ッ、え、えええぇえええぇええ……!!?」
驚きを隠せず、絶叫。まさか、嘘でしょ!? 本物のお嬢様だったの……? な、何でそんなお嬢様が、戦闘を依頼しに来たの……?
「ところで、話って何でしょうか……」
雅華ちゃんの不安げな声で、我に返る。……ああ、そうだった。その理由を、今から聞くんだった。
僕は一回深呼吸をして、真剣に彼女に向き合った。
「ご、ごめんね。えっとね、僕は……どうして雅華ちゃんが戦いを申し込んできたのかを聞きたいんだ。何か、理由があるんだよね?」




