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【旧版】魔法の世界でテロリズム【更新停止】  作者: 雛星のえ
第2章 / 危険な依頼人?
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11話:僕に出来ること

 岳は激戦を繰り広げている。依頼とはいえど、容赦はしない。

 こうしている間にも、岳の体力は、魔力は、鎌の耐久値は削られていく。

 ――なのに。対して、僕は。戦闘に向いていないという理由で、彼の後ろで何もせず、ただ傍観しているだけ。

 彼の助けになりたい。僕に――僕に、何か出来ることは……!!

 目を固く閉じ、拳を握り悔しがる。こんなことをしている暇があったら、考えろ、考えろ、考えろ。

 その時、1つの考えが思い浮かんだ。僕が、≪時間操作≫以外に使える魔法。それを使えば……――いや、ダメだ。

 即座に否定する。あれは、ダメだ。何度やっても、成功しなかった。だからきっと、今も。彼の助けになんてなれやしない。

 だけど……――もし、成功したら? 彼の助けになれたなら?

 心臓が早鐘を打つ。そして、1つの結論を導き出す。


 ――成功しなくていい。彼の助けになれれば、それでいいんだ。


 カッと目を見開くと、自分の魔法媒体である万年筆を取り出し、空中に文字を書き連ねる。

「エレメント! ファイア・ボム!」

 ≪爆弾組成≫。エレメントの後に、欲しい種類の爆弾名――例えば氷の爆弾ならばアイスボムなど――を唱えることによって爆弾を組成させる魔法。、成功率は、今のところ著しく低い。

 お願いッ、上手くいって……!!

 祈りながら形成されたのは、親指と人差し指をくっつけて出来る、輪っかほどの小さな火の玉。一見ショボいが、これでも当てた相手を火傷させたり、ちゃんと爆発したりする。万年筆を握り、ボールを投げるようにして弧を描く。その動きと共に、爆弾が弧を描く。

 ボール投げは得意ではないが、距離は十分にあった。しかし、火の玉は少女との距離を縮めるにつれ、やがて消滅してしまった。

 それでも。

「え……ッ!?」

 鍔迫り合いをしていた少女の注意がこちらを向く。その一瞬を、僕は、岳は、逃さない。


「岳……!」

「解ってる!」

 岳は返事をすると、勢いよく少女の刀を振り払う。こちらに気をとられていたせいで、少女は咄嗟に反応できない。岳が、鎌を横に倒し、水平に左から右へ。切っ先が、彼女の腹部を切り裂いた。

 ブシュッ……――と、切り口から鮮血が吹き出す。

「な――」

 信じられない、とでもいうように大きく目を見開く少女。それと同時に、草原の風景が、ノイズのように荒く振動する。カシャン……――、微かなガラスの破砕音を立て、風景をもといたリビングへと一変させる。

 不思議なことに、争った形跡が見られなければ、僕も岳もソファの前で立ったままだった。

 今までのは、夢だったのだろうか。だけど、岳の手には大きな鎌が握られており、彼は肩で息をしている。それが、なによりの証拠だった。


「岳、有り難う。……お疲れッ」

 微笑をして、彼に語りかける。

「ああ」

 短く返事をし、鎌を消滅させる岳。そして、相当疲れているのだろう。深呼吸をすると、ソファにドカッと腰掛けた。そんな彼の額には、らしくもなく汗が滲んでおり、服も若干汗ばんでいた。

 当の少女はと言うと、傘を持ったまま、ソファにぐったりと座り込んでいた。


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