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ギルド長

 ランドリザードの死体からギルドで買い取ってくれる鱗を剥ぎ取る。ランドリザードの鱗は防具に使え倒せる者自体が少ないため高値で売れる。

 鱗を剥ぎ取りながらサーストはランドリザードの命をいとも簡単に奪った刀の力について考える。


「まだ、完全には扱いきれていないな」


 サーストの刀は帝国の侵略時、城から唯一持ち出せた国宝の本から召喚されたものだ。本の内容は代償召喚魔法の方法であり、本も代償として払うため一度しか使用できない。国宝の本とその他多くの代償を払って得た刀であるこの刀ーーー闇斬りーーーはまさにサーストの目的である復讐の為に生まれてきた。

 何度か闇斬りの感覚になれるために使ってみたがその力は絶大だった。何もかも抵抗という抵抗もなく斬ることができる。

 サーストは闇斬りを人に見せたことは今まで一度も無かった。復讐を成功させる為に必要であり、実力者が見れば闇斬りの禍々しさを感じ取られるからだ。必要最低限以下の使用回数しかない闇斬りをまだ完璧にサーストは扱いきれていない。





「ふぅー。これで終わりだな」


 人間の数倍はあるランドリザードの全身から鱗を剥ぎ取り終わると二つの大小の袋に入れる。大きな袋はギルドに売るためのものだ。本来、ランドリザードとの戦いは熟練のハンターでも長時間かかり、かつ一撃で仕留められないため必然とランドリザードの全身に攻撃する羽目になる。その為、売れる鱗の数は減ってしまう。

 だが、サーストは前脚と首へのニ撃で殺してしまった為、売れる鱗の数が多くなってしまう。それでは目立ちすぎてしまう。そもそも、ランドリザード討伐の依頼自体、ある程度目立つことを覚悟して受けたのである。これ以上、目立つのは復讐の邪魔となる。






 ギルドにサーストが戻ってきたのはギルドカードを作って以来であり、実に一週間ぶりである。ランドリザードが住む森まで往復で六日、討伐を終え森から出た時にはもう夜だった為、近くの村で一日を過ごした。

 初めて来たときと同じように迷うことなく受付嬢に近づき話しかける。


「済まない。依頼の報告をしたいんだが」


「はい。それでしたらギルドカードのご提示をお願いします」


 サーストから受け取ったギルドカードを見て受付嬢は驚きの声を上げる。


「えっ、うそ。しょ、少々お待ちください」


 そのまま奥の階段を上がり二階に上がっていく。

 サーストにとっては運よく周りにハンターの数は少なく、あまりサーストを気に留めるハンターはいない。

 しばらくしてから、受付嬢は降りてくるとホッとした様子でサーストを二階に上がるように促す。


「ギルド長がお呼びですので、一緒に来ていただけますでしょうか」


 流石に、その声を聞いていたハンター達はサーストを見るが、彼らからの位置ではサーストの背中しか確認できない。


「はい。わかりました」


 顔を確認されないように歩きながらギルドの二階に上がっていく。

 二階には幾つか部屋がありギルド長の部屋は一番奥である。ギルド長の部屋の扉を見て、受付嬢に気づかれないように薄らと笑う。

 受付嬢が扉を叩く。


「ギルド長、例の人物をお連れしました」


「入れ」


 たったそれだけの言葉の中に迫力のある重みを感じる。

 中に入って最初に見たのは全身に古傷の残る巨漢である。


「おう、来たか。とりあえず座れや」


「はい」


 ギルド長の正面に座るとギルド長が口を開く。


「済まなかったな坊主。わざわざ呼び出して」


「いえ、構いませんが」


「呼び出したのはなこっちの不手際でランドリザード討伐依頼の許可をだしちまったことなんだ。なあーリーナ」


 名前を呼ばれた受付嬢であるリーナは少し顔を青くする。


「申し訳ありません。サーストさん。前日の徹夜で疲れておりまして」


「そこのリーナから登録したばかりのハンターにランドリザード討伐依頼を許可しちまったって聞いた時には死んだなと思ったが、まさかランドリザードを倒してくるとはな。若い割にいい腕だ」


「いや、良いんです。もともと受ける気でいたので。むしろ止められずラッキーでした」


「ハハハッ。まあギルドとしては実力者が入ってくれるのいいことだしな」


 豪快な笑いを浮かべるギルド長。見た目とは裏腹に親しみやすそうな人物である。


「まあ、今日はランドリザードを倒しちまった将来有望なお前さんの顔を見ておこうと思ってな。それだけだ」


「そうですか。それではこれで失礼します」


 席を立ち、部屋から出ようとするサーストを止めるギルド長。


「おっと。わざわざここまで来てもらったからなランドリザードの素材買い取りもついでにしてやるよ」


「ありがとうございます」


 鞄の中から大きな袋を取り出しギルド長に渡す。ずっしりとした袋に入ったランドリザードの鱗の状態を確認していく。

 しばらく確認した後、懐から金貨と銀貨を1枚ずつだしサーストに渡す。


「なかなか状態もいいし、金貨1枚ってとこだな。それと、銀貨はわざわざここまできた手間賃だ。後は特別にランクをCにしておく」


 ハンターのランクはGから始まり上はSまで存在する。一般的に登録したての駆け出しハンターはGから始まるが依頼はEランクまでの依頼ならランクに関係なく登録さえしていれば誰でも受けれるので、実力のあるハンターはEランク依頼を受けすぐにEランクまで上げる。だが、多くのハンターはCランクで止まりBランクまで上がるのはハンター全体で見れば10%にも満たない。


「いいんですか?一ハンターを優遇して」


「別に構わしねーよ。ギルドからの口止め料だ。こんなことが頻繁にあるとお前さんみたいな実力者を除いてハンターの数が減っちまうからよ」


「それでしたら有難く受け取らせてもらいます」


 受け取った金貨と銀貨をサイフの中に入れる。


「おう。じゃーな坊主」


「それでは失礼します」


 ギルド長の横に立つリーナに一礼するとそのまま部屋から出る。

 目立たないように階段を降りたサーストはギルド長の部屋に入る時と同じように薄らと笑いながらギルドから出ていった。








 

 






 

 












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