降りかかった依頼(5)
(いやそれより、コイツ今とんでもねぇこと言わなかったか?)
冷や汗が背中を伝う。
こうなる可能性も予想しなかった訳ではない。
だがバークオルドをきちんと通しての依頼と言うこともあり、まさか幻将を消して来いなんて内容だとは思っていなかった。
いざとなれば逃げる程度なら可能かとも考えていた。
「俺一人引き止めるためにここまで大それた事やるか?普通」
辛うじて営業用だった口調が完全に素に戻る。
もう立場など知るかと言った状態だ。
「分かってくれて嬉しいよ。手間をかけた甲斐があった」
宵闇が諦めたのを確認し、アスベルは笑みを深めて座るよう促した。
「あんたのタチの悪さはよくわかったよ」
低く呟いてさっきまで座っていた所に再び腰を下ろす。
浮いていた少年もアスベルに近づき、着地した。
「では、続きを話すとしようか」
何事もなかったかの様にアスベルはそう言うと、横に立ったピエロ服の少年へ視線を向ける。
「私も君一人に任せるのは少々心もとなくてね。
助っ人を彼に頼んだんだ」
「子どもじゃねーか。あんたの部下か何かか?」
「失礼だね。見た目で判断しないでほしいな~」
不遜な態度を隠そうともしなくなった宵闇の言葉に少年が頬をふくらませる。
その様子はどこからどう見ても子どものそれだ。
アスベルは苦笑して首を振る。
「部下に出来れば有能なんだろうけどね。
彼の名前はフィレット=ルーン。聞いた事はないかい?有名人のはずだけど」
「・・・フィレット?
姿が違うけど・・・まさかあの?」
宵闇は目を疑う。
出された名前の人物は確かに有名だ。隣の島・徒人の国では知らない者はいないし、この島の情報屋が売っている冊子に刷られた銀板写真でも見た事がある。
だが、どうにも目の前の人物と似ても似つかないのだ。血縁だと言われれば納得できる程度には印象が近いものの、知識にあるより軽く十以上は若すぎる。
宵闇の様子に、少年は面白がるように近づく。
「普段はちょっとした方法で年上に見せてるしそれらしく振る舞ってるだけ。その方が色々と便利だからさ。
ずっとそうなのは疲れるから、解ける時は解いてる」
言いながら無邪気に笑って勝手に宵闇の右手を握る。
「初めましてだね。僕がその徒人の島の幻将さ。
少し訳があって今回の件に関わることになったんだ。
よろしくね」
まだ半信半疑だが、相手が嘘をつく様な理由が見あたらない。
宵闇は何とも言えず、無言で手を握り返した。




