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Lost fragment ーロスト・フラグメントー  作者: Konori
第1章 翼島編(1)
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序章(3)

「俺が優しいみたいな言い方やめろ。無駄に疲れたくないだけだって」

「それを優しいって言うんだよ。オレみたいなのと比べたらな」

自嘲じみた苦笑が返って来る。

「けどまぁお前の、そーゆーのを口だけじゃなく貫ける所は尊敬してもいるんだぜ?

大きい争いもねえし、こっちの仕事が減ってきてるのは良いことだろうしな」


そう言って液体の入ったガラスコップを傾け、ふいに紺髪の青年は真顔になった。

「ただ、場合によっちゃその甘さは枷になる。さっき親父さんが心配してたぞ」

「心配?」

宵闇の顔が訝しげになる。

ラグの言う通称『親父さん』こと商会を束ねるバークオルドは、剛胆を絵に描いたような大男で部下の帰りが少し遅れた程度で心配するような小心な人物ではない。有り金全部賭けてもいいぐらいだ。


顔を前に向けたまま、瞳だけを宵闇へと向けてラグが続ける。

声はさっきまでより幾分か低く小さくなっていた。


「面倒な依頼がな・・・・・・多分城の奴から。

詳しい事はオレもわかんねえけどお前をご指名だそうだ。

昼間、親父さんが使いで来たとかってガキと長々話してた。扉ごしで多分術で聞き耳封じもしてたからよく探れなかったけどな」

「何だよそれ。そんなの一言も聞いてねえぞ?」


帰ってきてすぐ傭兵ギルド本部へ任されていた依頼が無事に終わったと報告に行っているし、それから今までに他の仲間とも少し話したが誰からもそんな話は聞かなかった。

「・・・・・・」

無言で他の席に座る同僚達へと目を向ける。

談笑する者。

愚痴を叫ぶ者。

料理や酒を口に運ぶ者。


その様子に変わった所は見当たらないが、自然と周りを見る目に疑念の膜がかかる。

自分に関係することを自分が知らないのは正直気持ち悪い。


「いや、その事自体知ってんのはオレ含めて数人しかいねーよ。口止めされてるし」

俯いて無言になる宵闇に、ラグはわざと大きく肩をすくめて「でもオレ、余計なこと言いだから」と笑う。


「お前のことはお前が知っとくべきだと思ってな。

ただ、依頼は断ったらしいし親父さんが隠してるのはお前のためかも知れねえ。

ほとぼり冷めた頃に尋ねてみたらいいんじゃねえか?」

「・・・そうする」


予想外のことに自分でもどうすればいいのか判断がつかない。自然と声が沈む。

隣の青年は宵闇の戸惑いを察するかのように軽く息をついて、自分の前にあった根菜のフライを勧めた。


「考えすぎるのは体に毒だ。ただ念のために気はつけとけって話。

三年前、お前がココに転がり込んだ時の事を知ってる面子は言ってたからな。

『黒翼狩りの生き残りに、上が気づいたんだ』って」

「黒翼狩り・・・・・・なぁ」

宵闇が眉を寄せる。


三年半ほど前に一つの島が地震と津波で崩壊し、同時にその島を国土としていた国が無くなった。

月華郷と言うその国は黒翼種ーーー黒髪月眼で黒い翼を持つ種族が大半を占めていた宵闇の故郷だ。

宵闇自身も黒翼種だが、当時すでにこの国に移って来ていたため災害自体は免れた。

だがその後、難を逃れた・もしくは命からがら逃げて来た者達を国王命令で排除しようと言う動きがこの島で起こったのだ。

伝染病を持ち込んだとかが原因だと言われているが確かな事は解らない。

およそ一年に渡り公布されていた「黒翼種捕縛追放令」それが通称『黒翼狩り』だ。


しかし

「言ったろ、ココに来る前の一週間ほど記憶飛んでんだ。よくわかんねえよ。


第一、黒髪月眼なんてそうそういねえし、羽無くなってるっつっても隠れてた訳じゃ無ぇんだから、今頃見つかるのはおかしくないか?」


『黒翼狩り』については宵闇自身思う所が多々ある。

独特の文化風習や閉鎖的な空気を嫌って出てきた身だが、原因が思い出せない大怪我を負いつつも自分だけギルドに保護され、祖国に居た筈の両親や友人の生死所在が腕利き情報屋の仲間にも頼んでも分からなくなってしまったことは、三年程度で気持ちの折り合いが付けられるものではない。


宵闇の反応に、ラグはすまん、と頭を掻く。

「それはそうなんだが、な。

口が滑りすぎた。酔い覚まして来るよ」


そう言って酒場の出入り口に向かって行くが、少し歩いた所で首だけ宵闇の方へ向けた。


「ただ、本気で用心はしとけよ?俺の嫌な勘はよく当たる。」

「それなりの用心深さと冷静さはあるつもりだ。警戒はしとく。」

返事を聞いて青髪の青年は唇の端を上げる。

数秒の後、人ごみに紛れて姿が見えなくなった。


喧騒の中に残された宵闇は、水を店員に頼み喉に流し込む。


「ほとぼりが冷めたら、か」

 ほとぼりが冷めるのを待てるほど甘くなかったと宵闇が痛感するのは、この翌日のことである。

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― 新着の感想 ―
黒翼種が今後は色々と物語に絡んできそう。 記憶をなくしているのもこれから触れられていくのでしょうね。 楽しみです。 (・∀・)
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