ロスト・フラグメント(4)
砂漠の中をどれくらい歩いただろうか。
砂と、所々に瓦礫が混じる光景が続いていたが、宵闇は奇妙な既視感を抱いていた。
一歩
二歩
それは進むごとに強くなり、確信に変わっていく。
(さっき夢で見た場所に似てる。俺は・・この場所を知ってる・・?)
『オカエリ』
「!」
耳の中で響いた声が宵闇の足を止める。
「誰だ!!」
叫んで線を出した宵闇の様子に、リークも驚いて足を止めた。
「どうした?何かいたか?」
「何って、声聞こえただろうが。
『オカエリ』って片言みたいな変な声」
「声?」
リークが怪訝な顔をして体ごと振り返ったその後ろ、進んでいた方向の砂が揺らぐ。
波打ちながら砂は宙に舞い上がり、2人の周りに砂嵐を発生させた。
「うわっ・・!」
「・・っつ!」
轟轟と荒れる砂嵐の中で髪や服を風に流されながらも踏み留まる。
『オカエリ』
『オカエリ』
『オカエリ』
(またか)
風の中でもすぐそばで話かけられている様に響く。
横に立つリークは険しい顔をしているだけで声に気付いている様子はない。
(誰だ?)
今度は声には出さずに心の中で返してみる。
(俺のことを知ってるなら答えろ。お前は誰だ?)
『カケラ』
今までと同じ片言が聞こえて来る
『マガヒツエノカケラ、
ハカイノツイ、カタチツクルモノ』
「マガヒツエ?形作るもの?」
「何を言っている?」
宵闇の呟きを聞き取り、リークが顔を向ける。
翡翠の眼に写り込んだ宵闇は何処かほうけた表情で、腕や足の先から黒い光が立ち上っていた。
この青年に事情を話すに至った原因を思い出す。
宵闇が退くのを拒否した時点で、リークは殺すつもりで自らの剣に宿る力を使っていた。
視認も察知も不能。定めた範囲の空間をあらゆる防壁ごと破砕する能力。
だがその能力は宵闇の線を消せずに弾くに留められ、青年本人はあっさりと場所を察知して回避した。完全に予想外だった。
宵闇に負わせた肩や足の傷も、本当なら人の形が判別できるか否かと言うほどに大きく抉っていたはずなのだ。
(剣の能力が弱められた以上、何らかの関わりはあると思っていたが・・・
よりにもよって、この場所のモノがこいつを選んだと言う事か?
・・・・いや)
黒の光は見る間に体積を増し、宵闇を包んでしまった。
(それと言うより、こいつの中にあるものと共鳴したと考えた方が正しいか?)
厳しい眼で、リークは宵闇を包む黒を見据えた。




