ロスト・フラグメント(3)
「!? おい!」
慌てて走り寄る宵闇をリークは制止する。
「触るな!
この・・・場所の影響で身体に掛けていた術が解けただけだ。
お前、先に行け」
「ンなことできるか!すげぇ苦しそうじゃねえかよ!」
怒鳴って肩を貸そうとするが、気遣われた方は苛立ったように自分で立ち上がった。
「先ほどまで私に向けていた敵意はどうした。青毛が心配する訳だ」
「休戦っつったろ。
そー言うの放っとけねぇタチなんだよ。
って、・・お前!?」
言葉を失った宵闇を翡翠の眼が睨みつける。
「じろじろ見るな。」
背が低くなっている分、下から見上げられる状態で更に怖い。
(見るななんて無理だろ)
そう心の中で突っ込んでおく。
リークは、服装・髪型・雰囲気はそのままに
性別が変わっていた。
特別大きくはないがはっきりと胸が出ており体つきが丸い。
「フィレットと言い、お前と言い、幻将ってのは姿変える決まりでもあるのか? 」
「決まりなどないが珍しくもない。
半数が何らかの必要があって姿を偽っている」
戸惑い混じりの問いに、溜息混じりの答えが返される。
「翼島は、この剣を使える男が代々幻将から王になる慣習があり、兄は剣との波長が合わなかった。
父は次の子に男を希望したが、産まれたのは女だったと言うだけの話だ。
骨格や筋肉も変化させているから、運動能力も多少上がるしな」
事も無げに言い切って他言するなと念を押すと、宵闇に背をむけて歩き始めた。
(慣習って、そんな簡単に納得できることか?)
そんな事を思ったが、リークの背はそれ以上の詮索を拒否するような空気を纏っていた。
僅かな明かりが灯された石室。静寂の中で紫の瞳が開かれる。
「置いてきぼりってのも暇で寂しいもんだな。あいつら何処まで奥に行ったんだか」
起き上がって少し乱れた髪を解いて結び直し、横に置いておいた短刀や小瓶、針などが並ぶベルトを腰に巻いて位置を確かめる。
「外の奴らがまた増えやがったか・・
入って来れねぇのが救いだが、放っとくしかできねぇのもちょっと悔しいな」
不満と諦めの混じった息を吐き、遺跡の入り口の方へと意識を向ける。
実際には見えないが、すぐ外に得体の知れない敵意が増え続けていた。
10や20ではきかない様子に、ラグの顔に焦りが混じる。
(このまま増えると厄介だ・・2人とも、早く帰ってきてくれよ?)




