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Lost fragment ーロスト・フラグメントー  作者: Konori
第1章 翼島編(1)
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幻将(6)

「無茶しやがって!

逃がすって言われたのに仕掛けりゃ、殺されたって文句言えねーだろ」

薄暗い石室の中、自分の持って来た薫製肉をかじりつつラグが呆れた顔をする。

「逃げたら俺がお尋ね者になってんだよ。この状態ならもう確実だな」


半ば諦め、半ば腹立たしそうに宵闇は返す。

「そこの殺人鬼の兄貴が想像以上にタチ悪くてな。

兄弟揃って最悪だ」


いくら助けてもらったとは言っても、そもそも怪我の元凶がそいつなのだ。

自分に落ち度があっても腹が立つものは立つ。

そのトゲを隠さない物言いに、リークの目にも険が差した。


「アレと一緒にするな、虫酸が走る。

止めを刺して欲しければいつでも刺すが?」

「やれるもんならやってみろ。腕一本ぐらいは道連れにしてやる!」


再び無言で睨み合うが、お互い武器を出すまではしなかった。

白銀髪の青年がどういうつもりかは知らないが、宵闇としてはここで争って友人を巻き込みたくない。


同時に視線を外し、リークは術で熱した石板の上で焼いた肉を口に入れる。

宵闇は怒りを抑える様に両のこめかみを押さえながら友人に問い掛けた。



「そう言や、ラグが何で此処に来たのか聞いて無かったよな?

てか、何で場所が分かったんだ?」


「親父さんに、この島での簡単な仕事回して貰ってな」


持っていた短い鉄串をくるくる回す。


そしたら、山の中にある遺跡が怪しいって教えてくれた人がいたのさ」


言いながらニッと笑った。

「綺麗な人だったぜ?

さらっとしたアッシュブロンドで背が少し高めの。

こんな時じゃなかったら飯にでも誘ったんだけどなぁ」

鼻の下が伸びている。


「アッシュブロンドで背が高めの・・」

宵闇の頭に、来るとき船の管理をしていた女性の事が浮かぶ。


「ふーん、その顔だとやっぱ知ってるみたいだな」

ラグの紫の瞳に冷たい色が宿った。


「ま、確かにタイミング良すぎだ。

大方、アスベルの野郎の手下ってとこだろ?」


「お前、まさか気付いてて教えられた通りに巻き込まれに来たのかよ。

俺のこと馬鹿にできるクチか?」

「結果オーライ」

苦い顔をする宵闇に、気楽過ぎる返事が返ってくる。

「あの中身の真っ黒なやつが何考えてるのか、少し見えて来たしな」


「アスベルの考え?」


「多分オレがギリ止めに入ったのは計算に入れてたんだろうよ。保険にあのガキを使ったかもしれねーがな。

お前を殺すつもりも、弟を殺すつもりも無かったってことだ」


「確かに解せん所が多すぎるな」

リークがラグの言葉を引き継いだ。


「道化を通してすでにあの男にも私の居場所が割れているはず。

第一あいつは一度接触さえすれば離れていようが人を殺せる術を持っている。

わざわざ民間のギルドに頼む必要性がない。


・・・ならばお前の力と、この場所の封印解除が目的か」


1人納得した様子で向かいに座る青年が自分を見ていることに、宵闇は不審げな顔になる。



「俺の力?何だそりゃ」

「黒線のことか?確かに変わっちゃいるが・・・」


ラグも今一つピンと来ない様だ。少し首をひねりながら問いを重ねる。


「なあ、リークさんよ。

心あたりがあるんなら教えてくれねーか?

事によっちゃ、協力を惜しまねぇぜ。オレは」

「おいラグ!こいつは・・・」

「殺人鬼か?

お前オレが何を本職にして飯食ってるのか忘れてねぇ?」


「お前とこいつは・・・」

「違わないさ。むしろ、金のためにやってるオレの方が万倍悪い。

お前だって自分を守るために幻将追っかけたんだろうが」


ラグの言葉に宵闇は黙り込む。


「もしオレがこの人なら、『引け』なんて親切な警告しねぇ。

ましてそれ無視して自分殺しに来た奴の治癒なんか絶対ごめんだ。

敵の仲間が割り込んでも一緒に息の根止めちまえばいい」

「まあ、そりゃ・・・」


大仰に肩をすくめる動作をしながら言うラグと、複雑な顔をする宵闇の視線が白銀髪の青年に注がれる。

黙々と肉を齧るその姿からは、何を考えているのか分からない。


ラグが「オレ的結論!」と両の手を打ち鳴らした。


「言っちゃ何だが、多分この人は本質的にオレよりお前に近いよ。

だから信用できると思ってる。

ついでに言うと、お前がキレたっつー入り口のアレは多分濡れ衣だしな」


「濡れ衣?」

「ちゃんと近くで見たか?」

「殺った所は見た訳じゃねえが・・・」


不可解そうな顔の友人に、「そうじゃねぇ。死体の方だ」と紺髪の青年は訂正する。


「オレはかなり近くで見たが、アレは骨とか筋とかの痕跡が全然無い妙な死体だった。まるで中身のない人形の赤い粘土を広げたみたいにな。


仮にズタズタにしたのはこの人でも、あんなモン人とは言わねえよ。よくて人形だ」


「なんだよそりゃ、化物の類か?」

あの血肉がそのまま、例えるならどこかで見た皮を剥いだ人体模型みたいな人型になって迫ってくる図を想像してしまった。


・・かなりおぞましい。



「入り口のものは遺跡の守りに弾かれたようだ。

正確には元は人らしいがな。

翼島で最初に襲われた時もあれが来た」


リークも肯定して顔をしかめる。

「倒した後に調べてみたら、父上を守る近衛の1人だったんだ。

それをあの男に伝えたら、今度は奴の手下に術で狙われてな。

だからやむなく逃げた」


忌々しそうに吐き捨てた。もし怒気に破壊力があればこの辺は惨事になっていそうだ。


(どうも、聞いてた感じと違うな。俺の勘違いも多そうだ)


「・・・わかった。

どうせいつまでも怪我の事根に持っても仕方ねーしな」


宵闇はガシガシと頭を掻く。

「一時休戦。必要があるなら手を貸すぜ。

その代わり、こっちだって依頼をフイにするんだ。

俺やラグがお前の兄貴に何か仕掛けられたら、助けてくれよ?」


リークも頷いた。

「ならば宵闇、と言ったか。まずお前に聞きたいことがある。

“ロスト・フラグメント”と言う物に覚えはあるか?」


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