幻将(3)
ガッ!
ガガガガガッ!!
激しい音が再戦開始の合図になった。
白い姿を地面に縫い付けるはずだった宵闇の線が、全て何かに弾かれる。
(なんだ?一本も届いてねぇ!)
弾かれた辺りには僅かに白い半透明のかけらが散っていた。
嫌な予感に従って横に飛ぶと、後れ髪が数本何も無い所で千切れ舞う。
「おわっ!?」
更に場所を移し続けると、ガラスが割れる様な音が付いて来た。
(これがフィレットの言ってたやつか)
なら……
逃げまわりながらリークに近づいていく。
動く速さは少し相手が速いが目で追える程度。
今追いかけて来ている鬱陶しい不可視の攻撃も、周囲に張り巡らせた線で何とか位置を把握できる。
(これは多分範囲効果の飛び道具みたいなもんだ。
だったら近すぎると使えねぇはず!)
そのまま移動し、体の周囲に線を展開して防御を堅めつつ距離を詰めていく。
見えた相手の表情は、驚愕。しかしそれは一瞬で険しい顔へと戻った。
「なめるなぁっ!」
ギイッ!!
軋む音と共に白と黒、二つの影が交差する。
リークの方は数本白銀の髪が舞い、頬に短く赤い線が走った。
だが、それだけ。
「本気で勝てると思っていたのか?愚か者」
「…………っ」
宵闇は応える事ができなかった。
骨近くまで抉れた肩と腿から流れる血が、ボタボタと音を立てて足元に血だまりを作る。
「……くそ……!」
断言するが甘く見た訳じゃない。
一撃を狙って近づくと同時に、何かされても大丈夫なようにしていた。
宵闇の線は攻守両用。
元々自らの魔力と体力から形作っている、言わば常時固形化した魔術のようなものであり、一本だけでも並の刃物なら弾けるぐらいの丈夫さを持っている。
何重にも重ねて身を守れば、剣撃にも魔術にも相当の防御力を持つはずが、気付いた時には大怪我を負わされていたのだ。
「っう……!」
下がろうとするが思った以上に足に力が入らない。宵闇の視界が徐々に暗くなっていく。
「流石あの男が使おうとしただけはある。
だがそれ故に厄介だ。恨んでくれて構わない」
息を荒くして必死に睨む宵闇に、リークがゆっくりと、血の付いていない刃を向けた。
暗転。




