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思い出せない僕へ

作者: とみ
掲載日:2026/03/09

昼休みの図書室は、いつも通り静かだった。

窓から差し込む淡い光が、机の木目を柔らかく照らしている。

ページをめくる音と、遠くで鳴るチャイムの残響だけが、薄い空気の中に漂っていた。


寺迫 湊は、特に読みたい本があるわけでもなく、

ただ“誰にも干渉されない場所”を求めて図書室に足を運んだ。

授業をサボるほどの反抗心はないが、

教室のざわつきに混ざるほど器用でもない。

そんな自分を、湊はもう慣れたものとして受け入れていた。


「……ん?」


返却棚の奥に、一冊だけ妙に存在感を放つ本があった。

古びたハードカバー。

タイトルは擦れて読めない。

まるで誰かがわざと隠すように、棚の影に押し込まれている。


湊は何となく手を伸ばし、その本を引き抜いた。

重い。紙の質感も古い。

だが、それ以上に気になったのは――


貸出カードに書かれた名前だった。


「……俺?」


そこには、湊の名前と、今日の日付が記されていた。

もちろん、そんな本を借りた覚えはない。

そもそも図書室に来たのも久しぶりだ。


「すみません、この本……」


司書の先生に確認しようとカウンターへ向かう。

しかし、彼女は湊の顔を見るなり、あっさりと言った。


「さっきあなたが借りた本ですよ。忘れちゃったの?」


「いや、俺は……」


言いかけた言葉が喉で止まる。

反論するよりも先に、胸の奥にざらつく違和感が広がった。


まるで、自分の知らない“もう一人の自分”が行動しているような――

そんな不気味な感覚。


湊は本を開いた。

すると、ページの間から一枚の紙切れがひらりと落ちる。


そこには、見覚えのある筆跡で、短いメッセージが書かれていた。


『次は間違えるな。』


湊は息を呑んだ。

その文字は、どう見ても自分の字だった。


その瞬間、図書室の奥でページをめくる音が止んだ。

湊が顔を上げると、カウンター横の席に、長い黒髪の女子生徒が座っていた。

学年章は三年。

静かな図書室の空気に溶け込むような、落ち着いた雰囲気をまとっている。


彼女は湊の手元の本を見つめ、ふっと微笑んだ。


「……その本、また見つけたんだね」


黒い髪で、細い肩、そして淡い色のカーディガン。

初対面のはずなのに、まるで昔から知っているかのような口ぶりだった。

湊は思わず本を閉じ、胸の前に抱え込む。


「また?俺と会うの初めてですよね?」


彼女は首をかしげる。

その仕草は柔らかいのに、どこか探るような鋭さがあった。


「“今の君”とはね」


「今の……?」


湊が聞き返すと、先輩は席を立ち、湊の机の前に歩み寄ってきた。

近くで見ると、彼女の瞳は深い琥珀色で、光の角度によって表情が変わる。


「その本、返さない方がいいよ。

 前の君も、そうしてたから」


心臓が跳ねた。

“前の自分”という言葉が、湊の中の違和感を鋭く刺激する。


「あなた……俺のこと、知ってるんですか?」


「知ってるよ。

 君が何を探していたかも、何を失ったかも」


湊は息を呑む。

あの人は続けた。


「でも、今回は……まだ間に合うかもしれない」


その言い方は、まるで未来を知っているかのようだった。


湊は勇気を振り絞り、問いかける。


「“もう一人の俺”って……何なんですか?」


先輩は答えず、図書室の奥、旧館へ続く非常扉の方へ視線を向けた。

普段は誰も使わない、薄暗い通路。


「放課後、旧図書室に来て。

 今は話せないけど、そこで全て教えてあげる」


旧図書室。

今は存在しないはずの場所。


湊が返事をする前に、先輩は歩き出した。

すれ違いざま、彼女は小さく囁く。


「気をつけてね、湊。

 “乖離”が進むと、君は君じゃなくなる」


その言葉を残し、先輩は図書室を後にした。


湊はしばらく動けなかった。

胸の奥で、何かがゆっくりと形を成し始めている。


――自分は、何を“失った”のか。


本のページが、風もないのにひとりでにめくれた。

開かれたページには、たった一行だけ。


『旧図書室へ行け。そこが始まりだ。』


それは、湊自身の筆跡だった。


 ―――


 旧図書室は、まるで時間がそこだけ取り残されたようだった。

窓ガラスには細かなひびが入り、棚には使われなくなった本が埃をかぶって並んでいる。

空気は少しひんやりしていて、今いる学校と同じ建物の中だとは思えなかった。


湊は、胸に本を抱えたまま、ゆっくりと部屋の中央へ進む。


そこに、先輩がいた。


窓から差し込む夕陽が、彼女の輪郭を淡く縁取っている。

その姿は、どこか現実感に乏しくてけれど、確かにそこにいた。


「来たんだね、湊」


振り返った先輩の声は、昼間よりも少しだけ柔らかかった。


「先輩……ここ、本当に旧図書室なんですか?」


「そう。今の校内図にはもう載ってないけどね。

 君は、来たことがないでしょ?」


「……まあ、そりゃ初めてですけど。

 でも、先輩……なんでそんなに普通なんですか。

 俺、ずっと変なんですよ。最近」


「変、ね。どんなふうに?」


「説明できないんです。

 でも……何かが抜け落ちてるみたいで。

 思い出そうとすると、頭の奥がざわついて……」


「先輩にもあった事がある気がするのに

 気がするだけで何も覚えてないんです。」


「無理に思い出す必要は...」

 

「必要あります!

 だって……俺だけ知らないんですよね?

 先輩は知ってるんですよね?

 俺が何を失ったのかも……!」

 

 先輩の静かな声を押し潰すように、湊の声が飛び出した。

 

「先輩……全部、教えてください。

 俺は何を間違えて、何を失ったんですか?

 “乖離”って、何なんですか?」


先輩は少しだけ目を伏せ、湊の手にある本へ視線を落とした。


「その本はね、君が“自分じゃなくなっていった記録”だよ」


「……自分じゃなく、って」


昼間の言葉が、胸の奥で蘇る。


“乖離”が進むと、君は君じゃなくなる。


先輩は、ゆっくりと言葉を選ぶように続けた。


「本来の君は、誰かを見捨てられるような人じゃない。

 でも、別の時間軸の君は……私を助けようとして、何度も“やり直した”」


「やり直した……?」


「そう。

 階段から落ちそうになった私を助けようとして、君は代わりに怪我をした。

 その未来を変えようとして、今度は私が君を庇おうとした。

 それでも君は納得できなくて、何度も、何度も――」


先輩の声が震える。


「そのたびに、君は“違う選択をした自分”を本に書き残していった。

 『次は間違えるな』って、自分に言い聞かせるみたいに」


湊は、手の中の本を強く握りしめた。


「じゃあ、この本は……」


「君の“乖離”の記録。

 選ばなかった未来、選び損ねた未来、選びたかった未来。

 それを積み重ねていくうちに――君の中の“君じゃない部分”が大きくなっていった」


湊の背筋に、冷たいものが走る。


「君は、私を助けるためなら、全てを犠牲にしてもいいって思い始めた。

 それが“乖離”だよ。

 本来の君と、選択を重ねて歪んでいった君とのズレ」


先輩は、まっすぐに湊を見つめる。


「前の君はね、最後には“自分が誰だったか”わからなくなってた。

 私を助けたいのか、自分の後悔を消したいのか。

 その境目が、完全に溶けちゃってた」


――君は君じゃなくなる。


その言葉の意味が、ようやく具体的な形を持ち始める。


「じゃあ、先輩は……そのとき、どうなったんですか?」


先輩は、少しだけ笑った。

どこか諦めと、優しさが混ざった笑みだった。


「私は、助からなかったよ。

 どの時間軸でも、結局ね」


湊の喉が、きゅっと締めつけられる。


「でも、君の願いが強すぎて……

 私の“残滓”がこの世界に留まった。

 君の乖離が進むほど、私は濃くなる。

 でも同時に――消えやすくもなる」


「消えやすく……?」


「君の中の“別の湊”が強くなるほど、

 私は“別の未来の私”に引きずられて消えていく。

 だから、君がやり直すたびに私は薄れていった」


湊は、手の中の本を強く握りしめた。


「じゃあ……俺がやり直すほど、先輩は……」


「うん。

 君の願いが私を留めて、

 君の乖離が私を消していった」


先輩は湊の目をまっすぐ見つめる。

 

「でも、君は諦めなかった。

 だから最後に、この本を書いた。

 “次の俺は、間違えるな”って」


「次の……俺」


「そう。

 今の君は、“やり直しの先に生まれた別の時間軸の君”なんだよ」


世界が、少しだけ遠くなる感覚がした。

足元の床が、現実じゃないみたいにふわふわと揺れる。


「いやでも、やり直しとか別の時間軸とかよく分からないですよ...」


「なんで俺は何度もやり直せたんですか」

 

 先輩は、湊の問いに少しだけ沈黙した。

その沈黙は、言葉を選んでいるというより――

“どこまで言うべきか”を迷っているようだった。


やがて、彼女は静かに口を開く。


「……湊。

 君が“やり直せた理由”は、誰にも正確にはわからないんだ」


「え?」


「ただね、ひとつだけ確かなことがある。

 君が“強く願った”から、世界が応えた。

 それだけは間違いない」


湊は息を呑む。


先輩は続ける。


「人の強い願いって、ときどき“世界のほころび”に触れることがあるの。

 時間とか、因果とか、そういうものの隙間にね。

 そこに触れた人は……まれに、やり直しができてしまう」


「そんなことが……」


「普通は起きないよ。

 でも、君は“私を助けたい”って気持ちが強すぎた。

 その願いが、世界のほころびを引き寄せたんだと思う」


先輩は、湊の胸元――本を抱える腕を見つめた。


「そして、やり直すたびに君は“記録”を残した。

 それがこの本。

 君の願いと後悔が、時間の隙間に積もって形になったもの」


湊は、手の中の本を見下ろす。


「じゃあ……この本は、俺の願いの残骸みたいなものなんですか?」


「うん。

 願いの残骸であり、後悔の堆積であり……

 そして、“乖離”の始まりでもあった」


先輩の声が少しだけ震える。


「やり直しはね、代償があるの。

 同じ時間を何度も生きると、人は“自分がどの自分なのか”わからなくなる。

 それが乖離。

 君は、やり直すたびに少しずつ“別の君”に近づいていった」

 


「だから言ったんだ。

 “乖離が進むと、君は君じゃなくなる”って」

 

「じゃあ、俺は……本当の俺じゃないってことですか?」


「違うよ」


先輩は、即座に首を振った。


「君は、今ここにいる“本物の君”だよ。

 ただ、別の時間軸の君の“後悔”と“選択の残骸”を背負わされてるだけ」


先輩の瞳が、真剣な色を帯びる。


「だから、今日が最後のチャンスだった。

 君が“自分の意思で未来を選ぶ”か、

 “別の湊に上書きされる”か」


湊は、手の中の本を見下ろした。

ページの隙間から、あのメモが覗いている。


――『次は間違えるな。』


「じゃあ、俺はどうすればいいんですか」


声が震えるのを、自分でも抑えきれなかった。


先輩は、少しだけ表情を和らげた。


「簡単だよ。

 本に書かれた未来を、なぞらなければいい」


「……え?」


「その本の最終ページには、これから起こることが書いてある。

 君がどう動いて、私がどうなって、世界がどう歪むか。

 でも、それは“前の君”が想定した未来でしかない」


先輩は、湊の手をそっと取った。


「今の君が、自分の意思で選び直せばいい。

 “私を助けたいから”じゃなくて、“君がどう生きたいか”で」


その言葉は、静かだけれど、強かった。


湊は、本を開いた。

最終ページには、細かい文字がびっしりと並んでいる。


そこには、これから起こるはずの出来事が書かれていた。


• 湊が再びやり直しを試みる

• 別の湊の人格が完全に侵食する

• 湊の自我が消える

• 先輩の存在が完全に消滅する


最後の行には、短くこう記されていた。


『湊、選べ。』


「……これが、“前の俺”の選択肢」


湊は、ページから目を離さずに言った。


「そう。

 前の君は、何度も“私を助ける未来”を選ぼうとして、

 そのたびに自分を犠牲にして、最後には自分を見失った」


先輩の声には、悔しさと、愛おしさが混ざっていた。


「でも、今の君は違う。

 君は、まだ“乖離しきってない”」


湊は、深く息を吸った。


「先輩の事も別の俺の事もよくわかりません」

「別の俺も、助ける未来を選ぶ理由があって、先輩を助けたい気持ちに嘘はないはずです。」


「でも...」

 

言葉を探しながら、ゆっくりと続ける。


「俺は――」


言葉を、はっきりと形にする。


「俺は……俺のままでいたい。

 誰かの後悔をなぞるためじゃなくて、

 俺が選んだ未来を生きたい」

 

先輩は、少しだけ目を見開き、それから静かに笑った。


「……やっと、君だ」


「え?」


「それが、“君自身の言葉”だよ、湊」


先輩の瞳が、どこか誇らしげに揺れる。


「前の君はね、途中から“私を助けること”が目的じゃなくなってた。

 “失敗した自分を許せない自分”を、どうにかしたかっただけ」


「でも今の君は、ちゃんと“私”を見てくれてる。

 私が好きだった本当の君の姿になってくれた」


その瞬間――


文字が、音もなく消え始めた。


インクが滲み、溶け、白い紙に戻っていく。

書かれていた“未来の筋書き”が、ひとつずつ消えていく。


頭の奥で、誰かの声がかすかに響いた気がした。


――おい、やめろ。

――それじゃ、また同じ後悔を――


それは、もう一人の“湊”の声だったのかもしれない。

けれど、その声はすぐに遠ざかり、やがて完全に消えた。


最後の一文字が消えたとき、

本の最終ページは、真っ白になっていた。


「……消えた」


「うん」


先輩は、どこかほっとしたように微笑んだ。


「これで、“乖離”は止まった。

 君は、君のままでいられる」


 ―――


「先輩は……これから、どうなるんですか?」


湊の問いに、先輩は少しだけ視線を彷徨わせた。


「私はね、この学校には“もういない人間”なんだ」


「……え?」


「別の時間軸で、私はここで死んだ。

 階段から落ちて、頭を打って。

 君が何度もやり直そうとしてくれたけど、結局、どの未来でも」


湊の胸が締めつけられる。


「じゃあ、先輩は……幽霊、みたいな?」


「そういうのとも、ちょっと違うかな」


先輩は、少しだけ照れくさそうに笑った。


「君が何度も私を助けようとしてくれた、その“想いの残りかす”みたいなもの。

 君の後悔と、私の未練が混ざって、この世界に“居場所”をもらってた」


「でも、君が自分の意思で未来を選んだ。

 誰かの後悔じゃなくて、“今の君”として」


先輩の輪郭が、ほんの少しだけ淡くなる。


「だから、もう大丈夫。

 私は、君の中の“間違えた未来”じゃなくて、

 “ちゃんと選んだ未来の一部”として、残れる」


「残れるって……」


「君が私のことを忘れなければ、それで十分だよ」


先輩は、まっすぐに湊を見つめた。


「君が君じゃなくなる未来を、私はもう見たくない。

 だから、今日の君の選択は……すごく、嬉しい」


湊は、言葉を失ったまま、ただ頷いた。


―――


旧図書室の空気が、ふっと軽くなる。

さっきまで感じていた、どこか“ズレた”感覚が薄れていく。


夕陽が沈む直前、先輩の姿が淡く揺らいだ。


「先輩……」


「ありがとう、湊。

 君が選んだ未来なら……きっと大丈夫」


その声は、もう風に溶けてしまいそうなくらい薄かった。


「俺、忘れませんから」


湊は、はっきりと言った。


「先輩のことも、

 “間違えた俺”のことも、

 全部覚えておきます。

 それでも前に進んだって、ちゃんと言えるように」


先輩は、嬉しそうに目を細めた。


「それなら、安心して消えられるな」


光の粒が、彼女の身体から零れ落ちるように広がっていく。

それは、夕陽の中で舞う埃と混ざり合い、やがて見えなくなった。


旧図書室には、湊と、本だけが残された。


本の白紙のページをそっと撫でながら、湊は呟く。


「俺は……俺の未来を選ぶよ」


扉を開けると、そこにはいつもの放課後の光景が広がっていた。

廊下を走る足音、教室から漏れる笑い声、窓の外のオレンジ色の空。


世界は、何も変わっていないように見える。


でも――


湊の心だけは、確かに変わっていた。


“乖離”は、もう進まない。

これから先、どんな選択をしても、それは“誰かのやり直し”じゃなくて、

湊自身の一歩になる。


胸ポケットには、あの紙切れが入っている。


――『次は間違えるな。』


それはもう、“別の自分”からの命令じゃない。

今の自分が、自分に向けて書き換えた、ひとつの誓いだった。


 ―――


 春が近づくにつれ、校舎の空気は少しずつ柔らかくなっていった。


あの本も、先輩の姿も、どこにも残っていない。


それでも、湊の胸の奥には確かな温度があった。


その日の放課後、湊は駅前のロータリーで友人を待っていた。

夕陽が街をオレンジ色に染め、人々の影が長く伸びている。


ふと、視界の端に“見覚えのある後ろ姿”が映った。


黒い髪。

細い肩。

制服ではない、淡い色のカーディガン。


湊の心臓が跳ねた。


「……先輩?」


声は喉の奥で震えたまま、外には出なかった。


その人物は、ゆっくりと横断歩道を渡っていく。

夕陽に照らされた横顔が、ほんの一瞬だけ見えた。


湊は息を呑む。


――間違いない。

あの横顔は、あの日、光の粒となって消えていった先輩のものだ。


湊は駆け出した。

人混みをかき分け、横断歩道へ向かう。


「先輩!」


声がようやく出た。


しかし――


信号が変わり、車が流れ始める。

湊が渡りきったときには、

その姿はもうどこにもなかった。


ただ、歩道の端に小さな紙片が落ちていた。


拾い上げると、それはメモ用紙の切れ端。

そこには、短い一文だけ。


「君は君のままでいてね」


湊は立ち尽くした。

胸の奥が、じんわりと温かくなる。


風が吹き抜け、紙片が揺れる。

夕陽が沈みかけ、街の影が長く伸びる。


湊は、そっと微笑んだ。


「……生きてるんだ。

 どこかで、ちゃんと」


返事はない。

でも、もうそれで十分だった。


湊は紙片を胸ポケットにしまい、

ゆっくりと歩き出す。


世界は静かに続いていく。

そのどこかに――

先輩もまた、静かに息づいている。


そして湊は、

自分の未来へと歩みを進めた。


 

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