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第一話 恋活研究会結成

「ねえ大和。私、イケメンの彼氏が欲しいの」


 自宅で春休みの課題に向かって筆を進めていると、背後から声が聞こえた。

 鉛筆を動かす手を止めて振り返る。視線の先では幼馴染の千冬がゆったりとしたパーカーを着て、俺のベッドの上で寝転がりながら退屈そうにスマホを触っている。


「私たちもう高二だよ。そろそろ彼氏とか欲しくない?」

「別に彼氏はいらないが」


 俺の性別は男だし、同性愛の趣味もない。

 というか春休みの課題を一緒に終わらせようと言って俺の部屋に集まったのに千冬は終わっているのだろうか。


「私は欲しいのー。イケメンで誠実で優しくて寂しいときとかぎゅって抱きしめてくれるそんな彼氏が」

「まあ千冬ならその気になればすぐに作れるだろ」


 男友達と話す学校の可愛い人ランキングでもクラスメイトの夏目さんと並んでツートップだし、腰まで伸びた長い黒髪は似合っているし、顔立ちは客観的に見て可愛い部類だと思う。どうして彼氏ができないのか不思議なくらいには。

 千冬がため息を吐いた。


「そう思っていたら一年が経ったのだけど」

「理想が高いとか」

「好きじゃない人と付き合っても意味なくない?」

「まあそれもそうか」

「あー、私って魅力ないのかなー。大和もこんなに可愛い女の子が部屋で無防備な姿をしているのに何もしてこないし」


 千冬は力尽きたように枕に顔を突っ伏した。

 確かに可愛い女の子と部屋で二人きりというシチュエーションは、もうちょっと青春っぽい何かが起きてもいいような気がする。千冬のことが生理的に無理という訳ではないし、顔はむしろ好みなのだが不思議とそんなモチベーションは湧いてこない。

 理由は明確だ。


「まあ幼馴染だしな。今更部屋で二人きりくらいではなんとも」


 小さい頃は一緒にお風呂に入っていたし、アニメに憧れてファーストキスも経験済み。それで何もないということはつまりそういうことなのだ。


「だよねー」


 千冬も同じことを思っていたようで力なく同意した。


「というか課題は終わったのか?」


 机の上には中途半端なページで止まっている英語の問題集が残っている。

 千冬は寝転がったまま首だけを俺に向けて答える。


「課題より私の恋路の方がよっぽど大事なの! 日本の少子化は深刻って昨日テレビで言ってたような気がするから! 日本を守る!」

「英語ができれば外国人も彼氏候補になるかも。グローバル社会万歳」

「本当に私のことが好きなら、頑張って日本語くらい喋れるようになってアプローチして欲しいかな」

「そうですか……」


 歩み寄る気持ちはないらしい。


「あーどこかにイケメンの彼氏……」

「クラスにタイプの男とかいない?」

「うーん。いないなー」

「今まで好きになった人とか?」

「いたけど脈なしだから諦めた」


 聞いたのは俺だが回答は予想外だった。千冬のことだから強気な表情で「私に見合う男がどこにもいないの」とか言うと思っていた。

 いつの間にか失恋していたのか。保育園から高校までずっと一緒にいたのに全然気づかなかった。まあ女の子のほうがませているなんて言うしそういうものなのかな。


「誰? 俺の知ってる人?」

「秘密! そういう大和は好きな人とか彼女欲しいなとか思ってことないの?」

「うーん。こうやってダラダラ千冬と過ごしてるだけでそれなりに楽しいからな。あんまりないかも」


 これまでの人生を思い返してみても、この人と付き合いたいって思った記憶がない。健全な男子高校生としてどうなのかと自分でも思うが。友達と恋愛トークした時に俺だけ上手く参加できなくて心の距離が遠く感じるし。


 まあ作ろうと思えばいつでも作れそうな千冬と違って俺はそういう訳にもいかないだろう。俺の顔面は千冬の求めるイケメンでもなんでもないし。そんなことを考えながら答えると、千冬は再び顔を枕に突っ伏した。


「うわ、そんなこと言って乙女の心を弄ぼうとしても無駄だから!」


 俺がいつ弄んだというのか。謎である。


「よし! 決めた」


 千冬が勢いよくベッドから起き上がる。


「何を?」

「恋活するの! 理想のイケメンに出会うために」

「恋活ね……」


 そんなことをしなくても、千冬ならちょっとストライクゾーンを広げるだけで簡単に解決しそうなものだが。


「もちろん大和もするんだよ?」

「え」

「やっぱり男心は男に聞いた方が確実だしね。今までは幼馴染だったけどこれからは部長と副部長になるの」


 千冬は自身満々の表情で俺を見つめている。


「それはつまり……」

「恋活研究会の結成だよ。これからよろしくね。大和副部長」


 千冬が俺に向かって手を差し出す。千冬の笑顔は驚くほど綺麗だったから、思わず手を取ってしまう。

 恋活か。一体何をさせられるのだろう。


 不安に思いながらもどうせ帰宅部で暇なだけだしなと自分に言い聞かせた。それに千冬もすぐに飽きるだろうし。

 そんなわけで俺と千冬は恋活研究会を結成することとなった。

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