9話 初心者に冷たい
村から少し離れた場所に連れてこられた。
こんな所に師匠が居るのか…いや、師匠とかってこういう所に居そうなイメージだな。
なんか炎華と影葉が警戒してる気がする。
師匠って怖いのかな?
「炎華ちゃん、影葉ちゃん、よく来たのぉ。その人達は?」
ビックリした。この爺さんいつから居た?
「こんにちは鬼玄師匠、この二人を鍛えて欲しくて」
「ほぉ…」
気付いたら爺さんが持っていた刀が抜かれ首に当てられていた。
怖くて漏らしそう。
「どちらも認識できない…いや、お嬢ちゃんの方は殺気が無いことを見抜いていたか」
アへナが褒められてる…悔しい。
いや、嘘だろアへナが認識できたって。
「殺気があったとしても私じゃ避けれなかったよ」
「分かるだけでたいしたもんじゃよ」
なんかアへナの株が上がってる。
嫌だな、あいつが俺より上なの。
「妖玄師匠は?」
「婆さんは川に洗濯に行っとる」
「凄い定番の状況ね」
「言うほど定番か?」
アへナは何をもって定番と言ったのだろう。
ていうか川とか近くにあったんだ。
何も考えずに水飲んでたけど汲みに行ってたりするのかな?
「じゃあ私達は忙しいので頑張ってください」
「嘘つけ。別に忙しくないだろ」
「え?」
実は鉄真に身長とか測ってもらってた時に聞いたのだ。
この村に魔物が来ることはほとんど無いから狩りをするのは肉が無くなってきた時だけだと。
それも一度でたくさんとれるので数日に一回程度だと。
つまりあの二人は基本的に暇してるよと言われた。
「鉄真が言ってた」
「いいえ、私は姫として民を見守る役目があるのです。民の困りごとを解決する役目が」
「私も姫直属の忍として炎華に付いていく役目があるよ」
「あいつらはよく分からん言い訳をするってのも鉄真が言ってたよ」
二人は衝撃を受けてるが鉄真はかなりこの二人を理解しているみたいだ。
「直属の忍ってどっから出てきた嘘なんだよ」
嘘だと思い鼻で笑っていると真面目なトーンで言われた。
「私が姫直属の忍ってのは本当だよ」
「マジで?」
「うん」
鬼は過去に何があったんだろう…余計にそう思ったがそれを聞くと場の空気が地獄になりそうなので聞かないことにした。
いつかアへナに聞いてみよう。
「とりあえずお前ら二人も参加な」
そう言うと二人は仕方なさそうに頷いた。
何でこいつら嫌そうなんだ?もしかして修行って思ったより辛い?ていうか修行って具体的に何?やったことないんだけど。
そんな事を考えていると爺さんに木刀を手渡された。
「まずはおぬしからじゃ」
「遠慮しておきます」
まずはどんな感じか見て覚悟を決めたい。
そもそも木刀なんか使ったことないから。
「遠慮しなさんな…えっと…」
爺さんが木刀を凄い握らせようとしてくる。
「モノです、じゃなくて!いいって!そういうノリじゃないから!」
マジでこの爺さん力が強い。
何でこの爺さんは拒否してんのにやらそうとするの?
「仕方ないのぉ…そちらのお嬢ちゃん来なさい」
「アへナです。情けないモノに変わって頑張ります」
言い返そうと思ったが事実だから言い返しにくい。
何でアへナはそんな感じで行けるんだよ。
怖くないの?なにノリノリで木刀握ってるの?
「じゃあまずは軽く行くぞ?」
「はい!」
でもアへナのお陰で師匠とやらの実力が見れるから感謝しよう。
師匠が動い…消えた。
消えたと思ったら俺が見失っただけだった。
瞬きしてる間にアへナの前に移動してる。
師匠の腕が見えない。斬撃をアへナが避けてる?
うん、分からない。師匠の動きが全然見えない。
「凄いのぉ…」
「私の索敵は最強だからね」
「少し速くするぞ」
「へ?」
アへナが地面に倒れた。
何があったの?少し速くするって言った瞬間アへナ倒れたけど。
「大丈夫アへナ?」
「脳天に叩き込まれましたからね、気を失っちゃってます」
へー脳天に叩き込まれたんだ…何も見えなかったなー。
うん、無理だろ。初心者に何をやってんの?
あれって俺がやってたら初撃で死んでたよ!
やらなくて良かったー。
炎華と影葉によってアへナがどかされる。
「ではモノさん。頑張ってください」
「いや、無理だよ」
何でそんな驚いた顔するの?無理だから、あんなのくらったら死ぬから。
「加減してあげるから速く来るんじゃ」
「加減してもらえるんだからやってみたら?」
何で全員が俺を戦わそうとしてんだよ!
「せっかく鉄真が武器を作ってくれるのに使いこなせなかったら勿体ないよ」
影葉の正論が痛い。
ついでに全員の視線が痛い。
「ほんとに加減してくださいよ」
「ちゃんとするわい」
確かに異世界に来たのに弱いままってのも良くないな。
せめてある程度の強さは必要だろう。
これは修行だから死ぬこともない…よな?
でもそう考えるとやる気が出てきた。
「じゃあ行くぞ?」
「はい!」
瞬間、俺の意識が消えた。
目を覚ます。
「目が覚めたの?」
覚醒しきっていない頭で考える。
この感触…これアへナの膝で寝てるな。
「モノ、どう?私の膝枕は?」
やっぱり。普段なら腹が立つがあれを避ける所を見たのに馬鹿にするほど俺は馬鹿じゃない。
「うん。良い膝枕だと思う」
そう言うとアへナが凄い驚いてる。
「モノが素直に褒めた…!頭を強く打って綺麗なモノになった…?」
「普段の俺はそんなに汚いか?」
やっぱり腹立つな。
「ちなみになんで膝枕?」
「影葉の提案」
その影葉はと言うと普通に師匠と打ち合ってた。
炎華が言うには気絶したのは俺とアへナだけで鉄真も普通に師匠と打ち合えるらしい。
こいつらはどうなってるんだか。
「ちなみに俺ってどうなったの?」
「師匠が振り下ろした木刀に脳天を叩かれて気絶です」
「そうなんだ。でも無理だよ、加減されてなかったし」
「え?師匠はだいぶ加減してましたけど。というか私たちとやる時も加減してますよ」
炎華が説明してくれた。
どっちにしても見えないから違いが分かんないけど。
なんでお前らはなんであの速さで見えてんだよ。
「モノはまず基本的な魔力操作から覚えた方が良いかもね」
「お前が言ってる索敵とかか?」
「それも含めて色々」
と言うことでアへナに教えてもらうことにした。
正直アへナの優秀なイメージが強くなってきて俺が馬鹿みたいになっているのでアへナには適度に馬鹿になってもらいたい。
炎華と影葉が鬼玄師匠と打ち合ってる間に教えてもらった結果、索敵が数メートルできるようになった。
集中が切れたら索敵も切れるけど。
あとは魔力の放出もできるようになった。
魔力を纏ってる時点で体の外に放出してるので覚えるのは簡単だったのだが…垂れ流すことしかできないのだ。
魔力の弾丸みたいなの撃てるかなって思っていたがそれどころじゃない。
ただ魔力が出ていくだけなのだ。
これはまだまだ練習が必要だった。
「モノかアへナそろそろ変わってくれない?」
影葉が変われと言ってくるので変わることにした。
新しい事を覚えた俺の力を見せてやるよ。
そう思い挑んだが付け焼き刃で勝てるはずもなく、俺の意識はアへナのスタートの合図で消えていった。




