7話 イマジナリーじゃないよ…
朝になってアへナに起こされた。
寝不足である。
昨日図書館に連れて行かれてから夜中までずっと再生のやり方を叩き込まれた。
そのおかげで怪我は左腕を除き完治した。
左腕が治ってないのは魔力が足りなかったからだ。
魔力が無くなるのは初めての体験だったが二度とやりたくない。
魔力が無くなると体調が馬鹿みたいに悪くなるのだ。
頭痛に吐き気などが酷く寝ることすら難しかった。
数時間の睡眠で魔力は回復したみたいなので左腕も治すことにしよう。
「大丈夫ですか?」
様子を見に来た姫に心配された。
まさか左腕を治すだけでここまで魔力を使うとは。
あ、吐き気が…
「ごめん…どこか吐いていい場所ない…?」
姫に案内されて思いっ切り吐いた。
俺、異世界来てからろくなことしてないな。
「何があったんですか?」
「ちょっと再生に魔力を使い過ぎて…」
姫が背中をさすってくれてる。
昨日いきなり殴ってきた子だとは思えないよ。
ていうかアへナのやつ起こしに来たくせに二度寝しやがったな。
「なんで魔力使いすぎただけで体調が悪く…」
「体の中にあるエネルギーなんですから無くなれば体調が悪くなるのは当たり前ですよ」
そりゃそうだ。脱水症状とか貧血とかあるもんな。
それと同じってことだ。
とりあえず怪我は完治した。
「もう大丈夫。ありがとう、えっと…」
「炎華です」
「ありがとう、炎華」
お礼を言うと無言で手を引っ張られた。
異世界に来てからずっと引っ張られてる気がする。
「どこに連れて行こうとしてる?」
「泊めたので働いて貰おうと思いまして」
そっかー、ただじゃないのかー。
「何をすればいいんだ?」
「私と一緒に魔物を狩って貰おうと思います。魔物が村に来ると危険ですし肉にもなるので」
「素手は嫌だ」
モノは素手で生き物を殺す感触がトラウマになっていた。
そんなモノを炎華は残念そうな目で見た。
「では武器を作ってもらいに行きましょうか。今日中に出来上がるのは無理でしょうけど」
「つまり?」
「今日は素手ってことですね」
「マジで嫌なんだけど」
「大丈夫ですよ。危なくなったら助けますから」
それでも拒否するモノを見て炎華は頑張ってくださいと言った。
頼むアへナ代わってくれ、そう思った。
その頃アへナは図書館で呑気に寝ていた。
今後の為にも武器は必要だと思うので武器を作ってもらいに行った。
この村にもそういう人がいるんだ、と思っていたが炎華の友達にいるらしい。
分身が得意な子とは別と言われた。
それからほんとにちょっとだけ歩いた所にある家の前に来た。
鍛冶とかに使いそうな物が外にいっぱい置いてある。
下手したら家が燃えそうだな。
炎華は家の前で呼ぶ。
「鉄真いますか?」
返事は返ってこない。
炎華は家に入る。
「いきなり入って大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。あれ?居ませんね」
何が大丈夫なんだろう、と思ったが鉄真とやらは居なかった。
すると炎華は走り出した。
「見つけたのでちょっと待っててください」
「ちょ…おい!いや、足速いな!」
炎華はどこかに行った。
一人残されているとアへナが起きた。
(おはよ、モノ)
「やっと起きたか。人を起こした癖に二度寝しやがって」
(モノが全然覚えれなかったのが悪いから)
「全然って…普通はどれくらいなんだよ?」
(数日間ずっとやれば覚えれるぐらいかな)
「なら褒めてくれ」
(私の教え方が良かったんでしょ)
この指導者は褒めて伸ばすタイプではないらしい。
それから少しの間アへナと話していると炎華が二人を連れて戻ってきた。
炎華は戻ってくると呆れた目で言ってきた。
「またイマジナリーですか?」
「まだ言ってんのか」
再生を覚えれたから急いで分身を覚えよう。
じゃないとずっとこのネタ擦られる気がする。
「で?その二人は?」
「私の幼馴染の鉄真と影葉です」
男の子が鉄真で女の子が影葉らしい。
この子達は頼むから常識人であって欲しい。
「こんにちはイマジナリーさん」
「違うからな」
鉄真がいきなりふざけた事を言ってきた。
何で俺にイマジナリーのイメージが定着してんだよ。
「え?でも昨日村のおっさんが炎華が気の毒な人を連れてきたって言ってたよな」
鉄真が影葉に問いかけると
「うん。イマジナリー的な知り合いがいるから優しく接してあげてねって言ってたよ」
と言った。
まじかおっさん。昨日どっか行ったと思ったら変な噂を流しに行ってたのかよ。
気の毒にってやっぱイマジナリーの話か。
俺の怪我を心配してくれよ。
「でもどうせ炎華が変なこと言ったんだろ?」
「多分そうだろうねー」
鉄真君…影葉ちゃん…なんていい子達なんだ。
人をいきなり変な人扱いしないだなんて…凄くいい子だ。
(モノ。それって普通じゃない?)
今までの出会いで感性が壊れたかもしれないな。
もちろんアへナを含めて。
(え?私との出会いは普通でしょ?)
「いや変だったよ」
アへナに思わず言ってしまった。
「変だったって?」
影葉が聞いてきた。
このいい子なら信じてくれるかもしれない。
「いや、ちょっと知り合いがな」
「炎華、疑ってごめんね」
「俺もごめん」
二人の目まで変になったよ。
なんで俺がそんな目で見られなきゃいけないんだよ。
「能力が人ってそんなに変なのかよ」
「変ですね」
「変だろ」
「変だよ」
3コンボ決められちゃった。
泣いちゃいそうだよ。
「なら今すぐに分身教えてくれよ!そしたら証明できるからさ!」
アへナが言ってた事を思い出し言ってみる。
「影葉、教えてあげてくれますか?」
「任せて!」
影葉が前に出てくる。
「まずね、分身は肉体だけを作る魔法なんだよ」
「じゃあ分身は普通に使ったらただの置物じゃないか?」
「そうだよ。だから普通はその分身に意識を持っていって操作する感じで使うんだよ」
例えるならゲームみたいな感じか。
自分のキャラを操作する感覚。
でも今回はアへナを分身に入れるだけなので普通の使い方はどうでもいい。
自分の肉体をイメージして魔力で作る、言われた通りにやってみた。
物を作るって案外楽しいな。
想像した通りに魔力が肉体に変化していく。
これってアへナが入るけど顔とか体を適当に作ったらどうなるんだろ。
(私の意思で姿を変えれるから無駄だよ)
なら真面目にやる必要ないじゃんか!
(真面目に作ってくれてたんだね、ありがとう。でも簡単に作ってくれたら後は私の方でできるから大丈夫だよ)
ならもう適当でいいや。
そう思いマネキンみたいな物を作る。
「できた」
「シンプルだけどこれでいいの?」
「なんかあいつの方で姿は変えれるらしいから」
完成したと言うと炎華が前に出てきた。
「なら見せてもらいましょうか。あなたのイマジナリーを!」
「見せてやるよ!俺のイマジナリー!」
(モノ。私はイマジナリーじゃないから)
アへナを分身に移してみると体からごっそり何かが抜けた感じがした。
全員が見守る中、分身の姿が変わっていく。
髪が黒髪ロングになり、真ん中で分けられている。
アホ毛も出てきた。
いつものラフなTシャツに身を包み目が開いた。
髪と同じ黒い目が見える。
アへナが起き上がった。
「みんな大好きメインヒロインのアへナちゃんでーす!」
起き上がったアへナはそう言い放った。
なんだよメインヒロインって…
全員が静かになった。
そう思った瞬間、
「かわいいですね!」
「かわいい!」
炎華と影葉がかわいいと褒める。
アへナはこれが当然の反応とばかりにドヤ顔をしていた。




