17話 誕生日
あれから三週間ほど経った。
俺は狩りも終わり日が暮れた頃に師匠の家に向かっている。
アへナは炎華と影葉と一緒に先に行った。
分身も完璧……というか俺の分身はほとんどアへナが維持してるから難易度はそれほどなんだよな。
そういえば気付いた事がある。
大きめの獣からはかなりの量の肉が取れる。
なのに食料が足りないのだ。
そう思って周りを見てみたら鬼も悪魔も良く食べるのだ。
悪魔は遠慮しないのかな?と思ったがそんな話ではなくて、食べ過ぎだと思われるほど食べるのだ。
それについて暇な時にアへナと真面目に考えてみた。
仮説としては魔力を使うのにエネルギーを使うためその分、食べるのだろうとなった。
俺とアへナは色々イレギュラーなので違うのだろう。
「ていうか今日は何で呼ばれたんだ?」
呼ばれた理由が分からない。
多分だけど仲がいいメンバーは呼ばれてるんだろうな。
そんな事を考えてる間に師匠の家に着いた。
ノックしようとした瞬間、
「入っていいですよ」
妖玄師匠の声がした。
索敵ってのは便利だな。
「おじゃましまーす」
家に入り一番広い部屋に行くと想像通りのメンバーが揃っていた。
メンバーは鬼玄師匠、妖玄師匠、炎華、影葉、鉄真、炎牙、震音、蒼水、雷斗、俺、アへナ。
部屋には鍋が置いてある。
「今から何かあるの?」
気になったので聞いてみた。
反応的に知ってるのは鬼だけだと思う。
「聞いてないの?」
「師匠の家に来いとしか聞いてない」
影葉があれ?と言った顔をしている。
「みんなに伝えたのは炎華だよね?」
影葉が炎華に聞いてる。
炎華がやらかした顔をしてるので炎華のミスなのだろう。
「で?何するんだよ」
答えが分からないのでもう一度聞いた。
なにか問題が起きて会議とかするのだろうか。
それにしては鬼側が明るい顔をしている。
「俺の誕生日なんだよ」
鉄真が言った。
だから普段は来ない鉄真が居るのか。
いつもは色々と作ってるらしいけど、そうか誕生日か。
「なんかプレゼントとか用意したほうがよかったか?」
そういう事なら事前に伝えて欲しかった。
悪魔側も何もしてないことに申し訳なさそうにしてる。
「いや、事前に伝えなかったからな。それにプレゼントって言っても用意できないだろ?」
確かに用意できない。お金もない、それどころか所持品すらない。
ならせめて心を込めてお祝いしよう。
「モノさんも座って座って。鍋で祝いますよ」
炎華に言われ座る。
鍋は久しぶりな気がする。
ここ最近は肉しか食べてないからな。
どんな鍋なのだろう。
そう思い鍋を見た。
「なあ……肉しかないんだけど」
肉だった。鍋の中も肉。近くにも追加の肉。
鍋は鍋なんだけど野菜がない。
いや……理由は分かってる。
「野菜はまだ育ってないんですよ」
そうだよな。十分な量の野菜がないのはよく分かっている。
でも栄養の偏りが凄いんじゃないだろうか。
「酒は準備したんじゃが」
「俺が言ってるのは食材の話なんだけど。まあ祝いだし飲むか!」
野菜がないのに酒はあるのかと少し気になったが無いものは仕方ない。
師匠の家に酒が残ってただけの話だ。
そこで重要な事に気付いた。
「鉄真は何歳になったんだ?それに今は何月何日だっけ」
月日はついでだが鉄真は何歳なのだろう。
俺は酒を飲む気だが困った事に全員の年齢を知らない。
師匠は飲めるだろうがこいつら飲めそうにないな。
いや、この世界は未成年でも酒が飲める可能性もあるな。
「17歳になった。それで今日は7月12日だな」
「ちなみに酒は飲めないよな?」
「そりゃ未成年だからな」
やっぱ未成年は無理か。
他の人たちも未成年だから飲めないのだろう。
魔力を纏えばある程度の耐性ができるし飲んでも大丈夫だと思うが駄目なものは駄目なのだろう。
「じゃあ酒は全部俺が……」
師匠の刀が首に当てられた。
飲む前に水分が全部出ていきそう。
「師匠、冗談です。さすがに人の酒を独り占めはしません」
師匠が刀をおさめた。
殺気が出てたけど師匠のほうも冗談だよね?
「そろそろ食べようよ。肉しかないけど」
雷斗の言葉で始まった。
鉄真は全員にお祝いされて嬉しそうだ。
俺も久しぶりにお酒を飲もう。
まずは一杯目を飲んだ。
「ぶふっ!」
口に入れた瞬間に吹いた。
「モノ汚い」
「ごめん……ちょっと強すぎる」
凄いつよい酒なんだけど。
魔力を全力で纏っておこう。
じゃないとすぐに潰れる。
「そういえばモノは魔力纏ってるよね」
二杯目を飲もうとしたら影葉に止められた。
お酒を薄めたほうがいいって話かな。
「モノ……それは駄目だろ」
炎牙が呆れながら言ってきた。
というかみんなが呆れてる。
「なんだよ」
みんながマジか……みたいな目で見てくる。
この世界の常識でなにかあったのだろうか。
「あのねモノ。お酒を飲む時に魔力を纏うのは駄目だよ」
「そうなの?」
全員が頷いた。
それは先に言ってほしいよね。
「お酒飲んでる時に襲われたらどうするんだよ?」
「襲われる可能性があるならそもそも飲まないよ」
確かにそうか。
普通の人はいちいち襲われる可能性を考慮しないか。
魔力を纏っていたら酔えないから解けってことなのかな。
と言うことで魔力を解いた。
「せめて水が欲しいんだけど」
妖玄師匠が水を持ってきてくれた。
気を取り直して飲むことにしよう。
しばらく肉を食べながら飲んでたが楽しいな。
昔は仲いい人はいないも同然だったからな。
「モノさんって何歳なんですか?」
炎華が聞いてきた。
俺って何歳だっけ?なんかふわふわしてるなあ。
「たぶん37さいだな」
「モノさんちょっと酔ってきてます?」
はて?自分ではそれほど酔ってないと思うのだが。
確かにこのお酒は強いけど水で薄めてるから大丈夫だ。
「その歳でお酒を飲む時に魔力を纏わないこと知らなかったんですか?前々から思ってましたけどモノさん変なところ抜けてますよね」
なんか注意された。
仕方ないだろこの世界に来てそんな経ってないんだから。
あれ?鉄真のやつ主役なのに食べてないなあ。
肉は飽きたのか?
あれ?なんか鉄真と炎牙がこっち見てる?
「師匠の酒が強すぎたんだろ」
「絶対酔ってるもんな」
鉄真と炎牙のやついつの間に仲良くなったんだろう。
それより酔ってる?
俺はちゃんと割って飲んでるってのになあ。
「モノはどれくらい飲んだの?」
「見てたけど今飲んでるので三杯目」
アへナが影葉に教えてるけどよく見てるなあアへナのやつ。
あれ酒がなくなった。さあ次の酒を注がねば。
酒を注いだ。何杯目か分かんないけど飲むぞお。
「モノさんは37歳にしては若い見た目ですよね」
「そうかな?最近は自分の顔を見てないから分かんない」
見た目が若いなんて言われたこと無いけどな。
炎華の目が狂ってんじゃないのかな。
でも全員が納得してるな。
ったく。全員目ん玉が悪いんじゃないだろうか。
俺を褒めても何もでないのになあ。
「モノは今まで好きな人とかいなかったの?」
影葉はそういう話が好きだな。
そういう話は炎華とアへナとしとけよ。
好きな人がいたか記憶を探るがいなかった。
そう言えば嫁とは若い時に結婚して別に愛し合ってもなかったな。
「好きな人も何も俺は妻と子供がいるからな」
「「「え?」」」
それを言ったら空気が変わりみんなが驚いた。
俺なんかおかしいこと言ったかな?
まあいいや、もう一杯飲も。
「そう言えばそうだったね」
「アへナは知ってたの?」
「うん。私モノの記憶見れるし」
プライバシーはないのか。
これからはずっとアへナを外に出しとこう。
「モノさんは嫁と子供がいるのにこんなとこにいるんですか?」
炎華が若干冷たい目で見てくる。
そんなに俺の話が気になるのかな?
「昔の話だからな。別に家族を放って遊んでる訳じゃない」
よく考えたら家族放って独裁者してた結果が死なのか。
でも家族の会話もあったからな。
それほど仲が悪かったわけではないはず。
「離婚でもしたんですか?」
炎華が躊躇なく聞いてくる。
別に話せるからいいけど嫁と子供が死んだとかだったらどうすんだよ。
「離婚はしてない。死んだからな」
「あ……すみませんでした」
あれ?なにか間違えたか?なんか場の空気が沈んだ。
とりあえずもう一杯。
あと肉も食べよう。
「みんな勘違いしてる」
「勘違い?」
アへナはなにを言ってるんだ?
みんなが困惑してるよ。
「死んだのは嫁と子供じゃなくてモノのほうね」
だから俺はそう言ったけどな。
俺なんか間違えてたか?
「モノさんは生きてますよ?」
「え?これってわたしが話さないといけないの?」
頑張れアへナ。
俺はなんか頭がすっきりしてきた……ん?すっきり?
あれ?何で酔いがさめてるんだ?
「解毒はしたから自分で話してくれるかい?」
「何するんですか師匠。せっかく気持ちよく酔えてたのに」
「話が進まないからねえ」
妖玄師匠がアルコールを分解したせいで落ち着いてきた。
独裁者時代のことを話せと言うのか。
あんま気乗りしないな。
「で?どこまで話したっけ?」
「モノが死んだところだけ」
俺は今までのことを話すことにした。
酒を飲みながらでいいかと聞いたらとてつもなく薄められた酒を出された。




