16話 食べたらなくなる
悪魔が来てから三日が過ぎた。
これで異世界に来てから一週間くらいのはずだ。
段々と時間の感覚が曖昧になっているが間違いないと思う。
三日間なにをしていたかと言うと動物を狩っていた。
ちなみに修行はなかった。
ただ師匠が素振りくらいはしろと言うので一応している。
話は戻るが動物狩りだ。
恐らくだが最近の流れからしてそろそろ迎えが……
「モノさん!起きてますよね!早く行きますよ!」
ほら来た。何でこんな事をしているかと言うと住民が増えて食料が足りないのだ。
来たばかりの頃は獣と戦うのを嫌がってた。
だが今の俺なら素手による戦闘で獣を仕留められる。
絞めるのが理想だが戦闘になった時に血で汚れるので鉄真には急いで武器を用意してもらいたい。
弓などを貸してもらう手もあったが矢に魔力を纏わせて撃つのは意外と難易度が高かった。
ちなみに魔力を纏わせてないと普通に弾かれる。
「モノさん!起きてるなら速くしてください!アへナちゃんは先に行きましたよ!」
そういえば寝ていても分身が完璧に維持できるようになった。
それによりアへナは俺の精神に戻ることなく普通に暮らしている。
昨日は炎華の家に影葉も含め泊まったそうだ。
そんなに広くないだろうにお泊り会とは。
「モノさん!」
「ああ、悪い悪い」
炎華がキレそうなので急いで外に出た。
話を戻すと村の住民が倍くらいになったので食料が足りなくなった。
それにより若干、空気が悪い。
鬼側は炎華が悪魔側は炎牙が上手いこと抑えてるがいつ爆発するか分からない。
昨日寝る前に戦ったメンバーで会議をしたのだ。
その流れでアへナは泊まりに行ったがそれはどうでもいい。
昨夜の会議
「と言うことで食料の備蓄もなくなりそうです。誰かいい案はありませんか?」
炎華が聞くがすぐにいい案が思いつくなら試してる。
仕方ない。ここは統治者だった俺がそれっぽい案で場を和ませよう。
「畑を増やせば良いんじゃないか?」
「それはやりますけど今すぐ食料が手に入る訳じゃないですからね」
ド正論だ。いや待て、この世界には魔法もある。
なら作物を成長させる魔法だってある筈だ。
「魔法でどうにか……」
「できるならやってます」
そりゃそうだ。出来ないからやってないのだ。
アへナに図書館に行ってもらって調べてもらうか?
無理だな……インターネットですぐに食料を手に入れる方法と調べてもこんな村では試せることはないだろう。
ついでに後から聞いたところ作物を成長させる魔法はあるらしい。
だが魔法で成長させた分だけ魔力濃度が濃くなって食べられたもんじゃないらしい。
強すぎる魔力は毒にもなると言われた。そりゃ無理だ。
「どっかで買うのは?」
アへナが言った。
俺はこの辺で買える場所を知らないが確かに金が十分にあるならいい方法かも知れない。
「金があったら良いかもな」
「金なら一応ありますよ」
「え?」
そう言えば買いに行ってるとか言ってたな。
それによく考えたらこいつらの服も明らかに村で作れるものじゃない。
「でも大量の食料を買うだけの金があるのか?」
「ありませんね」
「だよなぁ……」
結局いい結論は出なかったので今まで通り動物を狩り肉を集めたり木の実などを集めるなどして食料をどうにかするしかなかった。
動物の肉以外は売るためにとりあえず保管された。
と言うことで冒頭に戻る。
現在
「これ動物が全滅するくね?」
俺と炎華は集合場所まで走りながら話していた。
このペースで狩っていたら森から動物が消えてしまう。
木の実などもそうだ。森が大変なことになってしまう。
「仕方ありません。それともいい案を思いついたんですか?」
そう言われて反論できずに考えた。
そこで一つふと思いついたのだ。
ただこれは駄目な気がする。
まあ一応言ってみるか……
「確か妖玄師匠って他の人にも再生使えるよな。なら動物を切って再生してを繰り返したら肉が無限に取れるんじゃないか?」
自分で言っててかなり酷い気がする。
まだ自分の肉体でそれをやるとかのほうがいいかも知れない。
「妖玄師匠に頼り過ぎですがいい案ですね。妖玄師匠に話してみましょう」
思ってたより引かれなかった。
異世界の感覚が違うのか、それとも炎華が気にしないってだけなのか、分からないが丸く収まるならいいだろう。
俺たちは集合場所にいた師匠にその案を話してみた。
「可能ですがいい方法とは言えませんねえ」
妖玄師匠はいくつか理由を挙げた。
一つ目は魔力消費が大きいから。
例えば足を切って再生させるとする。
足を繋ぎ合わせる程度ならまだ消費は軽い。
食べるためには繋ぎ合わさずに生やさないといけない。
生やすほうが魔力を消費する、というのが理由の一つ目だ。
二つ目、これが重要だった。
作物を成長させた時と似たようなデメリットがあると言われたのだ。
魔力で再生させたのだから再生させた部分の魔力濃度は濃くなる。
しばらく経つと魔力濃度は薄まるらしいのだがその頃には既に腐ってる可能性もあると言われた。
欠損からの再生は特に魔力を使うらしいから確かに濃度は高くなるだろう。
ある程度の実力があれば食べても問題ないらしいけど妖玄師匠が再生させた場合は実力的に食べれるのは師匠二人だけの可能性が高いらしい。
と言うことで結論は無理だった。
俺も状況が状況とは言えやりたくない方法だったので無理で良かったと少し思った。
なのでいつも通り狩りが始まった。
「索敵ですぐ見つかるのは便利だけど一匹も逃さないからな。ほんとに絶滅の危険が……」
みんなと別れて狩りをしながら独り言を呟く。
そんな事はみんなが理解してるだろう。
だが他にいい案が思いつかないのでやるしかないのだ。
もう少し経てば作物も育ってある程度はマシになるだろうが育つまでが問題なのだ。
もっと食料を保管しとけばいいのにと少し思ってしまったが俺も余所者だからな、偉そうな事を言ったら追い出されかねない。
追い出されたら俺は生きていけるのだろうか。
この世界の通貨も知らないから無理かもしれない。
「全然動物が居ないな。もう全滅したか?」
索敵しながら移動しているが全然見つからない。
俺の索敵が狭いからと言うのもある。
師匠とかは索敵範囲を狭めて精度を上げるとかするらしいが俺は全力で10m弱ですよ。
基本は目視で索敵は隠れてる動物を見つけるくらいだから別に良いんだけどな。
だけど皆には期待されてないと思う。
「そもそも魔力の存在を知ったばかりの人間に一人で任すのが間違いなんだよ。俺はこの世界に来た時間で言えば生後一週間だ。赤ん坊に狩りを任せるとはなんて奴らだ」
文句を言ってみたがどうにもならない。
そもそもこの三日間での俺の戦果は二匹だ。
朝から晩まで働いてみんなが沢山狩って来る中で俺が帰ってきた時のアへナと来たら第一声が「何してたの?」だ。
アへナ以外も正直、目が冷たい。そりゃそうだ。
いきなり村に来て狩りもせずに食べはする。最悪だな。
独裁者だった頃にこんな奴がいたら処刑まではいかなくともぶん殴ってたかも知れない。
間違いなく何かはしていたはずだ。
「でもせめて……せめてもう少し経験を積んでからさあ……」
みんな俺よりも索敵が上手なんだよな。
一週間でここまで出来てるから苦手と言う訳ではないはずだから経験だよ。経験が無いんだ。
アへナの分身を解いてやろうかな。
「やめとこ。多分だけどボコボコにされる」
凄く嫌な気分だ。落ち込んできた。
ネガティブな事を考えていたら索敵が解けてた。
それに気づいたのは自分が空中に浮いた時だ。
索敵をもう一度使って理解した。
牛に跳ね飛ばされたらしい。
少し前ならビビってた。だが今は違う。
魔力を纏っているからダメージはほとんどない。
あっちから食料が来てくれるなら大喜びだ。
「殺す」
と言うことで魔力を持った牛の殺し方を紹介しましょう。
まず牛以上の魔力出力で魔力を纏いましょう。
そしたら落下しながら牛の頭を殴ります。
脳を揺らされた牛を殴ります。
牛を殴り続けます。
この頃には恐らく牛の意識はありません。
そこまでくれば勝利は目前です。
更に殴りましょう。
そうすれば終了です。
生きてた場合に備え足も折っておいて逃げられないようにしましょう。
この世界は魔法があるのでまだ動いても不思議ではありません。
少し……かなり重いですが魔力を纏えばなんとか持っていけます。
と言うことで村に戻りましょう。
村に戻ると炎華が戻ってきていた。
「モノさんがこんなに速く狩ってくるなんて珍しいですね」
炎華が驚いて言ってきた。
「襲われたんだよ。運が良かっただけだ」
「モノさんは弱いからあちらから向かってくるんですよ」
腹立つなこいつ。否定もできないから余計に。
この世界の動物がどれほど食べれるのか知らないがもうそろそろ足りるんじゃないだろうか。
牛一頭でもだいぶ肉が取れるし。
「あとどんだけ狩ればいいんだよ」
「そろそろ大丈夫だと思いますよ。モノさんが大きいのを狩ってきましたし」
「なら良かった」
俺も解体の手伝いをしに行く。
もちろん素手ではない。ちゃんとナイフを借りた。
帰ってきたアへナたちと共に日が暮れるまで狩ってきた動物を処理していた。




