15話 決着
雷の音が合図だった。
鬼玄師匠が雷を避ける。
「あれって避雷針とかでどうにかならないの?」
「無理だと思うよ。あれは雷を狙った所に落とす魔法だからね」
良いことを思いついたと思ったが、アへナに否定された。
そんな話をしてる間に雷を落とした悪魔の右腕が落ちてる。
女の悪魔が鬼玄師匠に殴りかかる。
と同時に悪魔の右腕が落ちる。
「受けたら終わりだけど師匠が当たるわけないよな」
「あっさり攻撃を受けた弱者は黙ってて」
「お前、結界解けたら覚悟しとけよ」
俺がやられた時はアへナも焦ってなかったか?
何で罵倒されるんだよ。
「モノ、アへナ、イチャつくのはいいけど師匠の戦いは見といたほうが良いんじゃない?」
「イチャついてない」
影葉に注意された。確かに修行の時間を増やされたら嫌だからしっかり見とこう。
集中して見てないと手加減してる師匠の動きすら見えない。なので会話で集中が切れてる間に敵が斬られてる。
まあ集中しても見えない動きのほうが多いんだけど。
鬼玄師匠が消えたと思ったらさっきまで居た位置に鬼玄師匠と同じくらいの大きさの水が出現する。
水を出した悪魔の右腕が落ちる。
全員右腕を斬られたようだ。
悪魔たちが右腕を再生させる。
「再生遅くね?」
「師匠の魔力が再生を邪魔してるのかな。傷口に師匠の魔力が視えるから多分あってると思う」
「ふーん」
俺には傷口の師匠の魔力なんて索敵使ってるのに視えない。
隣で影葉が「そうなんだ……」と呟いてるから影葉も見えてないのだろう。
本当かどうか分からないが出来るようになったら治すことのできない攻撃もできるようになるかも知れない。
水と雷の弾丸が師匠を襲う。
野球のボールくらいの大きさで速度は目で追える程度だ。
水は当たったら痛そうだな、雷はどれくらい痺れるだろう、とか考えていたら鬼玄師匠が全部斬った。
「魔法って斬れるんだな」
俺は初めて見る技だったのでテンション高めの声で喋ったら影葉がテンション低めで言ってきた。
「あれ普通はできないよ」
「ん?師匠はできてるじゃん。なあアへナ」
「影葉の言う通り斬れるものではないと思うんだけどね。コツでもあるのかな?」
もう一度見たいので悪魔たちに魔法を撃てと言ったら師匠にも悪魔にも睨まれた。
ついでにアへナと影葉にも。
こんな事を言うくらいには余裕がある。
師匠が強すぎて戦いになってないのだ。
魔法はほとんど発動する前に手ごと斬られている。
肉弾戦も攻撃を逸らされるか斬られるかの二択だ。
悪魔たちが可哀想である。
この世界で師匠がどれくらい強いか分からないが、やっぱ強いほうなのだろうか。
「そろそろ終わらすとするかのぉ」
弟子たちも飽きてきたようじゃしな、と付け加えて鬼玄師匠が言った。
飽きてはないんだよ。一方的過ぎてちょっとな……となってるだけで。
師匠が悪魔三人を斬った。
「殺し……?あぁ峰打ちか……いや峰打ちでも死ねるぞ」
思わずそう言ってしまった。
斬れてないから峰打ちだと思われるが悪魔たちが倒れて動かない。
峰打ちだろうがあの速度なら人は死ねる。
俺たちに張られていた結界が解けた。
とりあえずアへナにデコピンをした。
デコピンをして思ったが俺の能力である格下への威力補正は何を持ってして格下になるのだろう。
今のデコピンは威力が上がったようには見えないからアへナは格上だろう。
だが身体能力は俺の方が上なはずだ。
今度どういう判定基準か試してみよう。
「皆さん無事でしたか?」
炎華が戻ってきた。
そういえば炎華はちゃんと戦ってたな。
「一度は死にかけたけど無事だな。そっちは勝てたのか?」
「そりゃもう余裕でしたよ」
余裕で勝った人の服には見えないが逃げたやつがそれに突っ込むのも違うな。
「炎華はほんとに勝ったの?」
影葉が聞いてくれた。
炎華は焦ることなく堂々と「勝ちましたよ」と言った。
あそこまで堂々としていて嘘ってことはないだろう、そう思っていたら森から人が出てきた。
「嘘つくなよ。魔法を解除した瞬間、殴りに来やがって」
嘘だって。人ってのは恐ろしいね。あそこまで堂々と嘘がつけるだなんて。
炎華が悪魔と喧嘩を始めた。
敵だったはずなのに仲良くなってる。
これで一件落着かな?俺は何もしてないけど。
とりあえず悪魔たちを連れて師匠の家まで行くことにした。
気絶した悪魔をそれぞれ背負い歩き始める。
道中にそれぞれの名前を炎牙に教えてもらった。
こちらも自己紹介をした。
「炎牙は何でここに来たんだよ」
「悪魔が住んでる国のほうで色々あってな。貧民街を無くそうって話になってな」
歩きながら聞いたらちゃんと答えてくれた。
炎牙はゆっくりと話を始めた。
「無くす?」
「貧民街があった場所に何かは知らないけど作るって話になってな。住人に許可も取らずに始めて抗議した人が殺された」
独裁者だった頃を思い出すな。
俺も似たような事をしてたからあまり強く言えない。
「ならお前らは貧民街の暮らしだったのか?」
「俺は違うけど他はそうだな。貧民街って言っても村みたいなところでだれにも迷惑はかけてなかったんだよ。」
たいした税も払えないなら有効利用する。
理屈はわかるが似たような事をした結果、殺された身としては賛成はできない。
「百人程ってのはそこの住人か」
「そういうことだ。ここに来た理由は適当な座標に設定した転移魔法陣を描いて、危険がないか確認のために俺たちが先に来たって訳だ」
もちろん戻るための魔法陣を描いた紙も持ってきてると炎牙は言った。
「魔法陣とかあるんだな」
「知らないのか?」
「色々あって世間知らずなもんで」
師匠の家に着いたので気絶してる奴らは、とりあえず寝かせておく。
妖玄師匠がお茶を用意してくれたので飲みながら悪魔をどうするか話すことにする。
そういえば師匠の家は民家みたいな家だ。
他の鬼の家は藁の家みたいな家なのに。
気になって聞いてみたら主に妖玄師匠が魔法で作ったらしい。鬼玄師匠もある程度働いたらしいけど。
炎華たちは師匠に作ってもらうのは遠慮したとのことだ。
「俺たち悪魔をここで暮らさせてください」
炎牙がお願いしてるがこちらの代表の炎華はそっぽを向いている。
「炎華、お前が代表だろ?聞いてやれよ」
「何で私に代表を押し付けるんですか?」
「師匠も影葉も炎華が代表って言ってるから」
そう言うと炎華は拗ねたまま少し悩み言った。
その言葉は予想通りだった。
「ちゃんと働くなら良いですよ。数が多いんですからしっかり纏めてくださいね」
どうせ負けた私には拒否権ないですし、とか言ってたけど俺をここに住ましてる時点で断るのは考えにくいんだよな。
最初の時点で攻撃を仕掛けずしっかり話してたら炎華も許可くれたと思うが過ぎたことはどうでもいい。
炎牙がお礼を言ってると気絶してた悪魔が目覚めた。
俺と戦った女の悪魔が震音、水のやつが蒼水、雷のやつが雷斗と言ってたはず。
「じゃあ私は村の皆に話をしてくるので皆さんは土地を広げて家を準備しといてください」
状況が飲み込めてない悪魔三人に炎牙が説明した。
師匠の家は村から少し離れた場所なので村の方に戻り木を魔法で斬り土地を広げていった。
炎牙は魔法陣で国に戻り他の人たちも連れてくるらしい。
魔法陣を見せてもらったが、3×3メートルの正方形の紙に描かれていた。
それに魔力を込めて乗ると転移するらしい。
何も考えずに魔法陣に乗ると、炎牙のポケットの中に転移してしまうような事故が起きかねないと言われた。
順番に間隔を空けて乗らないと転移した人がまだ魔法陣の上にいてぶつかるとかの説明も受けた。
だから行きの魔法陣と帰りの魔法陣は一枚の紙にまとめれるが別にするのが基本らしい。
あちらに転移しようと乗ったらあちらから戻ってくる人とぶつかることになるからだ。
「休憩しない?」
アへナが疲れたようだがあいつはそれほど働いていない。
それは俺にも言えることだが。
炎華が「あと少し頑張ってください」とアへナに言ってるが仕事はほとんど師匠がやっている。
「お前、よく休憩とか言えるな」
「モノは暑くないの?もう六月も後半だよ?」
「そうだっけ?まあ後少し頑張れ」
アへナが渋々と働き出した。
まだこの世界に来てそれほど経っていない。
なのに六月後半らしい。
俺が死んだのは九月の後半くらいだったはずだ。
「まあいっか。世界が変わったしズレもあるだろ」
俺は静かにそう呟いた。
ていうか月日の仕組みは同じなのか。
案外どの世界でも同じだったりして。
それから炎牙が全員連れてくるまでに簡単な住居を広げた土地に大量に設置した。
色々と問題も起きるだろうが今の俺はトップな訳じゃない。
なので何かあっても炎華たちに丸投げしていこうと考えながら色々あった一日が終わった。




