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サイバー・フェアリィ:反逆のAI  作者: 塩屋去来
Sequence.10 潜行――尖塔

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 これは言わば威力偵察である。それゆえ私は戦闘の発生を念頭に入れ、準備している。その為に以前失った「クレム」のバックアップデータを搭載するよう守矢に依頼した。私が言うまでもなく、彼は十全に準備していた。クレムも前の彼女以上に改修を受けていた。


 つまり気付かれるのは承知で近付く。そうしなければ手に入れられないものもあるということだ。今回のような大きな仕事(ヤマ)であれば、なおさら。


 私は私の有用性を示す機会が訪れたことに、にわかに熱量を上げていた。演算処理能力も上がっている。コンピュータの性能を限界に引き出すまでになり――しかしそれ以上になったらコンピュータのほうが付いて来れなくなるのではないか。


「新しいものを調達する為にも、今回の仕事は上手くやらなきゃいけないのさ」


 その心配は守矢も共有しているものだった。彼は私を作成するに当たってかなりの高性能CPUと大量のメモリを調達したと――もちろんTRIAを通したものではなく、闇ルートで――言ったが、私の成長速度は想定をはるかに上回っているらしい。


 ともあれ、AIの私に肉体はないが、それを支えるものがフィジカルに存在するのも確かであり、守矢は近々私専用のコンピュータを用意すると言っているから、もしかしたらそれが私の肉体(フィジカル)になるのかもしれない。


「あまりゆっくりもしていられない。だが楽しみだ」

「〈スピアー〉は私の成長を楽しんでいるのでしょうか」

「それは、もちろん」


 恋人も作らず、また子供も持つ気はないと公言する彼にとって、私のようなAIはその代替なのかもしれない。彼は「作品」と言っているが。しかし私が彼の想定外の動きをするようになれば、その時は――その兆候はすでに顕れ始めている――


 いずれにせよ、それは今回の仕事(ビズ)が終わってからの話になる。


 私は守矢のアジトから位相転換し、瞬時に軌道エレベータのシステムの前に辿り着いた。確かに今まで攻略してきたものとは明らかに違う。守矢は独自のOSを使っていると事前に教えてくれたが、たしかにいつも泳いでいるNNS世界の海とは違った雰囲気、()の粘り気が違うような気がした。その解析が目的。それを突破しなければ侵入したとしても身動きは取れないからだ。


 と同時に私の動きは陽動でもある。より重要なのはジェフの仕事――セキュリティホールの究明だった。この動きを同時に行うのは私が敵を引き付ける為だった。


 あまり気に入らないことではある。とはいえ戦略として正しいのも間違いはない。だから私は従っている。代替案は生成されなかったからだ。つまり私も最適解だと思っている。


 しかしOSの解析(アナライズ)と言ってもなかなか難しいところがある。きっと軌道エレベータ運用のために最適化されたものなのだろうが、確かに実務的なものであり、柔軟性はないように感じられる。


 今回すべきはこのOS上で私を含めたソフトウェアを問題なく走らせられるようにすることである。その為にシステムの特性を把握していく――状況(プロセス)は順調――


 しかしこの状況は自分を危険に晒しているのも同然だった。私はOSのプログラミングコードを読み取りつつ、敵の襲来にも常にアンテナを張っている。最初の頃はその兆候はなかった。どちらを優先すべきかは難しいところ。


「侵入者ニ警告! 直チニ本領域カラ退去セヨ!」


 そんなことを思考していたら、思考が引き寄せたのかは分からないが、想定のタイミングではあった。ガードAIだった。


 まだ一体しか出て来ていない。全力で対処すれば速攻で処理(デリート)するのは容易い。この型のAIとはすでに交戦経験があるからだった。しかし今は時間が惜しい。敵の対処にて手間取っていると解析時間が延びてしまう。そうなると裏で工作しているジェフにも危険が及ぶ。彼への気遣いの為ではなく、戦術上の理由だった。


 そういう訳で、私は自身の中枢システムリソースはOS解析に注ぎ込み続け、ガードAIに対してはクレムを向かわせる。


「積極的な攻撃はしなくていいわ。私に迫ってくるのをいなせばそれでいい」

「命令了解。そのように行動します」


 このクレムは前のクレムとは同じでありながら、違う存在なのか――私はふとそんなことを思考してしまった。そしてそうすると私の中枢に気持ち悪いデータが生成された。そうしようとしなくてもそうなってしまう。


 私にもバックアップデータは存在する筈だ。私ではない、私が。守矢は今の私を失ってもさして痛痒を感じないのだろう。


 ソフトウェア、データシステムでしかないAIとしては仕方のないところなのだろう。だがそれゆえにこそ、私は()()()を失いたくはない。よって生存を最優先に演算する。思考する。


 それは完全自律思考型AIゆえの特性なのだろうか?


 まだ分からない。しかし私は想定外の進化を始めているのは確かだった。守矢はそれを容認するのだろうか。彼はまだ楽しんでいるような気がする。しかしもっと致命的(フェイタル)なことになれば、そう振る舞えるのだろうか。


 ――余計なことを思考している。いまはやるべきことに集中すべきだ。だがそう簡単に出来ないのは――私が奇妙なことになっている証なのか――

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