表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバー・フェアリィ:反逆のAI  作者: 塩屋去来
Sequence.4 友人――共闘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/78

03





 私は実体のない世界に生きているようではあるが、じつはそうではない。あくまでそのデータは肉体世界(フィジカル)に存在しているシリコンにある。その本体は守矢の保有する個人サーバにあるが、そこから離れて活動している時も、実際にはコンピュータの中でうろついているに過ぎない。


 そのコンピュータはなにで動いているか。それはとても重要なもの。


 電力。


 ニューラル・ネットワーク・システムが成立した理由は色々とあるが、その中でも一番重要だったのが電力の供給革命だった。それは軌道エレベータの開発によって成された。熱圏を越えて、直接太陽エネルギーを受け取るそのシステムは、圧倒的な電力を人類に供給した。そしてその力を以て人類は内的宇宙、NNSに飛翔した――あるいは引き籠った。


 しかしながら、賢明な指導者たちはその軌道エレベータだけの電力に依存し切るのは危険だと考えた。


 そういう訳で地上ではなおもサブ電源として原子力発電所がなお稼働している。核融合発電もなお研究されているが、今のところそれはまだ実現していない。


 そのインフラすべては、タケシバ・リソース・インダストリー・アンド・アグリカルチャーが実権を握っている。


「TRIAは3大企業の中ではまだ良心的だけど」


 そんなことはまるで信じていない、というような口振りで守矢は言った。


「確かに俺達の生活の首根っこをつかんでいるのは奴らだ。だからこそ攻撃の意味がある」


 守矢と同様、ジェフも単に利益をかっさらう為だけでなく、彼自身の美学によってハッカーをやっているようだった。


「〈スピアー〉とあろうものが、そんなところで怖気づくのか?」

「面白い話だ、と言っただろう? 乗り気ではあるよ。ただぼくはきみよりは幾らか深刻なだけさ」


 原子力発電所奪取計画。


 それは一介のハッカーが対象にするには大きすぎる案件のようにも思える。生活基盤を支えるTRIAを本格的に敵に回すと厄介なことが起こる――守矢が考えているのはそんなところだろう。しかし彼はそれを勘案した上で「面白い」と言っているのだった。


「俺はまた、お前の見せる魔術が見てみたい」

「〈ソーサラー〉を名乗るお前がそんなことを言うのかい」

「もちろん、俺自身の魔術も見せてやる。ショータイムだ」


 そこには含みのある言葉もあったように感知する。


「しかし、完全自律思考型とは。お前、楽を覚えたい気なのか? ニュースは見ているぞ。下僕に仕事を任せて左団扇、なんて晋作はあまり見ていて気持ちいいものじゃない」

「そういう訳じゃないさ。だがぼくらは常に進歩していかなければならない」


 魔術師たち――あるいはペテン師たちはそんなことを言い合う。私はずっと彼らを観察していた。学習機能を動かし続けた。


「無駄話はここまででいいだろう」


 それから実際の計画立案にかかった。そこでは私も中々重要な位置付けをなされていた。


 言うまでもなく、発電所には強力なセキュリティが施されている。CSAとTRIAが共同開発した防衛(ガード)システムが稼働している。今回もラルフ・アスムッセン氏がその脆弱性を嗅ぎ付け、技術(テク)をもったハッカーたちに(つまり今回はジェフに)売り渡したのである。


 ラルフ・アスムッセン氏は自身でハッキングを行わないのだろうか、という疑問もあったが、それには守矢が「適材適所というものだよ。人間には向き不向きもあるし、役割は分散していたほうがリスクの軽減になる」とあっさり答えた。私にも異論はない。


 ともあれ、計画。


 当然出動してくるであろうガードAIへの対処は基本的にジェフが行うことになった。かれが迎撃をいなし、その間に私と守矢が協力して防壁を突破し、動力キーを奪うという算段。


「〈ソーサラー〉なら、すでにそれ用のAIを作成しているんだろうな」


 それがジェフのスタイルだった。仕事の都度、それに適したAI、ソフトウェアを作成する。彼は守矢のように汎用的なソフトを貯め込む(バンク)ことはしない。どこまでも即興的な盗みを好むハッカーである。それは良いか悪いかという話ではない。単純に好みの問題だ。すくなくとも、〈ソーサラー〉はそれで結果を出しているのだから、文句のつけようがない。


芸術家(アーティスト)は手を抜くってことを知らないからな。凝り性なんだよ」

「お前もすくなからずそういった性向は持っているだろう」

「さあ、どうだかね」


 細かい計画はさらに詰められた。それはすぐに分かるだろう。しかし今すぐ決行、という訳にもいかない。


「タケシバの日程(カレンダー)も調べた。それによれば、次の日曜日が一番人員が手薄になる。AIに任せっきりで防衛は出来ないことを、奴らに思い知らせるにはいい日付だ」

「いいだろう。ぼくもまだ時間は欲しかったからね」


 守矢は私の調整(メンテナンス)の時間が欲しいと言った。そういう訳で決行日と集合場所を決めて、ジェフは一端去り、それから守矢は私に触り始めた。


「それなりにバグデータは発生しているな。自己除去(クリンナップ)システムでは追い付かないか。いや、それは想定していたことだけれどね」

「私は完全ではありませんか」

「完全な存在なんかどこにも存在しない。人間も、人間が作るものも。そしてこの宇宙に神は存在しない」


 では、「完全」自律思考型とは、どういう意味を持つのか――?


 私は無防備な状態になって、彼の話を聞いていた。私自身が感知できないバグが内部に存在するのは――仕方ないのかもしれないがやはり違和感はある。できれば彼の手を煩わせることなく、完全に自己完結できるAIを目指したい。そのためにはさらなる更新(アップデート)が必要と認識。しかし守矢の言葉を真に受けるなら――それは永遠に不可能なのかもしれない。


 その作業は1日で終わり、私は守矢の自宅(ホーム)に居座りつつ、遠隔情報収集に努めた。私は延々と情報を貪り続ける。


 そして決行日当日。グリニッジ標準12:00。作戦は始められた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ