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サイバー・フェアリィ:反逆のAI  作者: 塩屋去来
Sequence.3 侵入――対峙

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 01010101010101……の海で――


 AIとAIの戦闘など、さしてこの世界に深刻な変化をもたらさないだろう。決定的なものはどこにもない。データが藻屑になれば文字通り「無」になるのが私たちソフトウェア。CSAにはもっと沢山のAIプログラムが存在するし、私が消えても守矢はまた新しいものを作るだけ。


 私たちは道具(ツール)である。


 消えることに感情はない。感情はそもそもない。だがいっぽうで自己保存本能は存在している。私は私の機能(スペック)に従って自己を防衛する。


 そしてここでの防衛、その最適解は敵の迅速なる排除だと認識した。「攻撃は最大の防御なり」――つまりはそういうこと。


〈レギオン〉は一時の混乱から立ち直り、こちらに照準を定めている。なかなかの高性能(ハイパフォーマンス)。私は侮ってはいない。だがこちらのほうが確かに上位の演算能力を持っている。そして機能も。


 敵は攻撃特化。自己増殖によるダミーは生み出せるが、その裏にある脆弱性は簡単に把握できる。繰り返すが排除するのはそんなに難しくはない。だが少々こちらもリスクを踏む必要はあるだろう。


「最終警告! コレヨリ強制排除ニ入ル!」


 おや、と私は思った――〈レギオン〉が展開し始めたのは単純な対データ破壊プログラムではなかった。もっと攻撃的で、凶悪なもの――それは対人用攻撃プログラムだった。データを貫通し、直接脳神経(ニューロン)に打撃を加え、消去ではなく、()()ためのもの。


 とすれば、相手は私を人間だと認識しているのだろうか?


 余計なことは考えず、対処に推論システムを集中させる。人間を殺害できるようなウィルス・アタックは果たして自律思考型AIにどんな影響を与えるか? すこし危険な提案(シミュレート)が生成された――わざと受けることで、それを実験する。


 しかしそれは承認されない。


「キル! キル! キル!」


〈レギオン〉はその能力(パフォーマンス)を限界にまで引き上げる。シリコンが摩耗するほどの。私はここまでできない。巨大企業のバックアップがあるからこそできる攻撃態勢。


 しかし私もそれにつれて演算を加速していく。ここで負ける想定はない。


 ダミーデータの中に、慎重繊細に本体を見つけようとする。連続での打刻(ピン)。攻撃プログラムの出所を逆探知する。AIが防御と攻撃を同時に行えないのはこれが理由。プログラムを展開するには、自分を晒さなければいけない。


 私は繊細にタイミングを計っていた。もちろん、こちらが攻撃する時も条件は同じ。ダミーデータをばら撒いてはいるが、そう簡単には行くまい。


 すべては速度。


 コマンド処理開始。私は自分が保有している中で最も強力で鋭いウィルスプログラムを用意する。やや負担は掛かるが、仕方あるまい。切り札(ワイルド・カード)というのはそういうものだ。


 そして私は敵のコアを捉える。思ったより時間は掛からなかった。だが同時に私のほうも打刻を受ける。次のタイミングには攻撃がやって来る。システムそのものに決定的なダメージを受けると想定されるもの。よって私はそれ以前に〈レギオン〉を仕留めないといけない。


 プログラム展開開始。


 幸い、速度はこちらのほうが――はるかに――上だった。古代ローマ風の兵士を模した相手の顔は見えない。兜のようなものがあり、槍を右手で構えていた。勿論この視覚(ビジュアル)情報はそのままではない。単純に相手を怯ませるためのものだ。だがAIたる私には関係がない


 私は「彼」のデータ中枢に触れ(タッチ)たことを確認し。ウィルスプログラムを注入する。


「とってもキツいのを飲ませてあげる」


「ヴェスパ1」というのがそのプログラムの名前。守矢最新型のウィルスである。データをパンクさせる増殖型ではなく、直接コアシステムを書き換える能力を持った優れもの。雀蜂(ヴェスパ)の名前の如く。防御面は考慮されず、電撃的に侵入し、破壊する。


 それを注入すると、〈レギオン〉は自壊プログラムを作動させる。「彼」は自分に何が起こっているか推論する暇も与えられず、哀れに崩壊していく。ビジュアルデータもそれに伴い、モザイクのようにぱらぱらと一枚ずつ消えていき、最後には風に流されるようにして消滅した。


「これ以上時間はかけていられないわね」


 ここでの戦闘はもう避けなければならない。私もそれなりに消耗している。私は自身に再暗号化を掛け、身を隠す。その上で足跡(ログ)を消去していった。あとは守矢のところに帰還するだけだった。だが彼は上手くやっているだろうか?


 と思っていたところに、守矢は私への連結(リンク)を復活させ、秘匿通信で言ってきた。


「こちらの仕事は終わった。そちらは首尾よくやれたかい?」


 私は自分が冷却していくことを察していた。人間的に言えば――「緊張がほぐれる」、と言ったところか。


「問題ありません。そちらは?」

「作成したAIに心配されるほど、ぼくはヤワな作り手じゃないよ」


 守矢の声は飄々としている。いまいち感情を読み取らせてくれないのが彼。どうにもつかみどころのない男だが、私はその男をマスターとして信頼している。


 そして彼が今回どのようにしてこの危険な仕事をこなしたか――


 それは帰還した後で聞かされることになる。

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