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サイバー・フェアリィ:反逆のAI  作者: 塩屋去来
Sequence.3 侵入――対峙

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04





「レッド・アラート! レッド・アラート! 第A級攻撃配置! 早急ニ敵性存在ヲ排除セヨ!」


 私はなんとなし(ファジー)に、CSAの手癖というか、感性というものを理解し始めていた。正義を行使するに、不用意な先制攻撃はしない。かれらの戦術は基本的に攻勢防御である。積極的に敵を排除(デリート)する意欲に欠けている。


 一面で言えば、それはいささか熱狂的に人類を守護する、という強力な意志がないようにも見える。だが英雄的な攻撃は、巨大なネットワークを事実上一社で守護しているかれらには必要のないものでもある。


「なるほど、〈スピアー〉の言う通り――」


 しかしながら、一旦敵性勢力と判断した相手には容赦はないのもその合わせ鏡。CSA自動セキュリティシステムは一気に私たちの排除を目的に起動する。


「とはいえ、まだ型落ちね。ここは最重要防衛ポイントではないのか、それとも単に(マネー)不足なのか……」


 CSAにももちろんソフトウェア開発能力はあるが、守矢のような個人(あるいは奇人)を除けば、AIの開発の最先端はAEのほうに分がある。だから二社は協力してセキュリティAIを開発しているのだが――


 出張ってきた攻撃型(アサルト)AIは第7世代。さっきのガードAIよりも古い。


 だがここで私は慎重にならざるを得ない。旧世代だからといって性能が決定的に落ちる訳ではないのだ。最新型AIが開発されても、すぐにすべてを更新できる訳ではない。アップデートによって最新世代にも対応できるように改修されているし、技術という面で言えば「古い」というのは必ずしもハンディキャップではなく、むしろ経験が蓄積されている分、安定もしている。


 守矢流の言い方をすれば「老練の戦士」という訳だ。


 状況解析(アナライズ)開始。


 使われているのはすでにジャンク市場にも出回っているCSA製第7世代攻撃型AI〈レギオン〉。特性はその自己増殖能力の高さ、そして速度である。「量」で潰すという単純明快な攻撃設計を為されているタイプ。じっさい「彼」のコアはひとつだが、それを守り、同時に攻撃能力を確保する為に高速で増殖展開している。


 まだ人間のエージェントが出て来ないのは幸いだと判断する。


〈レギオン〉の消去プログラムは膨大かつ高速に展開され、クレムのダミーデータが次々と潰されていく。あまり心配はしていない。「彼」は攻撃に特化しており、こちらの足跡(ログ)を回収している訳ではなかった。「(キル)せば」いいだけという至極単純な戦術設計構造。


「敵の侵入速度は高速かつ深々度。これ以上は持たないかもしれません」


 命の――命、とあえて表現するが――危険に晒されながらも、クレムは冷静に報告する。彼女にも自己保存プログラムは存在するが、だからと言ってバグを起こして狂乱することもない。それがAI。コンピューティング・プログラムの一種。


 ここまでくると再暗号化は意味がない。というか間に合わない。となればひたすらダミーデータ、チャフを撒くしかない。


「生存を最優先に考えなさい、クレム。ここであなたを失いたくはないわ」


 私は瞬時にAIの「喜ぶ」指示(プロンプト)を打つ。クレムも経験豊富であり、防御となれば迅速な対応を行う。


「命令了解。持ち堪えます」


〈レギオン〉はまだ私を捉えていない。打刻は頻繁にあったが、それはすべてダミーに当たっている。私の心臓(コア)を貫くまでには至らない。私は圧倒的優位を観測していた。


 じつを言えば、この〈レギオン〉をここで(デリート)すのは簡単だった。だが私は本来の任務を忘れていなかった。それは敵の打倒ではない。守矢が本命を奪取(ハック)するまでの時間稼ぎ。


 つまり、ここでこの攻撃型AIと対峙し続け、注意を逸らし続けることが重要になる。しかし長引かせると本隊がでてくるかもしれない。ここはあくまで前哨であることを私は認識していた。


 となれば、今度は守矢の速度が重要になってくる。


 とはいえ、私もいざとなればすぐに対応できるように準備している。具体的に言えば、敵を消去し、逃亡すること。できればクレムも回収しておきたい。言うまでもなく、自己保存プログラムは私にも存在している。


「……人間を排除するように戦術設計されているのかしら」


〈レギオン〉の動きに若干のエラーが見られ始めた。どれだけ攻撃をしてもこちらが落ち(ダウン)ないことにプログラム混線を起こしている。チャンスではあった――ここでならこいつを消去できるかもしれない――


 私は好戦的に出来ているのだろうか?


 たまに、自分を疑う「思考」が現れるのは――バグなのか――いや、私はそれを処理できる。深刻なエラーは出ていないのだから、問題はない。


「クレム、あなたは下がりなさい」


 彼女の限界を悟り、私は先に帰還させる。そして〈レギオン〉と対峙する。やられる心配はしていないが、これ以上電力を消耗すると勿体ない。問題は熱暴走による混乱だった。巨大なインフラを背にしている敵にはその心配はない。不利な点があるとすればここひとつ。


 時間稼ぎが第一なのは分かっている。しかしこれ以上防勢のままでいると消耗してしまう。


 ここで私独自の判断が生まれる――今までよりももっと、能動的な――


 ここで敵を撃滅する。それが私の生存戦略。

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