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八話 アンリエット家の休日

 あれから1週間がたった。

 その間も魔術の授業は行われた、模擬戦はあの時の一回だけだった。

 あの後は初級魔術を完全にマスターする時間だった、その中で分かったことは、私は風魔術が少し苦手だ、と言うことだ。

 と言うのも風魔術に関しては詠唱をしなければ放つことすらできない、何故か撃ち出すイメージが湧かないからだろう。

 火ならコンロのイメージ、水なら水道のイメージ、土なら土いじりのイメージ、回復系の無属性魔術なら怪我してから治癒する過程を脳内で早送りするようなイメージでできるのに、何故か風を起こすイメージが作れない。

 無論イメージができれば撃てる訳でもないが、ある程度やりやすくはなる。

 風の初級魔術は3種類ある。

一  風刃(ウィンドカッター)

風の刃を相手に放つ。


二  風弾(ウィンドキャノン)

風を質量として相手にぶつける


三  風付与(ウィンドエンチャント)

自身に使えば風のように素早く動けるようになったり、武器に使えば追加で風魔術が放てたりする。


 これはなんとか無詠唱で使えるようにしたい。

 今日も練習したいと思っている。

そんなことを考えていると、下の階から朝食の良い匂いがするので自室(オリバーと一緒)からオリバーを起こしてリビングへ行くと、

先に起きていた母さんと父さんがいた。

 「おはようございます。」「おはよう!」

と私たちが言うと

「おお、おはよう!」

 「おはよう、朝ごはんできてるから冷めないうちに食べなさい」と二人が言った。

 私が母さんの隣、オリバーが父さんの隣の椅子に座る。

 我が家の食事中の定位置だ。

 今日の朝食は、塩風味のパンとライアーウッドの実入りのサラダ、ちなみにライアーウッドはこの辺の森に生えていて、人の叫び声に似せた音を鳴らすことのできる魔植物で、人をおびき寄せ、聞きつけた人間や動物をツタで拘束して絞め殺し、養分にして生活している。

 だから生えてきたら早めに斬るようにしているらしいが、稀に成体まで育ってしまうことがあって、先日父さんが討伐に向かい帰ってきたときに持って帰ってきた物だ。

 実の殻は人の手のような形をしていて、色は肌色で本物の人の手と区別がつかない。

 最近はあまり成体まで成長することが無かったので、食べる機会はなかったが、以前食べた時にはこの実を捌いている母さんを見て、人を捌いているのかと思い、叫んだくらいだ。

 だがその味は見た目に反して意外に美味しい。

 殻の中身はアロエのような食感に、少しの酸味を含んでいる。

 ドレッシングやマヨネーズが無いこの世界において代役をこなせる数少ない食材だ。

 そしてメインはファイアーバードのソテー、こちらも父さんが森に出た時に討伐した魔獣だ。

 飛んでいるとサイズは1メートルを超える大きさがあるらしく、しかも火の粉をばら撒きながら飛ぶので、ちょくちょく山火事が起こるのでこちらも討伐依頼があったらしい。

 ちなみに討伐難度という物があって、高い順にS~Eで分けられるらしい。

 ライアーウッドはCランク、ファイアーバードはBランクだ。

 各ランクは狩猟組合が定めた試験があり、それを一定以上の成績で合格する必要がある。

 実力で言うと

 S=魔帝、神刀級レベル

 A=1級魔術師、聖刀級剣士レベル

 B=2級魔術師、鋭刀級剣士レベル

 C=3級魔術師、一刀級剣士レベル

 D=4級魔術師、二刀級剣士レベル

 E=5級魔術師レベル

 と言ったような感じだ。

 とはいえ普通はパーティーを組んで活動する、つまりパーティーでの総合戦力となるので個々の実力はそこまで高くなくても問題は無い。

 ただ、単騎で挑むとなるとこれだけの実力者でないと倒せないと言うことになる、しかし、父さんはパーティーを組んでおらず、一人で依頼を受けているので一人でBランク狩猟者だ。

 ご飯を食べながら改めて父さんの力ってスゲー!と思っていたところ、母さんが

「今日は家族みんなで出かけるよ!ご飯食べたら準備しといてね」

と言った。

 私は「えっ!出かけるの!?」

と勢い良く振り返って声を上げた。

 「ええ、今までは子供二人連れてだと全員の身を守るのは難しいと思ってたけどセレーネが意外と強そうだから、ある程度大丈夫でしょ」

 私は嬉しいけどオリバーは?

 と思って前を向くとめっちゃ目をキラキラさせたオリバーがいた。

オリバーは「お出かけ!どこ行くの?」

と今すぐにでも行きたいという感じで尋ねる。

 母さんと父さんは目を見合わせると、いたずらっぽい笑顔で口を揃えて。

「内緒!」と言った。

 私たちは不満げな顔をしたがそれだけだ、母さんたちは基本やると決めたらやるから、私たちは朝ごはんを食べながら、楽しみに待つしか無い。

この数分間が長く感じる。

 どこに行くんだろう?街だろうか?それとも森だろうか?

 まあどちらにせよ楽しみなことに変わりはない。

 そして母さんの作った朝食はいつも通り美味しかった。

 皆が食べ終わったのでそれぞれ出かける支度を始める。

 母さんは持ち物については特に何も言っていなかったが何か持っていくべきだろうか?

 いや、要らないか。

 父さんならともかく、母さんだ、何かあるなら言うはずだ。

 そうして私の服装はメイドインフォリア統一でサイズ90くらいの魔術練習の時に使っている軽い素材で出来た紺色の長袖シャツに、

 こちらも練習時に使っている動きやすい伸縮性に優れた、黒いパンツ。

と言う格好になった。

 準備ができたので一階に降りる。

 さっさっと着替えて一階に降りたオリバーがいたオリバーの服装は半袖短パン……兄さん?今秋ッスよ?

 前世の小学生かと思うような格好だがまあ良い。

 私が降りてくるのと同じくらいに、母さんたちが降りてきた。

 母さんは青色と白色のストライプシャツに、緑のカーデガン、ズボンは薄茶色のパンツスタイルで伸縮性に優れそうな物だ。腰には長剣一本を刺していた。

 父さんはモスグリーンのパーカー(のようなもの)とジーンズみたいな素材の長ズボン。腰には30センチ程の杖を持っていた普段、父さんは仕事以外では杖を持っていかないので、おおよそ森に行くのだろう。

 私としてもこの辺りの植生は気になっていたのでちょうど良い。

 そしてこれが初めての家族総出の外出だ、

そう考えると本当に楽しみだ。

 そう考えていると母さんが「準備はできたみたいね、じゃあ行きましょう。」と言った。

 母さんと父さんが玄関に向かう、その後から私たちが競うように玄関に向かった。

 そうして私たちの初めての遠征は始まった。

 

 



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