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四話 罪と罰

 中学2年の終わり二月頃のことだった。

 それは私にとって青天の霹靂だった。

 その日私はいつも通りに学校へ行った、そこで教室に入ると瑛士さんの姿を探す、ここ2年近く、日課のようになった当たり前の行為だ。

 しかし、この日は私が学校に着くといつも既に居る瑛士さんの姿がどこにもない。

 それだけじゃない、教室の雰囲気がい異様だった。

 あり得ないまでの重苦しさと今にも爆発しそうな様々な感情が教室を満たしていたからだ。

 その異様な雰囲気に私は嫌な予感がした。

 少し後、想像できるなかで最悪の結果として私のもとにもたらされたのは、瑛士さんが自殺したという現実だった。

 私は信じたくなかった。だって、つい昨日も隣を歩き、一緒に話していた彼が、もう二度と会えない、話せないなんて、荒唐無稽で誰かの嘘か、悪夢のようだった。

 それでも、信じざるを得なかったのは、葬儀の日程を先生が伝えたことや、朝礼が開かれ、校長が周りに相談しろだの尊い命云々だの、およそ体裁ばかりの言葉や何より教室のぽっかりと空いた空席がそれを現実だと伝えた。

 そして、頭に浮かんだのは何故?と言う疑問だった、彼はどうして自死を選ぶまでに追い詰められたのか、それを知らなければ、と思った。

 私は瑛士さんと仲が良かった人に話を聞くことにした。

 だけど結果は芳しくなかった。

 皆同じように東にも色々あったんだろうと口をそろえてそういった、でも、皆で同じことを言っていることから何かを隠している可能性があると私は思った。

 その考えを裏付けるために、ほかのクラスの人たちにも、何か彼のことで見たことや聞いたことはないか、尋ねて回った。それでも誰もが曖昧に言葉を濁すか、怪訝そうな顔をして知らないと答えるばかりだった。

 そうして彼の死から二日たった、そこで真実を知ることになった。

 それは意外な人物から知らされた。

その日の朝、教室に入り机を見ると小さな紙片が見えていた。

 取り出して見ると『東さんのことで知っていることがあります。知りたいのなら、今日の放課後に屋上であなたを待ってます。』と書いてあった、私は言うまでも無く学校が終わるなり屋上へ行った。

 そこで待っていたのは明日香だった。彼女はフェンスのそばに立っていた。明日香がいることに私は驚いた、と同時に何かの罠かとも思った。

 そう考えていたとき明日香は「驚いた?」と言って冷たく笑った。

でもそれは小学校のあの日みたいなあざ笑うような笑みではなかった。どちらかと言えば自嘲めいた色があった。

 私は「まさか貴方がいるとは思わなかった。」と答えた、彼女は「そりゃそうか」と言った。

 思えば彼女がイジメに参加していたのは、瑛士さんとの一件までだった気がする。

 明日香は「あたしはあんたの親のことは今でも憎いし大嫌いだよ…」と明日香はその端整な顔立ちから悲しみと怒りを込めた鋭い視線を私に投げかけた。

 でも怖くは無かった。

 彼女が本音で話してくれているのが分かった。

 私も本音で答える「うん、私も親のことは嫌い。それにしてもどうして私に彼のことを話してくれようと思ったの?貴方は私のことが嫌いなんじゃないの?」と、こんなこと瑛士さんに会わなかったら、言えなかっただろうなあと思う。

 だけど彼はもういない、振り返ったところで帰らない、今はただ彼をそこまで追い詰めたのは何かが知りたい。

 明日香は少し笑うと「昔のあんたとは大違いね、昔のあんたならあたしを見るなり逃げるか、謝るかしてただろうから。あんたにとって瑛士はそれだけの存在だったんでしょ?」と言うと一息ついて、「単刀直入に言う。瑛士くんをああさせたのは多分あたしの兄よ」と答えた。「どういうこと?貴方のお兄さんが瑛士さんとどういう関わりがあるの?」一秒でも早く彼に何があったのか知りたい。

 明日香は「今説明する。でも、瑛士の昔のことから話すことになるから時間掛かるよ」   私は「かまわない。彼のことを教えて。」その  言葉を聞くと明日香は話を続けた。

「まず、あたしは塾で瑛士のことは小学校の頃から知ってた。瑛士はあんたも知ってると思うけど優秀なの、あたしも彼に憧れてた。……そんなことどうでもいいか、とにかく瑛士は優秀だったから、家族には医者になって、その内親の病院を継ぐことを期待されてた。

 だけど瑛士は医者に何てなりたくなかった、だから反抗した、中学は私立に進むはずだったけど、瑛士は受験に行かなかった。

 それを聞いた瑛士の両親は怒った。」

 ふう、と一息つけると、「あんたもうちょっと近くに来たら?」

 明日香がそう言ったので、私は明日香の隣に移動した、明日香は話の続きを話し出した。

 「それで、瑛士はあたしたちと一緒の公立に来たって訳、それであんたのことをあたしから庇った、でもその時瑛士が言ったことはあたしの中ではスッと腑に落ちた。でも、あたし以上に兄はあんたの親とあんたを恨んでた。兄は父が好きだったから…それであんたを庇った…て言うか少なくとも兄にはそう見えた、だから瑛士のことをイジメた。あん…あなたのことをだしに使っていろいろしたっていってた。」私は想像してもいなかった話に私は頭を殴られたような衝撃を受けた。というか明日香は彼が生きていたときに既にそのことを知っていたのだろうか、と思って聞いた。

「貴方は瑛士さんが生きてたときにそれを知ってたの?」明日香はうつむいて唇を嚙んでいた。その反応が肯定を示していた。明日香は今にも消え入りそうな声で「うん、だけど瑛士くんが貴方には言わないでくれって……ごめん、ただの言い訳でしかないね…」と言った。

 瑛士さんが私に対して口止めした?何かの間違いではないのだろうか?「瑛士さんが?言うなって…言ったの?」「…うん」ああ、そうか、瑛士さんにとって私は、仲の良い知人みたいに思われてたのかな、そう考えていたとき、明日香が言った「私はそのことを知っていたのにあなたに言わなかった。言えば何かが変わったかもしれないのに…それがあたしの罪。でも言えなかった、瑛士はあなたに心配を掛けたくないって言ってた。だけど誰にも言えなかったのは瑛士の弱さのせいだよ…って、いや瑛士を責めてるわけじゃなくて!えーと、瑛士はあなたのことを大事に思ってたってことだよ。」そう言われて私はさらに落ち込んだ。

 彼が私を大切に思ってくれていたとして、私はそんな人の心の悲鳴に彼が生きていたときに気づけなかった、そんなの私が殺したも同然じゃないか。

 こんなに愚かなことはない。明日香の言い方を借りるならそれが私の罪だ。

 それから一年間、彼につないで貰った命を大切にしようと思った。だけど、前を向こうとするたびに私の罪がそれを拒んだ。

 大切な人を殺しておいて、のうのうと生きていく、そんなの誰が許したって私が許さない。

 なぜだか学校でイジメられているときは、私の罪に対する罰を受けているようで、安心した。

 でもその程度のことで私の罪を、私は許さなかった。

 だから今この雑居ビルの屋上に居る、もしもあの世があるなら貴方にに謝りたい。

 もし、もう一度やり直せるなら貴方を助けたい、あの日の貴方みたいに。

 もし生まれ変われるのなら人の心が分かる人間でありたい。

 貴方のような人になりたい。

 でも、そんな幻想はありもしない、

ただ私は貴方を救えなかった。

 その事実があるだけだ。

ああ、後悔してもしきれない、もうどれだけ悔やもうと怒ろうと貴方が戻りはしないから。

 今になって思う私は貴方の隣に居たかったんだと。

 貴方も同じように思ってたんだろうか?

今となっては分からない。

 私は貴方のことなんて何も知らなかったんだね。

 貴方に聞けば良かったのに。

もう私には私の罪にあった罰はこれしか思い浮かばない。でも、それを選ぶのは逃げなのではとも思う、生き続けることこそが罰なのではとも思う、かといって生きていくのは死から逃げているように思う。どちらを選んでも後悔する。

 もしかしたらこれが罰なのかも知れない。

 だとしたら私は死を選ぶ。

 なんともつまらない後悔だらけの人生だろう?

 そう思いながら私は空に飛んだ。

 ふと、私は思った、あのライトノベルのようにやり直せたらなあ、と。


   ――――――――――――――――――

 されども彼女は地上のアスファルトに叩きつけられることはなかった。

 ただ暗闇が広がる生暖かい空間に彼女はいた。

 それからしばらくして彼女は新しい世界に生まれ落ちた。

   ――――――――――――――――――

  

 

どうも、こんにちは。

岡田なんとかです。

この度やーーっと転生させることが出来ました。(これであらすじでネタバレしてんなとか思わなくて済む!)次回から作品本格始動です。これからも『いじめられっ子女子、異世界へ行く。~少女はもう後悔したくない!~』をどうぞよろしくお願いします!!

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