二十三話 別れ
本当はもう少し執筆する予定でしたが、長くなりそう&そろそろ投稿しなきゃ!と思ったので今回少し短めです。ご容赦を、その代わりと言ってはなんですが来週も投稿する予定です。どうぞよろしくお願いします。
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セレーネ視点
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目を覚ますと外はまだ夜だった。
私の脳裏には、さっきのアリアの問いがあった。
あの物語は私が居た元の世界の禁断の果実の話とこっちの世界のセレス教にあった話を勝手に合体させたものだ。
「あのまま罪を犯していたらどうなってたの?」か…
それに対する私の答えは私の想いであると同時に、過去の自分の罪に対する、あれは仕方ないことだった、という自分への言い訳も含まれていることを自覚していた。
とはいえ、私がアリアに語ったその全てが言い訳かと言えば、そうとも言い切れない。
あれは私の願いでもあると思う。
誰であっても、生きていれば、罪のない人間などいないということを理解するはずだ。
傲慢な考えかもしれないけど、人の罪を許せる人間でありたいし、できるだけ、罪を犯したくない。
そして、いずれはまだ私の中で自分を責め立てるこの声とも向き合い、自分自身の落とし所を見つけなければいけない、そう感じている。
そう考えながら空に浮かび、時折、雲に隠れる月を眺めていた。
私はそうしていると、だんだんと眠くなり、気づけば眠ってしまっていた。
次に目を覚ましたのは、アリアに起こされてからだった。
「セレーネ!いつまで寝てるの!」
「う、う…んん……おかあ…アリア!いまなんじ…?」と寝ぼけ半分の間抜けな声でアリアに聞く。
「セレーネ?もう昼前よおお母さん何回も起こしましたからね!…ブフッ、アハハ」
といった感じで私の言い間違いを聞き逃すはずもなくアリアは笑いながら教えてくれた。
「もうそんな時間か…ごめん、昨日夜に起きちゃったから」
と少しふてくされ気味に答える。
私が悪いのはそれはそうなのだけれど、馬鹿にされる程のことはないでしょ?と思わないでもない。
まあ良いか、少し時間がたってきたら、腕を枕にしていたせいで、腕に痺れが…
立ち上がろうとして、そこで気づいた、私の身体にタオルケットが掛けられていることに。
当然だが、この部屋には私とアリアしかいない。
「……ありがとう」
そうこれはアリアが掛けてくれたのだ。
「…別に……感謝されるほどじゃないわ…」
そう言いながらもアリアは少し嬉しそうだった。
私はアリアのこういうさりげない優しさや気配りを素直に凄いと思う。
出来れば私もそうありたいとは思っているが出来ている気がしない。
私は話を変える。
「…じゃあそろそろ行こうか…」
遅れてしまった理由は私にあるがこれ以上は遅くするつもりはない、第一、時間は待ってくれない、今日別れるというのは以前から決まっていたことだ。
そのために今まで互いに気持ちの整理を付けてきたのだから。
「…ええ、そうね」
そう言ってアリアは部屋を見回して、私の準備を待つ。
私の準備は前日に済ませていたこともあって、そう時間は取らなかった。
私はアリアに聞く
「忘れ物はない?」
「うん、大丈夫」
静かにそう言った。
そして私たちはいつも通り部屋を出て、いつも通り少し角度の急な階段を降りる。
そこには見慣れた顔がある。
「…ノーアさん、短い間でしたが本当に感謝してもしきれない思いです。本当にありがとうございました!」
そう言って、私とアリアは頭を深く下げる。
私は胸にある感謝を、喜びを一ミリでも多く伝えようと思っていた、だけど、そのどれもがほとんど声にならなかった。
言葉で表そうとすればするほど、この気持ちを表せないと気づいてしまう。
ふと思う、だから世の中ではありきたりな言葉を使うのかもしれないと、そのありふれたどこにでもある言葉に乗せられた想いは、唯一無二で、どんな言葉よりも確かで、どこまでも暖かいから。
そんな私達にノーアさんはのんびりと
「長いようで短かったな…お前たちと会えて久しぶりに心の底から楽しいと思えたよ、こちらこそありがとう。」
と、言うと見たことが無いくらい優しく笑った。
「はい、お体大事になさって下さい。」
私がそう言う。
「ああ、そっちもな…試験上手くいくよう影ながら祈ってるよ。」
私達は玄関へ向かう。
その背中にノーアさんの視線を受ける。
私は手を伸ばし、ドアを開ける。
アリアと外に出た。その時に私は振り返り、私のできる限りの笑顔でこう言った。
「またいつか会えるその日までお元気で!」と、私がそう言ったのは、どこの世界でも共通のルール、世界は明るい残酷さを持っている、手に入れたものは、何かを得るときはそれが偶然にもかかわらず、必然のことのように思えるのに、失うことは自分には訪れない、画面越しのものと思い込んでしまう。
だけど、私は知っている。
自分の大切なものはいつ無くなってしまうか分からない今明るい世界にいても、1秒後には闇の世界に堕ちてしまうかもしれない危険をはらんでいるということを。
だからこそ、またがある保証など無い、故にまたを約束するのだ。
ノーアさんは何も言わず、頷いた。
そして扉がゆっくりと閉まる。
ノーアさん、さようなら、またいつか。
私とアリアは少し早足で街を出た。




