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十六話 夢

 私は足の骨は折れ、その激痛が身体中を走ったが、それでもなお止まろうとは思わなかった。

 それは、もしかすると、死の恐怖からだったかもしれない、あのままアリアが助けてくれなければ、そのまま私は死んでいたから。

 でも私は自分の死よりアリアが死んでしまう、その可能性があったこと、また私の前から大切な人がいなくなってしまうのが堪らなく怖かった。

 そこからどれだけ走っただろう?

 私にはどこをどうしたのかの記憶がないし、アリアは髪の色がいつもの白髪に戻ってすぐに、糸が切れたように気を失ってしまった。

 そして、やっと人の生活の音がした、そこに向かう、そして検問所のようなところに着いた。

 しかしそこまで緊張し通しだったからか、はたまた、人里にたどり着いた安堵感からか、私は倒れた、薄れる意識の中、人間、が何かを言いながら駆け寄ってくるのが見えた。

    ―――――――――――

 私は暗闇の中に居た、そこを手探りで動き回った。

 しかし、何一つ変わらない光景と変わらない感触が続いているだけだった。

 そんな時聞き覚えのある声がした。

 「……す………、き…の……じゃ……い」

 しかし、その声はあまりに曖昧だった、なんとか聞き取ろうと耳に集中する。

 「アリスあれは、君のせいじゃない。」

 それを聞き取ったとき、私は弾かれたように立ち上がり真っ黒なままの周囲を見渡した。

 その声は私が忘れるはずもない()の声だった。

 「()()()()!!」

 そう言った私に彼の声は告げる。

 「例えどんな道を歩もうとアリスは必ずまた俺に会える。その日が来たらまた話そう。」

 その声は懐かしさと罪悪感を私の胸に同時に与えた、そしてその言葉に私は咄嗟に

 「約束だよ?」

と、目に涙を溢れさせながらそう言った。

 すると、辺りが砕け散った。そして、私は落ちていった、その中で微かに、ああ、約束だ。と言う彼の声が聞こえた気がした。

 「瑛士…」頬に温かい液体が流れる。

 そして、わたしは目を開いた。

 さっきの夢は全て私の都合のいい妄想だったと分かった。

 あの頃の消すことの出来ない私の罪をまだ誰かに、それもほかでもない瑛士本人に許して貰いたい、そんなつまらない願望を抱く自分自身に嫌悪感がした。

 その自己嫌悪から逃れるべく状況の理解を試みた。

 そこで初めて気がついたのは私の手を握ったまま眠っているアリアだった。

 そして周りを見渡す、窓からは薄い月明かりが部屋に差し込んでいた。今は夜のようだ。

 そして私はベッドの上に寝かされていた、そして、手足には治療魔術の組み込まれた包帯のようなものが巻かれていた。

 そういえば骨折は治っているようだ、ならば何故手足には包帯が巻かれているのだろうよく見ると、アリアも同じように足や指に包帯が巻かれていた。

 だが、私よりは少なかったので、少しだけ安心した。

 私はつい笑みが零れるのを自覚する。

 いつも気を張って、強がって弱さを見せないようにしているアリアだが私の手を握ったまま眠っている彼女は年相応に見えた。

 その時、手足から痛みを感じた。

 しかし、それは切り裂くような痛みではなく、ジンジンと痛む感じだ。

 そこで私は思い至る。

 「凍傷…」

あの女の魔術の後遺症と言う事だ。

 それだけに恐ろしい、何故かと言えば、それは骨折が治るレベルの治癒魔術を使ってもなお治ってはいないと言うことだ。

 つまり、それだけ高度で強力な魔術だったと言うことを示している。

 私はアリアに毛布を掛けると、部屋から出る。

 部屋の外は短い廊下があり、そこを進むと、階段があった。

 階段は下りの一方向のみだった。

 私は階下へと降りてみることにした。

 そして階段を降りると、いくつかの部屋があることが分かった。

 そうして、キョロキョロと辺りを見回すしていると背後に人の気配がした。

 振り返ると背の高い白髪の年老いた男が、歩いてきていた。

 老人と言っても、この男からは老いをまるで感じない。

 男はいかにも好々爺らしい笑みを浮かべると、こう言った。

 「おや、目が覚めたのか?君はあれから三日間、意識を失ったままだったから、もう一人の子…ええとアリアとか言ったか?も心配しとったよ」

ふむ、私は三日間も目を覚まさなかったらしい。

 そういえばお腹空いたな…

まあ、そんなことはどうでも良い。

 私はこの老人に幾つか質問をした。

 「あの、貴方が助けてくれたんですか?あ、あと、ここはどこなんですか?」

すると老人は、一呼吸置いて、話し始めた。

 「そういえば何の説明もしていなかったね、でも疑問に答える前に自己紹介させてくれ。俺はノーア・クリーク、昔は商人をしとったが今は見ての通り隠居しとる身だ。」

 そこでノーアは手招きするとこう言った。

 「まあ立ち話もなんだあっちで座って話そうか」

その申し出は有り難かったので素直に頷いた。

 そしてついて行くと、リビングには高級そうな四人がけのテーブルがあり、そこに座るよう促された。

 「このテーブルを使うのも久しいものだな、家内が先にあっちに逝っちまってからはまるで使わなかった。」

 ノーアはそう独り言のように呟いては、淋しそうに笑った。

 そう言われ、テーブルをさりげなく見てみるが、埃一つなく美しいままだった。

 それは使ってはいなくとも掃除を欠かしたことはないことを示している。

 そこでノーアは

 「さて、質問に答えよう。まず俺が助けたわけじゃない、助けたのは俺の息子だ、今は国に雇われて騎士をしている。で、ここは中央大陸の一番東側のホーリーレイクズその名の通り、湖の周りにある街だ。ここの検問所の前でボロボロの少女が倒れたと言う情報があって息子が保護したってとこだ。」

 なるほど、無我夢中で逃げた結果この町に行き着いた訳だ。

 そこで私は自己紹介していないことに気がついたのでひとまず、自己紹介することにした。

 「ありがとうございます。もしかするとアリアから聞いているかもしれませんが、改めて私も自己紹介させていただきます。私はセレーネ・アンリエット、中央大陸最西端のウェスティーイヤーズ出身です。この度魔術師試験の3級受けに行くところを何者かに襲撃されこちらに流れ着いた次第です。」

 そう言い終わると、ノーアは先程までの穏やかな印象は消え、険しい表情浮かべ、私にこう聞いた。

 「その襲撃者はもしかすると歌のような魔術詠唱をして、氷の魔術を扱う女ではなかったか?」

 私はノーアの纏う雰囲気に気圧されつつ、その言葉に静かな怒りを含ませていることに気がついた。

 「はい、貴方の言うとおりです。」

そう、一言だけ返した。

 ノーアは一言も発さなかった。

 ただ、ひたすらに自分の感情を整理するように黙っていた。

 それから、ややあって、ノーアは絞り出すように私にこう尋ねた。、

 「…セレーネよ、俺は今回の襲撃は今から話すことに関係があると思う、長話になるが聞いてくれるか?」

 私は黙って頷いた。

 すると、ノーアはぽつりぽつりと語り出した。

 ある貴族一家の話を。

 

お久しぶりです!岡田なんとかです!

私の執筆している

 「いじめられっ子女子、異世界へ行く。~少女はもう後悔したくない!~」を読んでくださって本当にありがとうございます。

 この度は最近の執筆状況についてお話したいなと思いこちらに書いております。

 さて、最近私生活が忙しく執筆があまり出来ていない現状となっていますので、これからは月に二回ほど投稿と言った形になると思います。(今更感はありますが)

 ですので私の小説を楽しみにして下さっている方には少々お待ちいただくことになってしまいますが、ご理解いただければと思います。

 最後にはなりますが、「いじめられっ子女子、異世界へ行く。~少女はもう後悔したくない!~」を今後ともよろしくお願いいたします。

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