閑話 姿
―――とある日
「ねぇ師匠」
「ん?どうしたの?」
「師匠って結構凄い年齢だと思うけど、どうしてそんな見た目が若いの?」
「うわっ、面倒な質問だね…。何もせず歳を取ると筋肉も衰えるのと同じで、当然魔力の熟練度や洗練具合も衰える。毎日やってるから定着するけど、数年やらなきゃそれは忘れるのと同じ」
「そうだね」
「それで、僕達魔人は酸素が無くても魔力さえあれば生きていける。あぁ、僕の言う魔人は一定以上の強者ね。シードは勿論入ってる」
「…無詠唱出来る奴以上だね?」
「勿論!」
師匠は無詠唱が出来ない人向けに魔法陣を与える魔術師じゃなくて、無詠唱の人がより簡単に脳内で想像し、細かい調節等々を出来るようにする為に魔法陣を作ってる。
無詠唱出来ない存在は嫌悪とは言わないがそれなりに嫌ってて、多分怒ってる時だと消しちゃうんじゃないかな。怒ってる時を見たことがないけど。
「魔力は僕達にとって最も重要な存在。逆に枯渇すれば死活問題なわけ」
「そだねそだね」
「MPは僕達の所有魔力だけど、それは生命活動には特段関係なく、呼吸する時に自然界の酸素と魔力を吸収してる。無詠唱出来ない魔人は酸素だけだけどさ」
「あれでしょ、俺等は魔力を吸収して、酸素呼吸じゃなくて魔力での呼吸や自然界の魔力を多少なりとも扱えるようにしてるんでしょ?」
「大正解。それが出来る為にはある程度己の魔力の扱いに慣れてる必要がある。そうじゃないと自然界の魔力を己の魔力に変換することは出来ないからね。未熟、即ち自分の魔力すら把握出来てないって事だし」
大自然の魔力は土地によって全く異なり、上位の魔物になれば自然の魔力を利用して重圧を常時発動してたり、天候を操ったりしている。それが出来るのは大自然の魔力構造を自らの魔力構造に変えれるから。
要するに己の魔力構造を理解した上で、魔力という存在の扱いに慣れているから出来るのだ。
「さて、シードの質問はどうして僕が常に天才で美少女かだよね」
「なんか変わってるけどまぁそれで良いや…」
「美少女な理由は僕が生きてるから、ただそれだけだと思う。死んでも老いないと思うんだよね」
「えぇ…?」
「老いても鍛えてる人は鍛えてるからムッキムキ。僕も常に魔力を使って色んな事をしてるから魔力は多いし簡単に扱える。あぁ、先に言っておくけど若返りに秘術とか秘薬を飲んだ事は無いよ」
「師匠は飲まなそう」
「勿論飲まない。んで魔力を使ってるって事は?魔力を使う時に行う事、ほら言って」
「え!?…ま、魔力の循環?」
「そう、その通り。魔力を循環させて魔法を放つ。宙に何かを生み出す時は魔力を体外に放つ、若しくは自然界の魔力を使ってMP消費無しで生み出すかのどっちか」
「確かにそだね」
「結果として体内の魔力通路は常時全盛期であり、魔力の通路は血管のある場所に近い。結果として血管や肌、そしてあらゆる臓器にも影響を及ぼす」
「だから若いんだ!」
「多分だけどね。まぁ後、魔力が多い人って抑えててもしっかり押さえないと体の外に漏れだすじゃん?」
「うん」
「それって体内を通過して魔力粒子が漏れ出してる」
「だから若々しい可能性もあるのか。…でも昔最強だった魔人とかが老いてることって多くない?デミウルゴスとか」
「魔法は想像で放つ。思考が魔法に影響する、それは魔法を使う時に必要な魔力に影響してるのと同じ」
「デミちゃんは年老いても良い、そう考えてたって事か」
「多分ね。確証は持てないよ。あぁ序でに僕は別にそれを思ったことはないし、若くいたいと思ったことも無い」
「そうなの?」
「うん」
師匠はそう言いながら俺の方を見てくる。それから指で俺の頬を突いて来た。
「シードはどうするの?」
「俺は…老いない方が良いかな」
「ふ~ん、まぁそれで良いと思う」
「…パルとかも老いないのはそれが理由?」
「多分?そもそも魔力を扱える上級者は姿を自由自在に変えられる。肌を若くさせておくことなんて容易いんだよ」
「確かに」
「まぁパルは素であれだけどね。僕と同じじゃないかな」
「魔力があれば人は何時までも若く入れるのかもね~!」
「フフッ、そんな事はないんだよ?そしたら女性は全員若いし、エルフも歳をとった老いぼれが居るわけない」
「言われてみれば…」
この間の戦争中にあったアルスの父親、彼奴は確かにおっさん感が半端ないダークエルフだったよな。う~ん、よく分からぬ。
「原因は分かり切ってるんだけどね~」
「そうなの!?」
「まず再生能力を持つ人は基本的に老いない。細胞が老いてもすぐ再生、ってか活性化して若返る」
「お~」
「後は吸血鬼とかは血を飲めば基本的に老いない。若返る事が可能。そんな感じで何か条件を満たせば細胞が活性化されて若返れる人以外、基本的に嫌でも老いる。そして…僕は仮定したの。人種にはそう言うのを持ってる人が一定数居るんじゃないかって」
「!?」
「何を持ってるかを知る事は出来ないけど、個体によって明らかに違うでしょ?老いの速さが」
「そだね。寿命で死んでるのに若く見える人とあぁそうだろうな、って思えるような外見の人が居る」
「だから僕は仮定したの。人型の種族はそれぞれそういう能力を持ってるんじゃないか、ってね。人間だって偶にいるでしょ、謎の長生き」
「居るねぇ…」
「まぁ仮定だから分からないけど、多分何かしらの条件があると思うんだよね。あんま興味無いけどさ」
「俺達再生能力有るしね」
「そうそう。んで原因だけど、生命体だからってのが一番正しい。生き物は老いる、それが宿命」
「まぁそだよね~!」
「えぇ。寿命は抗えないからね。それこそ聖水や賢者の石を使わない限り。あと神の加護」
「俺も加護のお陰で不老だもんなぁ。…あれ、俺って年取らない?」
「さぁ。寿命で死なないだけでしょ、多分。それから一つ教えてあげる」
「?」
「君の再生能力は加護じゃなくて君自身の能力だよ」
「へ?」
「ささっ、君の疑問は解決したかな?」
「う、うん!要するに師匠は再生能力を持ってるし、魔力を使ってるから」
「まぁ後者はあくまでも予想ね。前者は確定。あっ、一つ大事なの忘れてた!」
「?」
「覚醒した人は確定で寿命じゃ死なないし老いない。老いぼれ覚醒しても肉体若返るから」
「超大事な事だった」
「ってわけで解決だね?」
「うん!ありがと!」
「フフッ、気にしないで。それじゃソーンの仕事手伝って来て」
「え~」
「僕の魔法の訓練の的になる?」
「ソーンの手伝ってくるね!」
「…フフッ、行ってらっしゃい」




