小説における歌詞の引用と著作権について
小説家になろうでは実在の曲の歌詞を使用することが禁止されています。
それ自体は規約で制限されていることなので問題はないのですが、小説の中に歌詞を使った際にどのような問題が出るのだろうと考えました。
歌詞を使うシーンというのは概ね、小説の中のキャラクターが歌うシーンかと思われます。
何もしないと歌詞の(この場合は言語の著作物として)複製権の侵害になります。
その為、引用元を明記するなどして引用の体裁を整えると思います。
しかし、これは本当に引用として成立するのでしょうか。
個人的には少し難しいように思えます。
それは、引用には「明瞭区分性」「引用元の表示」「引用の主従」
「引用する範囲」です。
明瞭区分性:引用した部分とそれ以外が分かるようにすること
引用元の表示:誰のどの作品から引用したかを示すこと
引用の主従:引用元が従で、その前後で述べられていることが主であること
引用する範囲:必要最低限であること。また必要であること
となります。
歌うシーンに関して言えば、明瞭区分性と引用元の表示は突破できると思います。
しかし引用の主従、引用する範囲について言えば、
引用の主従:歌うことが主題なら歌詞が主で地の文などは従になる可能性が非常に高い
引用の範囲:歌詞の言葉に言及がない限り差し替えても、あるいは無くても問題がない
となります。引用の主従に関しては中田英寿さんの中学校時代の詩が引用されて、それに対して当たり障りのない感想を書き加えただけでは主は詩であるという判例が出ています。
引用の範囲に関してはTo-yやBECKというマンガなどで歌詞のない状態で歌唱している状態を描けているように、歌が上手いということを表現するために既存の歌を利用するのは必要のない行為だと言えます。
上記のように歌うシーンを描くうえで実在の作品を用いるのは引用の条件を満たさないと言えます。
同じように他のシーンでもよほどの必然性がない限り引用の条件を満たすのは難しいと思います。
でもどうしても作品を出したい場合はどうするのか。
小説家になろうでは禁止されていますが、同人誌や書籍にする場合はJASRACに使用料を払うというのがあります。書籍の場合は担当の編集と相談になりますが50万部で税別13350円になります(1件当たりの金額。JASRACホームページ調べ)
他には歌詞ではなくアーティスト名や作品名だけでがんばるというのもあります。
これは法的には問題がありませんが、好きなアーティストに嫌われないためにも可能であれば相手に連絡をしておくことをお勧めします。
上記のような問題があるため、小説になろうでは歌詞を用いることを禁止しないと、JASRACがやってきてしまう可能性が出てしまうわけです。
引用を満たす作品ならという考えもあるかもしれませんが、それをきちんと分けて考えれない人が出てしまった場合、問題行動になるので規約で縛るのは問題ないと思います。
規約で縛ることに関して、表現の自由はどうなるのと考える方もいるかもしれませんが、
表現することを禁止しているわけではないこと
規約で禁止されていない他のサービスで行えること
などから表現の自由を直接制限するものではないと考えられ、憲法で同様に保障されている営業の自由が優先されていると考えられます。
以上長くなりましたが終わります。