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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
王都編

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第16話 ご視察して頂きました

 第三王女フリーディアが訪領した翌日、殆どの店は休業か特別営業(露店)をしている。そんな中で、通常営業をしている───するはずだった店舗が一つあった。ギルドだ。

「······冒険者は?」

「居ませんね。来そうもありません」

 ギルド長の質問に、職員が淡々と答えた。

「そうか······(言ったじゃん! 第三王女が視察に来るときにギルドにいてほしいって! 私言ったじゃん!)」

「大方、昨日飲み過ぎてまだ寝ているか、外のお祭りに参加して、食って飲んで騒いでいるんじゃないでしょうか?」

「そうか······(なにやってんのぉ? 自由すぎるだろ! ギルドに居るだけで王女様を近くで見られるんだよ?)」

「外に居る冒険者引っ張って来ましょうか?」

 窓から外の様子を眺めていた職員が提案した。

「!!(そうだ! 来ないなら連れて来てしまえば良いのだ!)ああ、たの───」

「でも、酒臭いの連れて来ても良くないですね」

「───む、そうだな(まともな冒険者居ないのかなぁ······)」


 カラーンコローン

「あ、ギルド長、誰か来ましたよ」

「!!」

「あれ? 全然人が居ませんね。今日は王女様が来るから、頭数増やせって言ってましたよね?」

「あ! エイルさん、いらっしゃいませ~」

 アレクスのパーティーが入って来たのを、アンナが迎えた。

「でかした! って、四人かぁ······」

「オリビーは給仕の手伝いと言っていたぞ」

「きゅ、給仕!?」

「シュナはフェザさんの応援に、訓練場に行くって言っていましたよ」

「そっちかあ〜」

「ロックは特に用事が無いって言ってたけど、二度寝したか?」

「来てよ!」

 やたらとテンションが高くリアクションを返すギルド長の雰囲気に、ベルはエイルの袖を軽く引っ張って耳元で話した。

「エイルさん、ギルド長さんの雰囲気がいつもと違いますけど、どうかされたのでしょうか?」

「───全然人が集まってなくて、寂しいからじゃないか? ある程度人数揃えて歓迎してる感を出さないとだからな」

「何かの長になると大変ですね······」


 カラーンコローン

「おはよう······あれ? 少ないな。これなら余所者が居ても平気かな」

「おお! 貴方達はタカーマガハーラの。大丈夫だ、ちゃんと国を示す物を身に着けているな」

 ギルドは他国の冒険者には、自分の出身国が分かる物を身に着ける事を義務付けている。普段は着けていなくても大目に見るが、警備の観点から今日は厳しく見ていた。

 他国の者が居ることを王女の護衛に伝える意味もあるし、文化の違いからの勘違いで、護衛が行き成り切り伏せない様にするためでもある。


 カラーンコローン

「おはよう。あれ? もう大勢居るかと思ってたんだけど······。ああ、タカーマガハーラの皆さん、昨日はどうも」

「やっと来た! 昨日あんなに王女様王女様言ってた貴女が来ないと始まらないわよ!」

「お、お恥ずかしい話です······」

 パナテスのパーティーが入って来ると、タカーマガハーラの女の冒険者がフォスに話し掛けた。


 カラーンコローン

 それから何組かのパーティーがギルドに訪れ、多くも少なくも無く丁度良い頭数が揃うと、時報の鐘が町に鳴り響いた。

「いよいよか! 皆、良く集まってくれた(もう少し余裕を持って行動してくれないかなぁ)。私もとても心強く感じている、第三王女フリーディア様を私達のギルドへ歓迎しようじゃないか!」

 ギルド長がいつもの調子を取り戻して冒険者の配置を終えると、ギルドの前へ馬車が横付けされ盛大な歓声が上がり、玄関の扉が開かれ護衛の女兵士が入って来た。

「フリーディア様がご到着なされた」

「はい、お迎えに上がります!」


 ギルドの正面には国防軍がバリケードを作り、それに沿って人集りが作られ、手を振り歓声を上げていた。王女もそれに手を振って応えおり、ギルド長が外へ出たところで護衛の手を借りて馬車から降りた。

「フリーディア様、ようこそお越し下さいました。どうぞお入り下さい」

 王女が近衛隊と領主と駐屯隊長と共にギルドの中へ入ると、ギルドの職員達と冒険者達が拍手で迎えた。

 その中には、床に脛をピタリとつけ、深々と頭を下げる三人の姿があった。


 王女は三人の腕章にタカーマガハーラの国章を見つけ、近衛隊長を三人のところへ遣わせた。

「タカーマガハーラの方、どうぞここでは楽にしてください」

 タカーマガハーラの三人は、高貴な者を迎えるときの姿勢を取っていた。三人は最大の敬意を持って異国の王女を迎えたく、王女もその姿勢の意味は、教養として学んでいる。

 近衛隊長から王女の言葉を受けると、三人は他と同じ様に立って、拍手をもって王女を迎えた。


 それからギルド長から、ギルドの構成、冒険者の登録数、業務内容等が王女に報告され、最後に有事の際の戦力提供と国への忠誠が宣言された。

 そして王女から、雇用の創設と害獣駆除を始めとする治安維持への貢献の労いの言葉、国庫からの資金援助とさらなる貢献を求める言葉を頂き、ギルドの視察は終わりを迎えた。

「国王の元へ多くの供物が届くのも、ギルドの管理の元、冒険者の皆さんがこの豊かな領を守ってくれているからです。国王の富は臣民の富です。これからも皆さんの力でアルトレーネ領の平和を守って下さい」

 最後にその場に居合わせた冒険者へメッセージを贈ると、ギルド長に見送られ、王女は次の視察の会場へ向かって行った。


「はあ~、何とか様になったかな? みんなありがとう! 今日のギルドの営業はここまでだ! お茶と軽食くらいしか出せないが、ゆっくりしていってくれ」

 時間にすればほんの数分、十分いくかいかないかくらいの短い時間だったが、ギルド長にとっては息も詰まるような濃密な時間だった。

 いつもは少し小生意気な職員と、いい加減な冒険者の相手をするくらいだ。それが2メートルくらいは空いているとは言え、目の前の王女と形式的なものではあるが、言葉を交わす事になった。どっと肩の荷が降りたギルド長は、ギルドのフロアを一般開放し、町の祭りに参加することにした。


 その後の王女の視察は、訓練場で担当職員のフェザから施設の説明を受け、アルトレーネの供物として、一番多く納められている酒の酒造場に行き、市場を巡ってからホテルで昼食をとった。

 午後は食休みをとってから、開発区画の建築現場を視察し、冒険者用の武具屋等数店舗を見て回り、アーロイ武具店にも足を運んだ。その間も住民達と触れ合う事はないが、挨拶を交わしていった。


 王女が視察の目的全行程を終えて、領主の屋敷に戻り夕食を囲んでいる頃、エイル達はアドルとビビアの店で夕食を囲んでいた。

「ごめんなさい。お客さんが多いから簡単なものしかできなくて。これアドルとビビアと私からオマケです」

 今では隣国の料理店の看板娘になっているハーフエルフのオリビーが、大皿に盛られたパスタをテーブルに持ってきた。この店の売りは麺なので、王女滞在中の三日間は麺一筋で、具の内容も仕入れることができた物を料理して提供している。


 戦友のエイル達にはオマケでソーセージが人数分の6つ添えられていた。今はアレクスのパーティーと、ミーアとスズが料理を囲んで、今日の話をしている。

「私もシュナと一緒に訓練場に行ってたけど、フェザ先生、フリーディア様が来るまでファルさんに抱き着いて離れないんだよー」

「ギルド長もそんな感じだった! さすがに抱き着く相手が居ないから、落ち着きが無い感じだけだったけど」

「私、分かる! ウチにもフリーディア様が来たから! お父さんもお母さんも私も、どうしたらいいか分からなくなって、三人で抱き合ってた」


 アーロイ武具店にも事前に「ちょっと寄るかも」程度の通達は来ていた。中を覗いて軽く挨拶をする程度だと、そう言われてはいたが、その軽い挨拶ですら重荷だった。

「私、フリーディア様に声掛けられちゃった! アレクスさんに作った銀の花飾りと同じ物を着けていたら“可愛い飾りですね。貴女が作ったのですか?”って! 私“ハイ!”って返事して固まるしか出来なかったけど!」

「凄いなスズちゃん、王女様に腕を認められたって事じゃないか!」

「えへへ!」

 ドワーフはあまり化粧をしない。その代わりではないが、祭り事にはアクセサリーを大量に着ける習慣がある。

 今もスズは大量にブレスレットやネックレスを着けていて、アレクスとお揃いの花飾りは服の左胸にブローチとしてつけている。アレクスは今日はネックレストップにしており、二人はお揃いの飾りを見せ合っていた。


(平和だなぁ······)

 エイル達はこの後、大将の店で少し飲んでから帰る事にした。そしてこの夜、2つの戦いが起こり、一つの戦いは国を巻き込む大事になるのだった。

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