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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
王都編

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第13話 お迎えに上がりました

 エヴィメリア王国の南東に位置する4つの領の集まりをノーティアナト地方と呼び、その東部に町1つと村3つを持つのがアルトレーネ領だ。北部にはハーゼル領があり、王都からはハーゼル領を経由して、アルトレーネ領に入る街道が整備されている。

 王都からアルトレーネ領への街道は、ハーゼル領からノーティアナト地方の4つの領を環状に走るそれだけで、他には抜け道の様なものもがあるが、当然そんなものに国は保護責任を負っていないので、そこを利用する者は、行くも来るも賊やら魔物やらから自力で身を守らなければならない。


 アルトレーネ領に住む民は、王都からの街道をただの広い道の認識でいる。主要な道はこれしかないので、特に名称を付けて呼び分ける必要は無いが、公式には『ノーティアナト環状道』と呼ばれている。そんな道の領境に、アルトレーネ領の冒険者は集結していた。

「お~い!駐屯隊長さ~ん!王女様はまだかよ~!」

「まだだ。だが、皆は第三王女をお待たせする事無く、先に自らが待つ事が出来た。これは素晴らしい事だ。良いか、合図が来たら整列だぞ」

「わーってるって!任せときな!」


 冒険者達は地べたに座ったり、立ったままだったり、それぞれがそれぞれの方法で、持て余した暇を潰していた。

 魔獣達は朝っぱらから連れ出されたせいか、木陰に入って丸くなって欠伸をかいている。仕事をしているのは鳥型魔獣で、鋭利で大型の爪を持つ剣爪鳥と、フォスの巨眼鳥のマブロの2体だけだ。

 剣爪鳥は今は羽を休めていて、マブロが翼の巨大な眼の模様をギラつかせ、空を旋回して警戒にあたっている。


 その下では、暇を持て余したエイルが、アンドレに声をかけていた。

「アンドレは何度も王都に行ってるだろ、王族は見た事無いのか?」

「無いかな。王都がこんなお祭り騒ぎになったところに出くわした事は無いし、そもそも王都にはギルドが無いからね、そんなに長期滞在する理由が無いさ」

 エイルの問にアンドレが答えると、続けてアレクスが質問を投げかけた。

「え?王都にはギルドが無いんですか」

「王都には国防軍が居るからね。害獣駆除も国防軍が行っているから冒険者は用が無いし、森の探索も貴族が国防軍を連れて国策と道楽とでやっているから、その点でも冒険者には用が無いんだ」

「ああ、王都は酒場の姉ちゃんが綺麗で、酒と飯が美味い所以外に楽しい事は無いな!」

 アレクスの質問にアンドレが答えて、オルフがどうでも良い知識を付け足した。


「ふぅん───その女と私、どっちが綺麗?」

「ん? う~ん、これは困ったな······どっちだ?」

「オルフのバカ!最低!変態!バカ! ベルぅ、フォスさぁん、オルフがクズだよぉ!」

「きゃあ!」

 オルフに誂われたシュナが、おいおいと嘘泣きをしながら隣に居たフォスに戯れて抱き着くと、突然の事にフォスから短い悲鳴が上がった。


「シュナ!そんな飛びついちゃ駄目よ!フォスさんは目が見えないんだから!」

「あ、そうだった······ごめんなさいフォスさん」

「大丈夫よシュナちゃん、ちょっとびっくりしただけだから。それよりもシュナちゃんが羨ましいわ」

「なんで?オルフに綺麗って言って欲しかったのに」


 シュナが不満を吐露すると、フォスは今朝方フォスの母が「綺麗だよ」と言って着けた花を模した髪飾りに手を当てて、シュナに答えた。

「それはシュナちゃんと相手の方が、どっちも綺麗だったからじゃないかしら?私には分からないわ。お掃除をすると綺麗、髪を梳かすと綺麗、髪飾りを着けると綺麗、これからいらっしゃる第三王女も綺麗な方だと聞いているわ。シュナちゃん、綺麗って何なのかしら?」

「え?ええ!?いや、そんなの······ベルぅ」

「え!?そんなの考えた事ない······エイルさん」

「俺かぁ······そんな哲学的な事は考えた事無いな。───フォスさん、髪飾り似合っていて、とても綺麗ですよ」

「えっ!?あ、ありがとうございます。突然どうしたんですか?」


 何故が突然フォスに「綺麗だ」と声を掛けたエイルを見て、ベルもシュナもキネカも、イリシュとハーフエルフのオリビーまでも手櫛で髪を梳かし、()()の姿勢に入った。

(あ、これって全員に言わないといけなくなったか?)

 綺麗とは何か───。その答えを持っていなかったエイルは、この場を適当にはぐらかそうと適当に声を掛けてみたのが仇になり、女性陣から期待の眼差しを向けられてしまった。

「まあ、なんだ、その······言われて嫌な言葉じゃないから、むしろ言われたいから、そう在ろうとしているんだろう?お互いに綺麗だと言い合える、そんなきれいな世界になると良いな───なんてね!」

「「······」」


「ホゥ!ホゥ!」

「あら?マブロですね。何か見つけたようです」

 マブロに救われたエイルが、反射的に街道の先に目を遣ると、街道の向こうから一匹の鳥型魔獣が飛んできているのが見えた。フォスがマブロに地上へ下りる様に指示を出して、一行がその鳥の行動を伺っていると、青いスカーフを着けた烏の様な鳥が飛んできて、駐屯隊長が立てた止まり木へ止まった。

「お前達、整列だあ!」

「えー、まだ見えてないじゃん」

「見えた頃には整列していないと失礼である!って言ってあるだろうが!」


 駐屯隊長の怒声に冒険者達は渋々重い腰を上げて、事前の説明通り街道を挟むように整列をして、少し開けた平原の先にある森から、王女一行が現れるのを今か今かと待ち始めた。

「まだですかね?こんな見えないうちから待っていても仕方が無い気がしますが」

「それはな───アレクスが誰かに招待されたとする。それが迎える準備が出来ていなくて、目の前でバタバタと準備を始められたらどう思う?」

「うーん、招待する気無かったの?って思いますね」

「そうだな。来てよかったの?って思われてしまうだろ?だから、そう思わせないように、それこそ綺麗に準備してお迎えする、『お持て成し』の精神だな」

「「おお!」」

 聞き耳を立てていた冒険者達から一斉に詠嘆の声が聞こえ、駐屯隊長はニッコリ微笑んでウンウンと頷いた。

「良いか皆。良く分からんが、オモテナシの精神だぞ!」

 エイルの言葉を借りた駐屯隊長がその場を締め、普段から我慢とは程遠い生活をしている冒険者達も、姿勢は崩すが列は崩さない様に心掛けて、第三王女を待つことが出来た。


「あ!来たぞ!先っちょが出てきた!」

「なんだなんだ?兵士さんばっかじゃないか?王女様は来ないのか?」

「騎兵が出てきたぞ!おおっ!馬車だ!馬車が出てきたぞ!」

「スゲー馬車だぜ!あれに王女様が乗ってるんだな!」

 冒険者達はBランクを先頭に縦隊で整列している。エイル達は列の真ん中くらいに居るので、王女の隊列はまだしっかり見れないが、先頭の冒険者達が実況してくれるので状況は掴めていた。

 王女の隊列は、先頭に中隊長が1人、その後に第一小隊第二小隊と続き、6騎の騎兵に護衛された馬車があり、その後に第三小隊と国防軍所属の角山犬10体が続いている。最後尾の冒険者達は、一応隊列の体を成し、だらだらと隊に加わっていた。

 そして、ハーゼル領の冒険者達は、平原の中程に差し掛かるくらいで、ハーゼル領の駐屯隊長と一緒に王女の隊列を見送った。


「ん、騎士さんが一人走って来たぞ?」

「あの方は第三王女近衛隊長だ。今回の行軍の指揮を第三王女から任命された方で、王女の次に偉い方だと思って接するんだ、良いな?」

「あ、女だ」

 馬車を囲むピンクの装飾が目立つ近衛隊から、長いマントに赤の二本線の兵士が一人突出して、短いマントに赤の一本線の駐屯隊長の所まで角山犬を走らせると、冒険者達を一目流し見て、直ちに声を張り上げた。

「気を付け!」

 あまりの自信と威圧感のある声に、冒険者達の背筋は自ずとピンと伸びた。

「私が第三王女フリーディア様の近衛隊長『アナスタシア』である。アルトレーネの冒険者には隊列の最後尾を守って貰う。早速であるが、ひとつ動作を確認させて貰う。(かしら)を下げよ!」


 冒険者達は「頭を下げよ」の号令を聞くと、皆地に両膝をついて背中を丸めて頭を下げる。一人エイルだけは、地面に脛を付けた正座の姿勢を取り、腰を折って頭を下げていた。

「?(······何か一人おかしいのが居るが、庶民だし正すほどでも無いな)ヨシ、直れ!」

 直れの号令がかかると、冒険者達はのそのそと立ち上がって姿勢を正した。

「立ち上がる姿はフリーディア様の目に掛かる事になる。もっとキビキビと動くように! 直にフリーディア様が到着される。皆の格好良いところ、美しいところをフリーディア様に見せようじゃないか!」

 近衛隊長に文句を言うものは居らず、魔獣達も主人達を従わせた近衛隊長の事を、主人達の上位の存在であることを認識した。

 そして、いよいよ第三王女フリーディアが到着するのだった。

国防軍の隊長の階級表示

マントと赤い横線によって示す。


一般兵  無し

衛生兵  無し 専用の背嚢有り

分隊長  短いマント 無地

小隊長  短いマント 一本

中隊長  短いマント 二本

大隊長  短いマント 三本


近衛隊  無し 装備品が高そう

近衛隊長 長いマント 二本


王族   長いマント 国章

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