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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
王都編

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第8話 国防軍の得意分野

 分隊長が村長と話をしている間に、エイルは獣尾の女兵士から村について補足の説明を受けていた。

「トレ村の人口は94名、奴隷登録者は無し、ギルドの定義する魔獣使いに当たる者は5名、登録されている魔獣は同じく5体、立地は見ての通り森の中、賊の目撃は北西側、恐らく王都へ向う街道から最短距離で森を突っ切って来たと思われます。敵の戦力は不明で、まさか人力で物資を運んでいるとは思えませんので、敵方にも魔獣は居るものと思って下さい」

「それでも魔獣が5体も居るところに襲撃しようだなんて、正気の沙汰とは思えませんね」

「賊なんて正気じゃやってられんだろうさ」


 アルトレーネ領の町トルレナは、去年のダンジョン捜索の際に賊の被害にあった。その時は町の輩達と賊が共謀して情報共有し、冒険者に扮して若い冒険者を攫っていた。

 ギルドもその時点では賊の犯行だとは思っておらず魔物用の対策をとったが、それによってダンジョン捜索中の被害は無くなった。そこで諦めて帰っていれば迷宮入りだったが、欲張って町の中から拉致を試みて、賊共は見事に一網打尽にお縄を頂戴していた。


 村程度の所有する金品は碌な収穫にならないだろうし、保存している作物は持ち運ぶには不便であり、今回も人攫いの見立てだ。

 一般的には知られていないが、国や領主が許可をしていない“闇奴隷”は当然にように存在していて、高額で取り引きされている。エヴィメリア王国での奴隷制度は、生活が立ち行かなくなった者に対する救済制度として使われており、主人も奴隷も共に登録され、一般階級に戻る方法も何通りか用意されている。

 しかし、闇奴隷はただの玩具だ。誰に管理された制度でもなければ、誰も命や尊厳の保証はしていない。用が済んだら殺されて捨てられ、誰か分からない死体が1つ出るだけだ。


 領主家のアルトレーネ家や駐屯兵達は、そういう事例があることは立場上知っているし、当然王族の耳にもその事例は届いている。

 エイルは今は世間話が情報源の閉じた世界に居るが、元はインターネットにより情報が開けた世界に居たので、「二千人程度の顔が知れたトルレナの町と違い、王都とか大都市には“ヤクザ”とか“マフィア”とかが居て、アコギな商売をしているだろう」くらいには思っていた。



 トレ村はトルレナよりも標高が高いので、森に隠れていながらも、少しは町の様子が伺える。エイルが町の様子を眺めていると、坊主の兵士が声を掛けた。

「どうしたんだい?エイルさん」

「いやあ······ここの賊は町から駐屯兵を離す為の、揺動だったんじゃないかと思いまして」

 エイルの心配を他所に、駐屯兵達はそれ程気にしていない様子だ。

「心配性だねえ。俺達が居なくても町の防衛力は十分だぜ?冒険者も居るし、戦い慣れた魔獣も多く居る。町を襲うほうが割に合わないんじゃな~い?」

「でも、冒険者は所詮素人です。軍隊の様な統率は取れませんし、それに魔物のゴブリンやオークは殺せても、人を殺すことはできませんから、きっと賊には遅れをとります」

「ああ、そうだ。人なんて殺すもんじゃねーぜ」

 獣人の兵士は、ただでさえも深く被っている兜を、更に目深に被って言った。


 元々国防軍は他国と魔物を相手取る組織だった。今は国がギルドに加盟し、魔物の相手は民間事業として行われる様になり、国防軍は対他国、対悪人の組織になっている。

 国は各領主に対して、領の人口の1%の兵役を課している。人口約2400人のアルトレーネ領は、24名を出しており、領には23名編成の一個小隊が駐屯している。人選は同郷の者で固めるということは無く、この分隊も分隊長以外は王都や別の領の出身だ。


 今の時代は他国との戦争は無く、国防軍の仕事は各地の治安維持と、賊の対応になっている。

 賊は悪人といえど人だ。国防軍に入ると人の命を軽く感じるようになる───なんて事はなく、国防軍の育成カリキュラムの中には、犯罪者の処刑が入っており、正規兵になる迄に人を殺した経験と、少なくともそこに立ち会い、人が人を殺す経験を積むことになっている。

 ここが冒険者との大きな違いで、冒険者は仲間が死ぬ事、魔物に殺さる事はあっても、人を殺す事はない。殺人というものに対して、冒険者は処女を失う事はあっても、童貞を捨てる事は殆ど無い。


「それで、どうするのだ?このまま村を放って戻る訳にもいかぬし、エイル殿の予想が当たっている訳でもあるまい」

「そうね。賊も構成員が増えれば増える程維持が大変になるし、行動を把握しやすくなるわ。だから今回もそんな戦争みたいなことは起こらないし、森に居る奴らを捕まえて終わりよ。きっと意気揚々と来てみたら、思いの外魔獣の数が多くて尻込みしただけよ」

「俺も同じ意見だ。何にせよ、直ぐに賊を捕まえて町へ戻れば良いだけの話だ。エイルさん、構わんね?」

「はい。そうしましょう」


 国防軍における戦術知識は、過去の戦争の体験談や、運が良ければ絵画や文書で残されたものがあり、そこから学んでいる。

 エイルの戦術知識は、対人対魔物は生の経験を積んだものだが、対組織は前世の漫画やゲーム等の創作物から得たものだった。それはこの国が積んで来た生の経験では無く、どうしても現実味に欠けてしまっていた。


 エイルが言うように、陽動も大規模な戦闘では有り得る事だと分隊長達も思った。しかし今回は例えそれが有ったとしても、町にはリーダーを失ってやる気を無くした元Aランクパーティーのメンバーがぐーたらしているし、王山猫のリッキーも居る。

 王山猫なんて討伐の際にAランクパーティーがレイドを使い、軍も確実性を見て一個小隊を当てる様な化け物で、瞬発力も攻撃力も賊を相手にするなら過剰な戦力だ。たかが町と言えども、王山猫を含む魔獣が十数体も集まったところに攻め込むのは、国防軍でも手を焼く。

 そんなところに賊が攻め込むとは考えられず、厳戒体制に入ったギルドも、新人パーティーを単独で遠方に出す事も無い。はっきり言って賊がまともに仕事を出来る状況では無かった。

 


 エイル達は分隊長の指揮の元、賊の討伐に動き出した。まず居場所は村の魔獣が警戒しているので、既に検討はついていて、野営地はまだ変わっていない。

 村の魔獣に襲撃させるのもひとつの手だが、ちゃんと人の目で確かめないと、魔獣の勘違いから、殺してはいけない人を殺すことになってしまう事もある。


 隊は2体の魔獣と、その主人の村人二人に同行してもらい、森を進んで行く。

「どうだ、連中逃げると思うか?」

「さあな、その方が楽でいいがな」

 少し声のトーンを落として、いつも通りお喋りをしている坊主の兵士と獣人の兵士。鳥人の兵士と獣尾の女兵士は、静かに警戒をしながら歩いている。


「エイルさん、あんたは何もしなくて良いぞ。こんな事が無ければ、護衛が帰って来るまで町を見回ってくれるだけで良かったんだ」

「いやそんな、少しくらいは戦えますよ。手伝わせて下さい」

「頼もしいが、俺達もタダ飯食わせて貰ってる訳にはいかないのでな。飯代くらいは働かせて貰わんと格好付かん」

「ははは······では、お言葉に甘えさせていただきます」


 それから少し進むと、同行している角山犬の落ち着きが無くなり主人が怯え始めた。どうやら角山犬の交戦圏に入った様で、合図が有れば今にも襲い掛かりそうだ。

「───どうだ?」

「数は5人、魔獣は角山犬が2体。向こうも戦闘体制に入っているようね」

「はっ!逃げないとは肝の据わった奴等だ」

「それじゃあいっちょやりますか!」

 坊主の兵士達は武器を取り、臨戦態勢を取った。

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