第6話 悪の暗躍①
王都編、本格的に始まります。よろしくお願いいたします。
ここは光も差し込まない建物の中。壁には窓は見当たらず、ここはただの箱か、大きな建物の内側の一室か、地下にある部屋か。燭台に灯された蝋燭が照らすその部屋の壁には、三つの人影が映し出されていた。
その影の一つが棘の付いた棒を振り上げ、床に叩きつけた。聞こえてくる音は、棒が床を叩く音ではなく、柔らかい中身のある袋を叩いたような音だった。
何度も何度もその音が鳴ると、一つの影が床にある何かを蹴飛ばし、何かをごろっと転がした。
再び一つの影が棒で何かを叩き、湿った音を立て始めた。場所を変える様に何かは転がされ、何度も何度も、何度も何度もその行為は繰り返された。
その内一つの影が燭台を掴み、床に降ろした。その灯りが照らしだしたのは、全身の白い体毛を朱に染めた犬型獣人だった。
一つの影が燭台の蝋燭の一つを手に取り、床に転がる朱染めの犬型獣人に、火を押し当てて消化した。
「───もうこれ、死んでるだろ」
男の声だった。
「次のを下さらないかしら?」
それに女の声が答えた。
「まだ白の犬は居るかい?」
別の男の声がした。
「もう、居なくなっても大騒ぎにならないような所には居ないな。近場だと、南西区の料理屋の看板娘を攫って来るかだ。それか、値が張るが他国から仕入れるかだ」
最初の男が答えると、暫く沈黙が続いた。
「その看板娘でいいですわ」
「駄目だ。そろそろ我慢するんだ。お前は直ぐに壊し過ぎるからね。───他国ので良いから一つ欲しい。それと例の商人と話がしたい、取り次いでくれ給え」
「承知した。死体だけは部下に片付けさせるんで、そんじゃあ俺はこれで」
一つ影が退室しようとすると、女の声がそれを止めた。
「他国の白犬はいりませんわ。代わりに、あいつの故郷の人を、何でも良いから捕って来て下さらないかしら?」
「───承知。そんじゃあ今度こそ、さようならだ」
一つの影が退室し、二つの影と物言わぬ朱染めの犬型獣人が部屋に残った。
「忌々しい!忌々しい!こいつのせいで!」
そう言って一つの影は、再び棘の付きの棒で肉を削り取り始めた。
「可哀想に······後でこの部屋を掃除させるから、暫くはその侍女で長く大事に遊んでくれ」
やがて二つの影が退室すると、物言わぬ肉塊だけが残された。




