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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第47話 勇気の一歩

 前線拠点に到着し、馬車からパーティーの装備と道具を降ろし、ここからは徒歩でダンジョンへ向かう事になる。


「おお!やっと来た。アーク、コイツがリッキーだ。この国には無いが、他国には魔獣を育てて売る商売をしているやつも居る。リッキーは他所の国で買ったんだ。ちゃんと躾は出来ているから噛み付かれはしないぞ」

「リッキー、宜しくな!」

 王山猫は口吻が短く丸顔、身体はしなやかで、ガルルよりも少し大きいくらいのデカい猫だ。種族名に王と入っているだけあって、頭から首周りには、立派なたてがみが生えていて、何とも貫禄のある顔立ちをしている。

 レオニダス達はリッキーに鞍を装着し、荷物を積み込んで行くが、アレクスとイリシュは、手際の良いレオニダス達を眺めていただけで、作業は終わってしまった。


 先頭を行くのはエルミアーナとイリシュで、二人でエルフ語で会話をして、エルミアーナが内容を纏めてアレクス達に伝えている。

「皆、よく聞け。イルは、イルがいた村の戦士長をしていた。幸い人間との交戦経験は無い様で、専ら魔族と魔物と争っていたようだ。ご存知の通り、エルフは弓の扱いに長け、精霊魔法という我々の魔法と少し毛色の違う魔法を使う。皆、戦士長の卓越した技術に見惚れて、呆けないように気を付けろよ?」


(イリシュは只者じゃないとは思っていたけど、戦士長か───駐屯隊長みたいなものかな?······それと、魔族か───)

 アレクスは、隣を歩いているオフィーリアに聞いてみた。

「俺は魔族なんてお伽噺でしか聞いたことしかないんですけど、オフは魔族を見たことはあるんですか?」

「他国だと魔族の討伐依頼もクエストにあるから、見たことも戦った事もあるわ。見た目は殆ど魔物と一緒よ。魔物と魔族の違いは、魔王の眷属かどうか、それだけよ」

「ま、魔王ですか?本当にいるんですね!じゃ、じゃあ───」

「ごめんなさいね。魔王は見たことが無いわ」


 魔王の話を聞けると思い、期待を裏切られて悄気返るアレクスに、エルミアーナが声を掛けた。

「魔王と言うのは人類側がそれっぽい奴を、勝手にそう呼んでるだけだからな。過去に勇敢な者が仲間を率いて魔王を討った事があって、ギルドで確認されているのはその事例だけだ。因みに、ギルドが言うところの勇者の由来は、そこから来ているらしいぞ」


「まあ、この国から出なければ知る必要もない、一生関わる事の無い連中だ。アークがAランクを目指すなら、その時が来たらもっと詳しく教えてやるさ。今はここの強敵を倒す事を考えるんだ」

 レオニダスが余計な事は考えるなと、アレクスの肩をポンポン叩く。アレクスはエイルの言葉を思い出し、心機一転をはかる事にした。

「スゥウウ───、ハアアァァァッハァッ!」


「きゃあ!え?何それ!?」

「お、おう、突然どうした?ああ、ヨシヨシ······リッキー興奮するな。ヨシヨシ······」

「エイルがやっているヤツだな?アーク、まだまだエイルには遠いぞ!ハッハッハ!」

 オフィーリアとレオニダスには驚かれて、リッキーには威嚇までされてしまったが、アレクスは息吹呼吸法で気持ちを新たにダンジョンへ歩みを進めた。

 


 アレクスは今回で3回目のこのダンジョン。つい二日前と仲間を一新して内部を進んでいる。一歩、また一歩と歩みを進めると、押し殺していた感情が、ひとつ、またひとつと思い起こされてきた。

「アーク······怖いか?悲しいか?自分の不甲斐無さに怒りを覚えるか?私もそうだった。初めて仲間を亡くしたときは、暫く剣を握れず、外にも出られなかった。アーク、君は私より強い子だ。もうここに戻ってこれた。その君の強さを私に分けてくれ」

「え!?エリー!何を?」

「ヒュウ!」

 エルミアーナに指を絡めて手を握られたアレクスを、レオニダスが口笛で茶化す。アレクスはさっきまでの感情が吹っ飛んで、代わりに心臓がバクバク鳴っている。


『エリー、魔物がいるぞ。アレの特徴を教えてくれ』

 前方に魚型の魔物(サハギン)を発見したイリシュが、エルミアーナに魔物の特徴を聞いた。

『テカテカしてる奴は粘液で攻撃を滑らせ、吐き出す粘液は粘着質でこちらの動きを阻害する。体表の粘液には凍結が有効だ。それともう一体の棘の奴は空気を吸って大きく脹らむだけだ。近接戦闘で不意に刺さらないように注意しろ』

『心得た、私がやる。それとエリー、アークを頼んだ』

「『ああ、かわいい弟分だ。』───オフ、ここはイルに任せる」


 エルミアーナとイリシュがエルフ語で話をして、結果としてはイリシュが単独で魔物と戦う事になった。

「なんて話をしたんですか?」

「ああ、イルは、アークは良い男だって言ってたぞ?」

「ヒューウ!」

(また茶化された······。それよりも、遂にエルフの戦士長だったイリシュの戦う姿を見ることが出来る!)


 イリシュの装備は、専用の短弓と腰には矢筒とキールの槍を打ち直した短剣、武器はそれだけで、防具は防具と呼べるようなものは装備していない。重孥は重いので、今はまだリッキーの鞍の上だ。

 イリシュは矢筒から矢を2本抜いた。一本は薬指と小指で挟んで、もう一本を普通に番え───棘のサハギン方へ矢を射る。直ぐにもう一本を持ち替え番えて、一の矢の様子を伺う。

 棘のサハギンの頭に当たった矢は、硬い音と共に浅く刺さり、痛みで魔物が膨れるとポロッと抜け落ちてしまった。


 ───トン───


 それは呆気無い音だった。棘のサハギンは最初に付けられた傷に寸分違わず二の矢を打ち込まれ、ゴロンと転がって、みるみるうちに萎んでいった。

 

 イリシュは、弓をヌルヌルのサハギンに向けた。右手は矢筒に添えられ、いつでも矢を抜けるようには備えられている。

土精霊の(グノーム)土縛(ソルフィクセ)

 ヌルヌルのサハギンの足元が弛み、地面に両足を突っ込んだ魔物は、精霊魔法の効果が無くなると地面に固定された。

水精霊の(オンディーヌ)凍浸(ジュレペネトゥール)

 身動きが取れない魔物の体表が白濁していき、動きが弱ったところで、イリシュがエルミアーナに声を掛けた。

『ふぅ······エリー、終わったぞ』


「皆、先へ進もう!」

 アレクスが真っ白になった魔物の隣を通ると、もうピクリとも動く気配が無い。

「······死んでる?」

「腹の中まで凍ってるんじゃないか?」

 エルミアーナが剣で小突いてみるが、やはり何の反応も無かった。


「エルフの戦士長······あの体でこれか」

「エルフがちゃんと戦っているところを見るのは始めてね。もし万全の状態ならどれ程強いのかしら?」



 アレクス達は、分かれ道を広い通路の方へ進むと、ゴブリンナイト2体とその奥からオークナイトが迫って来た。

「エリー、私がやるわ」

 そう言ってオフィーリアは自身の武器である杖を構えた。胸から下くらいの長さの柄の先端は、鉄で補強されていて打突にも使えそうだ。目を引くのは上側の端の装飾で、金色の環が付けられていて、その輪に魔石が付いた小さな環が、ジャラジャラと沢山飾り付けられている。

 あれだけの魔石が有れば、魔力の温存は考えなくても良さそうだ。魔法使いは金が掛かると言われているが、あれを見ると理由は自ずと分かってくる。


「マギアパゴスロンヒ、マギアネモスバーラ───」

 オフィーリアが魔石越しに敵を捉え、氷槍と風弾の魔法の宣言をした。アレクスは2つの魔法が発動するかと思ったが、魔力の高まりを感じるだけで何も起こらなかった。

「マギアヴリーダクルスタロ!」

 オフィーリアの頭上に小振りな氷槍が多数出現し、その直後強力な風が起こり、氷槍が敵に目掛け連射された。

 狙いは防具の無い顔面だ。ゴブリンは迫りくる氷槍に、手甲で顔を覆い対抗する。氷槍が腕を弾き、ガードを外し、顔を穿ち、ゴブリン2体を仕留めた。


 氷槍を打ち尽くしたが、あともう一体、オークナイトが向かって来ている。

「マギアヴリーダクルスタロ!」

 オークナイトが氷の槍を顔面に残したゴブリンナイトのところへまで来ると、オフィーリアは重ねて仕掛けてあった魔法を発動し、不意に打ち出された氷槍の暴風が、オークナイトの顔を呆気なく潰した。


「今のは大魔法ですか?」

「大魔法の簡易版······ね。大魔法も基本の応用だけど、今のは基本の魔法を合わせただけよ」

 ───その後もゴブリンナイト数体と遭遇したが、イリシュとオフが一掃して、あの魔物のいる広間が見える所まで来た。

 イリシュの弓技とオフィーリアの派手な魔法に、歓喜の声を上げていたアレクスは、足が竦み、前に進めなくなってしまった。

(なんて情けないんだ───)


「アーク、痛いぞ。もう少し優しくしてくれないか?」

 アレクスはまだエルミアーナに手を握ってもらっていた。仲良くお手手繋いで散歩をして来て、ビビって強く握ってしまった様だ。

(なんて情けないんだ!こんなのでキールの仇が討てるのか!)


「おや?嫌われてしまったかな?」

 アレクスはエルミアーナの手を振りほどいて、剣の柄に手を掛けた。

「もう大丈夫です!俺は戦えます!キールの仇は俺が討つ!」

 アレクスは剣を強く握り、自分に言い聞かせる為に剣と声を上げた。

 その姿にエルミアーナとオフィーリアとイリシュは、少し安心したような顔で優しく微笑んだ。


 バッチっと決めたアレクスの背中を、バチン!とレオニダスが叩いた。

「アーク、イイ女が3人もいるぜ?格好良いとこ見せような!」

「レオ、アークが折角格好良く決めたのに、台無しではないか?」

「そうよ。アーク、格好良い男の子は下心で動いたら駄目よ。結果格好良いのが良いのよ」

「ハハハ!だそうだ。下心のある俺は欲張って格好つけるから、お前は欲張らずに立ち回るんだな!」


 レオニダスが最後のひと押しをした。悲しみと悔しさと、怒りと憎しみを燃料に、燃え上がり先走る危険な闘争心の炎。それをレオニダス達がおどけて、火力調整をして、ジンジン燻る背中の痛みが、アレクスに冷静さを取り戻させた。

(エリー達と力を合わせて、エイルさんの技をアイツにぶつけて、キールとガルルの仇を討る!)


 リッキーの荷を降ろし、各自装備を整えたアレクス達は、レオニダスを先頭にあの魔物の居る広間へ飛び込んだ。

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