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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第37話 無双

 ミーアは広間へ躍り出ると地面を蹴って飛び、羽撃いてガーゴイルと高度を合わせた。ミーアは今丸腰だが、足で弓を扱うミーアにとって空対地での運用が基本であり、空対空では射角が取り辛く使い辛かった。

 それ故の丸腰ではあるが、飛行能力の面は機能を欲張ったガーゴイルより、便利な人の腕を捨てて飛ぶ事に特化した鳥人の方が優れており、翼に係る筋肉の搭載量は圧倒的な差だ。それに───

「私はエイルさんに立ち回りが上手いって言われたんだよー!」

 日頃のエイルとの組手で、ミーアは自信をつけていた。エイルは一瞬、初の実戦になるミーアが心配になり、下りるように言おうと思ったがその言葉は飲み込んだ。何故ならば、ミーアの強さはエイル自身が一番良く知っていたからだ。

「そうだミーア!お前は何千何万と突きと蹴りを出してきた!お前の空手を見せてやれ!」

 エイルの不安など次の瞬間には消え失せ、有るのは稽古の成果が披露される期待だけだった。


 ミーアがターゲットを決めて急接近した。ファルでさえも羽撃きひとつであれ程距離を詰める事は出来無い。明らかに尋常で無い加速の正体は、気合を使った羽撃きだった。

 ガーゴイルが迎撃で投げた石を、ミーアは錐揉み回転で華麗に回避すると、勢いを殺すこと無く、「やぁぁぁっ!」と渾身の横蹴りをガーゴイルの顔面に見舞った。

 意識を失って落ちて行く敵を見送って、ミーアは次のターゲットに向かった。ビビって逃げる敵を追い回し、翼の付け根を鷲掴みにすると、もう片方の脚でガーゴイルの首を「せやっ!」と踏み抜く。

 ミーアは、意識を失い墜落するガーゴイルを滞空して眺めた。これは残心なんてものではなく、その後が気になっただけの素人故の只の隙である。その好機に3体目のガーゴイルがミーアに接近し、持った石を大きく振り上げ、石で打ちに掛かった。


 回避が遅れたミーアは翼を重ねて盾と成し、攻撃を止めると同時に、左足で敵の右上腕を、右足で左大腿をしっかりと掴んだ。

 ガーゴイルは一生懸命羽撃くが、ガーゴイルの翼ではミーアの分の揚力までは作れず、ミーア共々地面に向かって行く。その状況でもミーアは羽撃く事は無く、翼角に拳を握り、正拳を構えていた。

「セヤッ!」

 ミーアの正拳がガーゴイルの鳩尾に深く突き刺さった。ミーアはガーゴイルを放し、悶絶したガーゴイルは床に叩き付けられ、ミーアはひとつ羽撃いて華麗に着地した。

「え!これ全部ミーアがやったの?」

 ベルがガルルを連れて広間に入るなり驚きの声を上げると、空中の徒手空拳、正に空手を披露したミーアは、腰に手を当てて胸を張る事を以てそれに答えた。


「ああ、凄かったぞ。───直ぐにベルも見れるだろう。他の連中も俺達を敵とみなしたようだ」

 先のパーティーの仕事の甲斐あって、視認できる範囲ではそこまで敵の密度は濃くない。通路に誘き出さなくても、この空間を広く使って戦える程度の数だった。奥からたくさん来たときは───その時は一目散に逃げれば良い。


「ベル!魔法で俺の援護をしてくれ!」

「わかった!私が相手の隙を作る!」

 迫る敵はアレクスとベルのコンビが迎え撃ち。

「ガルル!一緒に暴れてくれ!」

「グゥオオ!」

 キールとガルルは遊撃隊で、敵の集結を防ぐ様に駆け回る。

「ミーア!ガーゴイルは任せた!」

「任されたよー!」

 ミーアは引き続きガーゴイル対策だ。

「エイルさん!後の采配は任せます!」

「ああ!皆んな好きに暴れろ!状況を見て助けに入る!」

「「おおーっ!!!!」」


 キールがガルルに乗って敵の奥の集団へ向かって行き、ミーアもガーゴイルから制空権を奪いに向かった。

「アレクス!ベル!オークが2体来るぞ!俺は左をやる!」

「「はい!」」

 アレクスとベル、そしてエイルは通路の前に陣取り、退路の確保をしながらオークナイト二体と戦う。

「マギアネモスバーラ!」

 ベルが放った不可視の魔力の弾は、アレクスの側のオークの顔面に直撃し、オークは顔を左手で覆った。

 目が見えなくても、右手で握っている大剣を適当に振り回す事は可能だ。オークは敵を寄せ付けまいと、ブンブン大剣を振り回すが、アレクスはそれに動じず、タイミングを見計らって踏み込み、喉元から脳天へ剣を突き刺した。

 エイルの方はオークが振り下ろす大剣の柄に、気合の掌底を打ち大剣を弾き返す。意図せず大剣を頭上高く振り上げさせられ、軌道を遮る物の無くなったオークの顔面に、エイルは気合の後ろ回し蹴りを打ち込んだ。

 二体のオークが続け様に倒れると、アレクスがエイルの方のオークに確実な止めを刺す。脅威であったオークナイトも、弱点の顔面へ攻撃を通す事が出来さえすればあっさりと倒せる。それでも攻撃に巻き込まれれば大怪我なのは変わらないので、どちらが先に致命の一撃を入れるかの緊張感が無くなる事は無い。


 キールとガルルは上手く立ち回り、アレクス達に一体のオークナイトを送って寄越した。

「アレクス、あいつは周りを見て学習しているかも知れ無い。さっきみたいにいくと思うな」

「はい!気を付けます!」

 向かって来るオークのその奥では、キールがゴブリンナイトの剣を捌き槍を突き、ガルルが鎧などお構い無しに噛み潰し、ゴブリンナイトを次々に仕留めている。

「エイルさん!俺が行きます!」

 アレクスがオークナイトへ向かい、ベルも魔法を発動した。

「マギアネモスバーラ!」

 ベルの風弾は今度は左腕で防がれた。完全に警戒されており、感の良い個体には同じ手は通用しそうに無かった。

「アレクスもう一度!マギアフォティアバーラ!」

 ベルは今度は炎弾を放った。炎弾なら例え防ごうとも、熱を嫌って防御行動は過剰になる───が、オークは横にずれて炎弾の射線から外れた。明らかに目視できるものは回避してしまえば良いのだ。

「マギアフォティアバーラ!」

 だがそこはベルだ。ベルは重ねがけしてあった炎弾を発動し、起動を修正してオークの顔面を追った。

 オークは左腕を振り炎弾を払ったが、散った火の粉でリアクションは少し大袈裟になり、それはアレクスにとって十分な隙だった。

「キアイ一閃!」

 アレクスは一閃だけでは止まらず、続けて二閃三閃と、未来の名匠の鍛えた剣と気合の合わせ技で、鎧ごとオークの右腕左腕と断ち、最後に首を取った。


「ベルー!助けてー!」

 上空ではミーアが連携の取れた3体のガーゴイルに追い回されていた。

「ミーア!こっちへ!」

 ベルに呼ばれたミーアは、ガーゴイルを引き連れてベルの方へ飛ぶ。

「マギアネモストロヴィロス!」

 不可視の魔力の竜巻がガーゴイル3体を巻込み、薄い翼膜を切り裂いてガーゴイルの唯一の利を奪い去った。


 キールとガルルは見える範囲の最後のオークナイトと戦っていた。魔法の援護無しの真っ向勝負は、ガルルがオークの攻撃の後の隙を付き、腕に噛み付き引き倒すと、キールが透かさず顔面へ槍を突き刺し勝負が決した。

「これで片付いたっぽいすね!───にしても、こいつ等狙い所が限られてて戦うのがしんどいっすわ!」


 アレクスがガーゴイルに止めを刺したところで、辺りには魔物の気配が無くなった。

「皆んなまだ余力がありそうだから、もう少し奥に行ってみよーぜ?」

「私はちょっと休憩が欲しいよー」

「ミーアは飛び続けたからね」

「ああ、ミーアはお疲れ様だな。どうだアレクス、見た所この付近は片付いたようだぞ?」

「そうですね!安全も確保できた事だし、ちょっと休憩しようか!」

 アレクスの休憩宣言で、エイル達は通路まで戻って腰を下ろした。

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