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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第22話 若者の休日③悪の魔

 甘いものが食べたいと甘味処へ向かうアレクス達の前方から、明らかに柄の悪い5人組が歩いて来た。

「アレクス······アイツ、北校の一つ上の」

「······サルディオ」

 アレクスとキールが注目したのは、額から好戦的な一本の角が生えた魔人種の男、サルディオだった。

 アレクスとキールが北校と喧嘩をした際に、一方的にボコボコにやられた過去があった。同じ学校の出のシュナは、近くに居たベルの背中に隠れ過ぎな程隠れている。

「オネーサン達ィ暇ならご一緒しませんかー?······あん?おいサル!あの女、サルの女じゃねーか?」

「なんスかーセンパイ······シュナか!おい、付いて来いよ」

 サルディオは親指で路地裏の方を指し、シュナを誘った。

「アンタとする話なんて無いし!」

「そんなこと言わないでさ!こんなところで立ち話もなんだ。ほら、他のお姉さんも一緒にどうぞー」

 5人の男がベル達を囲んで、誘導しようとしている。ベルもミーアもスズは困った顔でアレクスとキールに助けを求めた。

「なあ、お兄さん達、その話俺達も混ぜてくれませんかね?」

「ああ?······お兄さん達お連れさんだ。それなら一緒にどうぞ」

 男達はアレクスの言葉に一瞬顔を歪めたが、直ぐに作り笑顔に戻してアレクスとキールをお話に誘った。まともな話しじゃないのは一目瞭然だが、アレクス達は「大通りで揉めるのも迷惑だし、何より助けを呼ぶなんてダサすぎる」と男達の後に続いた。

「アレクス、相手は5人だぞ······やれるのか?」

「俺達は強くなってる······たかが5人だ!」

「だな!」

 アレクスとキールは小声で話し、お互いの握りこぶしを見せあった。


 男達に導かれるまま、アレクス達は路地裏に入って行くと、シュナが「きゃあ!」と叫び尻餅をついた。

「うわっ!ビックリしたー!ネズミ踏むとこだった!」

「チッ!驚かせんじゃねえよ!」

 シュナの足を回避したネズミは、壁伝いにチョロチョロと逃げ去って行く。こんなネズミが巣を作っているような人気の無い路地裏は、アレクス達も喧嘩で使っていた絶好の場所だった。

「おい!何処まで行く気だ!」

「あーまあ、こんなトコでいいか」

 話し合いの会場はここで決定した。


「で?何なの話って」

 口火を切ったのはシュナだった。

「最近は俺のトコに顔も出さねえでどうした?友達と遊んでる暇が有ったら、カネ持って来たらどうだ?」

「私もう止めたの。アンタともお別れ、さよ―なら、もう関わる気は無いから!」

「ンだテメェ?そこのドッチかに乗り換えたのか?」

「そこの二人は友達、今の彼は別の人」

「ク!クク······ハハハ!そりゃあそのカレが気の毒だ!テメエは汚え股開くしか能のないオモイ女だ!ククッ!戻ってこいよ?カネ稼いで来りゃあいくらでも愛してやるぜ」

 罵り合いが始まり、アレクス達の耳には知らなくても良い情報ががどんどん入って来る。話しの内容からシュナはカネ蔓にされていた事が分かり、アレクス達はサルディオに怒りを覚え、シュナに同情した。

「ふざけんじゃねえ!この紐野郎!──うッ!」

「シュナ!シュナを放して!」

「オイ!騒ぐんじゃねェ!テメェらからヤっちまうぞ!」

 サルディオがシュナの胸倉を掴んだ事に、ベル達が講義の声を上げたが、人の悪意に晒された経験が無い為、周りの男から一喝されるとビクビク縮こまり身を寄せ合って黙ってしまう。

「フザケてんのはテメェだろうが!男乗り換えたから関係無いだあ?そんな簡単に仲間ァ抜けられると思うなよ!」

「お前等なんて知るか!勝手に仲間に入れるな!放な───ッ!!」


 崩れ落ちるシュナを目で追ったベル達は、引きつった悲鳴を上げてその場に立ち尽くした。アレクスが倒れたシュナの肩を抱くと、鼻を押さえる手からは真っ赤な血がポタポタと零れ落ちていた。

「オイ!何やってんだ!女だぞ!」

「女だからなんだ?聞き分けの無いやつは躾けねえとだろ?」

「この!クズ野郎!」

 アレクスが立ち上がろうとすると、シュナはアレクスに抱き付き耳元で囁いた。 

「(アック······時間を稼いで······ネズミ······オルフを呼んでる)」

 シュナが尻もちをついたのは演技で、その時に使役している鼠型魔獣を放ち救援を呼んでいた。その事を理解したアレクスは、立ち上がりサルディオにゆっくり歩み寄った。

「なあ、サル先輩。俺はアンタにボコボコにやられた借りが有るんだ。借り返させて貰えませんかね?」

「お、おい、アレクス何言ってんだ?」

「······誰だテメェは?全く覚えてねえな。女置いてさっさと帰れ」

「自信無いんすか?一対一でやってやりますよ。せーんぱい!」

「チッ······センパイ!良いスか?」

「良いぜ、どうせ袋にするんだ。減らしてくてくれりゃあ楽になるってもんだ」

「キール、皆んなを頼む」

「いや、頼むったって······流れについて行けないが、まあ任せとけ!」

 アレクスはサルディオと対峙し、エイル達が駆付けるまでの時間稼ぎの戦いに挑んだ。

「オラ、サル来いよ!」

「チッ、ふざけたザコだッ!」


 男達の呆気に取られた声が聞こえる。それはきっとサルディオがアレクスの足元に転がっているからだろう。

「いやあ、スゲーな格闘技って······あのサルディオが一発か、あのときボコボコにされたのが悲しくなってくるぜ」

 キールは、立ち上がろうにも立ち上がれないサルディオを見ながらそう呟いている。

 アレクスは殴り掛かるサルディオの顎に隙を見つけると、次の瞬間には右のストレートがサルディオの顎を打ち抜いていた。時間を稼ごうにも、身体がそう動いてしまっていたのだった。

「テメェ、コラァ!もう構わねえ囲め!」

 残りの四人が動いたが、そこからはキールも加わり、喧嘩にも満たない何かが起こった。


「ハッ!アレクス、初めからこれで良かったんじゃねえか?」

 最早一介の不良のこぶし程度では、アレクス達に身構えてすら貰えず。最早何に対して構えているか分からない隙だらけの構えでは、拙いながらも技を身に付けたアレクス達のこぶしを防ぐ事は出来ずに、無様に地面に這いつくばっていた。

 アレクスとキールが転がっている男達を警戒して、ベル達がシュナを介抱していると、塀の向こうから足音が聞こえてきた。

「ああ、何だこりゃあ?使えねぇな、やられてんじゃねえか」

「男が2、女が···4、お!ドワーフが居るぜ!まだ食ったこと無えんだよ!」

「取り敢えずボコるか?」

「大人しくしてくれると助かるンだわ、奴隷でも傷が少ないほうが値が付くからな」

 アレクス達の期待を裏切り、エイルと同じか年上かくらいの6人の男が、ナイフをチラつかせながら歩いて来た。

「奴隷だと!あんたら、人攫いは禁止されてるのは知ってるだろ!」

「そんなもんここの決め事だろ?お前等はこれから他所の国の変態に売られるんだ。でも6人は多いな······ここから連れてくのに目立っちまうぜ」


「······こいつ等マジの悪人だ。キール······どうする?」

「どうするも何も、死んでも守るしか選択肢無えよ······」

「······だな!良いかキール!エイルさん達は来る!シュナがネズミを使って呼んだ!それまで死ぬんじゃ無えぞ相棒!」

「ああ!それはいい事聞いた!アレクス!お前も死ぬなよ相棒!」

 ナイフを持った男達はジリジリとアレクス達に迫る。それに押されてアレクス達は、袋小路の奥へ追いやられて行く。「死んでも守る」なんて言ったところまでは良いものの、いざ刃物を持った相手に仕掛ける覚悟は出来ずにいた。


 もう後が無くなり、仕掛けるタイミングの選択肢を失い、アレクスとキールがこぶしを握り締めたその時、アレクス達と男達の間を大きな茶色が遮った。

「「ファルさん!!!!!」」

 アレクス達は一斉にその特徴的な頭の男の名前を叫んだ。

「何だテメェは!」

「シュナ······オルフはちょっと寄り道して遅れて来るからね。さて、やはり脚が速いな、暴漢共後ろを見てみるといい」

 男達が何人か後ろを振り向き、視線を向けた先にはアレクス達のよく知る人物が立っていた。

「「エイルさん!!!!!」」

 エイルは手の平に乗せて来たネズミを、そっと地面に下ろすと、その目に強い意志を宿して立ち上がった。

「オイコラァ!テメェも冒険者だろうが!受注時以外の武器魔法の仕様は禁止されてんの知ってんだろ!」

「大人しく捕まってくれんと、力仕事出来無ねえ身体になっちまうぜ?───おい!刃物(コイツ)が見えねえのか!」

 声の一切を無視して歩みを進めるエイルを、男達は脅威と見なし6人全員で警戒をしている。男達のみならず、アレクス達も今のエイルから目を離せない程の怒気と殺気を纏っていた。


 男の一人が痺れを切らしてエイルに向かって行った。エイルは突き出されたナイフを握る相手の手首を取り、捻り上げながら一回転して男を投げ飛ばした。まだエイルの勢いは止まらず、近くに居た男の懐に飛び込み、畳んだ状態の脚を腹に当て、力強く蹴り込み男を撃ち出した。

「アレクス、皆んなを連れて向こうへ行くんだ」

 エイルは仲間をぶつけられて揉みくちゃになっている男達から目を離さず、アレクスに指示を出した。男達は蛇に睨まれた蛙の様に身動きがとれず、悔しそうにベル達(折角の獲物)を見送る事しか出来なかった。

 

「お前等大丈夫か!?安心しろ、駐屯さんを呼んできたぞ!───シュナ!お前、血が!殴られたのか!?」

 暴漢達を袋小路に追い詰めたところで、オルフが駐屯兵4人を連れて来た。

 シュナはオルフに抱き抱えられると、なりふり構わず子供の様にわんわん泣き出した。ベルとミーアとスズのところに女の兵士が駆け付けると、ベル達も啜り泣き始めた。


 アレクスが大通りからの事を分隊長に話すと、アレクス達は解放されて、今日はもうそれぞれ家に帰る事になった。

 シュナはオルフに背負われて、アレクス達は重い空気でとぼとぼと歩いていた。

「アレクス、キール、良く皆んなを守ってくれた。だけどな、こんなところまでノコノコ付いてきちゃ駄目だ。取り返しのつかない犯罪に巻き込まれるところだったんだ。もうガキ同士の喧嘩じゃないんだから、周りに助けを求めるべきだぞ」

 エイルは前世の致命的な教訓からそう言ったが、二人はそれには納得出来なかった。

「助けを求めるなんてダサいじゃないですか······もっと格闘技を教えて下さい!」

「そうっす!そうしたら俺達だけでも、エイルさんみたいに皆んなを守れます!」

「······。······良いかアレクス、キール、女の子を泣かせるのが一番ダサいぞ」

 二人はその言葉を聞いて直ぐにベルとミーアの顔を見た。ベルとミーアは実家が村の農家な事もあり、害獣駆除がアレクスとキールより身近にあった為、殺生に躊躇が無かった。そんな二人でも人の悪意に触れたのが怖かった様で目を赤くしている。虫くらいしか殺した事のないスズは尚更だ。


「オルフ······私って、オモイ女?」

「───ああ、オモイぞ。俺じゃなきゃ背負えねえ、オモイ女だ」

 ふと、オルフとシュナの話しが聞こえ、アレクス、キール、ベル、ミーア、スズの5人は、自分達が触れて来なかった、触れる必要の無い世界()を実感した。

シュナの鼠型魔獣

名前:ジュエリー ♂

体毛は土色。手の平サイズのネズミ。額に宝石の様な質感の小振りな角が有る。町の中は魔獣立ち入り禁止だが、只のネズミと変わらない上、取り締まるのが面倒臭いサイズなので誰も何も言わない。ティムが食べようとするので、一緒には連れて行けない。寿命は短いので5匹目の個体。

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