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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第13話 気の操作

 今朝もお天道様と一緒に起床して、アレクスとキールは得物を持って朝の稽古へと向かう。そんな直ぐに体力が付く訳は無いので、ベルとミーアは今日もガルルに掴まって稽古場へと遅れて到着した。

 この日はフックとアッパーと肘打ちを追加し、パンチのバリエーションを増やして基本の稽古を行った。ガルルもエイル達を真似て、お手とお替わりを交互に行っている。


 その後は昨日と同様に、アレクスとキールは素振り、ベルは瞑想、ミーアはエイルと組手を行った。

 鳥人種の大きな翼は、防御という点ではガードに使える面が広くて有利なのだが、その打撃を受けるのは本来の用途とは大きく異なる貧弱な羽だ。

 攻める側としては正中線上しかガードが空いていないので攻め辛いのだが、羽を叩き折れる威力が有れば、逆にこの上ない弱点になってしまう。なので金剛を習得出来れば、ミーアは強力な盾を手に入れることができるだろうとエイルは考えた。現状ミーア本人はそんな気はさらさらないのだが───


 それとエイルは鳥人種の特権である飛行からの格闘戦も考えてみた。

 真上からの攻撃は兎に角厄介だ。殆どの生物は頭上の、更に後方に回り込みながらの攻撃に対して、有効な反撃手段を持っていない。その反面いざ攻めるとなると、地に足が付いていないのでしっかり踏み込めず、鳥人種は小柄で軽いのもあって、ただ蹴るだけでは有効打は望めず、自分の方がバランスを崩すだけだ。

 そこは相手の肩に止まって踏み付けるという、単純な答えに行き着いた。今も手を抜いた組み手ではあるが、エイルはミーアに主導権を握られ、襟を鷲掴みにされている。


 アレクスはあの魔物を想定して、鋭く重い斬撃の練習をしている。大振りの攻撃の後でも、直ぐに動ける様に隙を晒さない動きを模索していた。

 キールは槍の取り扱いに慣れて、まるで曲芸の様なアクロバットな技を出している。一連の流れに牽制、強い打ち込み、払い、受けが入り実用性もあるので、これはもう『型』として成り立っていた。


 ベルの方は今日も魔力の回復に変化は見られなかったが、瞑想をサボってエイルとミーアの組手を見ていて気が付いた事があるようだ。

「エイルさん、コンゴーを使ったまま動けますか?」

 ベルにそう言われて、エイルは金剛を使用してから手を振ったり歩いてみたりした。

「やっぱりキの形が崩れていますね」

「動きながら使えないって事か?」

「エイルさんの姿勢と同じ形に固まっていたのが、身体が動くとそれが崩れています······身体とキの動きを合わせられますか?」

「気の動きか······そうか!」

 エイルは今まで、気は風船の中の空気の様に身体という入れ物に入っているもので、動かせるものだとは認識していなかった。金剛は身体を動かさない技なので、気の動きも何もあったもんじゃない、その場で固まれば良かったのだ。


 エイルはその検証を、目に見えて分かり易いジャンプで行う事にした。

「ほっ!······今のは普通に軽く跳んでみた」

「スズちゃんくらいですね」

 スズちゃんくらいは40センチくらいだ。エイルは次は気の流れをイメージする───丹田から太腿、膝、脹脛、爪先、それを筋肉の動きと合わせる。

「ほっ!お?うおお!どうだ!スズちゃん何人分だ?」

「スッゲ!ホントに出来た!」

「今のはスズちゃん二人分は跳んでました!」

「ざっと2倍!これなら強く踏切れば人を飛び越えるくらいは出来そうだぞ!」


 エイルのジャンプを見た後、アレクス達四人もその場で何処ぞの部族の戦士の様にピョンピョンと飛び跳ねている。

「お前等、先ずは気を練るところからだぞ?」

「エイルさん!私達少しはキを作れるんですよ」

「······マジか?」

 ベルだけでなく、他の三人も昨日から魔力とは違う異質な感覚を覚えていたらしい。

 そしてエイルもそうだった。明確に気を扱った事で、気を認識し感じる事ができるようになっていた。今ならボール状にイメージした気が、身体の何処を通っているかを感じることができる。

「よし!丹田呼吸法で気を練る技術を『練気』、丹田から四肢に気を送る技術を『送気』と名付け、これからは、練気と操気を基本の技術として日々の稽古に取り入れていこう!」

「レンキとソーキですね!よっし!みんな、目指せAランクだ!」

「アレクス、Aランクは教養も勉強しないとよ?」

「じゃあ、最強のCランクだな!アレクス、どっちが先にソーキ出来るか勝負だぜ!」


 魔力を感覚的に捉えることができる魔人種の中でも、魔力が変質した物を気として認識できるのは、今はベルだけだ。そのベルが言うには、ベル達4人の気の量は微々たるもので、それが才能で決まっているのか、特訓で増やせるのか、今はそれすら分かっていない状態だ。


 稽古を閉め、朝食をとり、エイル達はタングの店へ行ってミーアの靴を受け取った。ちゃんと採寸通りに仕上がっていて、ピッタリの履き心地の様だ。

「オウ、鳥人のネエちゃん。コイツを掴んでみろ」

 ミーアはタングから真剣を掴めと無茶振りをされ、差し出された刃を恐る恐る握った。

「───あ!凄いよ!剣を掴めたよー」

「掴めて当然だろう。そらよっと!」

「ッヒィ────!?!?!?」

 ミーアは突然剣を引き抜かれ、声にならない悲鳴を上げて尻餅をついた。

「ああ······指があぁ······指が指が付いてるよお······」

「どうだ!モロに打ち込まれなければ、受け流す事もできるぞ!これなら──ん?」

「ちょっと!お父さん!」

「あなた!今直ぐここに来なさい!」

 ミーアは涙目で確かに指が繋がっていることを喜び、タングは妻と娘からたっぷり説教を頂戴した。アルミナの計らいで代金を少し値引いて貰えた。


 ギルドへ行くと、今日は長蛇の列ではあるが少し空いている印象だ。通りにある酒場の軒先には、家に帰れなかった者達が未だに転がっている。ダンジョン関係は危険ではあるが、今はギルドの羽振りも良いので、冒険者も繁華街も今が書き入れ時だ。

「エイルさんお久し振りです。ベルカノールさんもお元気そうで何よりです。当然ダンジョン捜索ですね?今日は連絡事項が多いですよ!」

 受付ではアンナに当たり、昨日デュオセオスから聞いた事と、強力な魔物がCライン寄りで出現していること、それに伴いB.C.Dラインに全パーティーを割り振る事と、最初から複数のパーティーでの行動を推奨された。それとパーティーへの伝言で、服屋のツケをデュオセオスが払ってくれた事を伝えられた。


 ギルドの外ではオルフ達が待っており、今回は同行することになった。町の外でガルルと、アシュティナのパートナーの双尾猫(ディオウラガータ)の『ティム』と合流して森へ向かった。

 双尾猫は成体でも大型犬くらいの大きさで、ティムは亜成体くらいの成長具合だ。非常に身軽で一対二本の尻尾で器用にバランスを取り、森の中を縦横無尽に駆け回る。角山犬と比べればパワーは見劣りするが、その身のこなしは、身体が貧弱な人類にとっては天敵の様な魔物だ。

 ティムは人間の武器を咥えて使うことが出来、用意されている武器は、柄の両端に刃渡り20センチの刃が付いたナイフだった。


「やあやあアレクス君、キール君、どっちの子を狙ってるんだい?」

「え?いや、狙ってるって·····そんなのは無いですよ!何言ってるんですかオルフさん!」

「ははは!オルフ、それは言い方が良くないだろう。それではまるで身体目当てでパーティーを組んだようじゃないか?」

「でもよ、お近付きに成りたくて組んだんだろう?まさかパーティー内恋愛は禁止か!?」

「あ、いえ、禁止にはしてないです。でも、そういうのはパーティーが拗れるんじゃないかと······」

「かーっ!バレなきゃいいんだよそんなもん!」

「はーい!オルフウザイ。オッサンはウルサク言わないの!」

 アシュティナ───真名は『シュナ』が、オルフの腕に抱き付き話に割って入った。

 エイル達は、まさか行き成り真名を教えて来たのに驚いた。シュナはその理由を「ムードを出すために真名の安売りし過ぎて、私の真名には価値は無い」と、自嘲気味に言っていた。

「ねぇエイル。エイルはどっち狙ってんの?」

「(俺に振るのか······)好きになった方に声を掛けるさ」

「ヨユーぶってウザっ!」

「お、おおぅ······(これがここのギャルか?)」


 エイル達は信号魔法を確認し合って、Dラインの中央付近に捜索場所を決めた。前日Bランクパーティーが担当したような場所な為、強そうな魔物の死体が転がっている。

 そして前方には、角山犬の死体を爪で細かく千切って口に運んでいる昨日の魔物、ギルドの登録名『アーマースパイダー』がいた。

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