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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
始まりの日編

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第2話 新米パーティー

 エイルは今朝もお天道様と一緒に起床し、日課の稽古を短縮して行い、家から歩きで1時間弱程の町の中心街にあるギルドへ向かう。

 田畑広がる長閑な風景の先には、民家が建ち並ぶ住宅街があり、その中心に商工業の店舗、工房等が並ぶこの町『トルレナ』の中心街がある。その中央に堂々と施設を構えるのが目的地の冒険者ギルドだ。

 町に入り、大通りをギルドへ向かって行くと、多種多様な人とすれ違う。この世界の人類には4種類の人種があり、およそ6割を占めるのが人間種、犬猫を人間の骨格にした様な獣人種が2割を占め、腕の代わりに翼がある鳥人種が1割、角や翼や尻尾等の身体的特徴が出る魔人種が1割になっている。それと成人でも身長が50センチ程度のドワーフ、金髪に尖った耳が特徴のエルフが、それぞれ人類とは別の種を主張している。


 6つの丸を線で繋いで1つの円にしたデザイン、これがギルドの標識だ。錆びて緑青に染まり、貫禄が付いた銅製の看板を掲げた建物の前にエイルは到着した。やたら重そうで実は軽い、武骨な意匠の扉を開けて中へ入ると、屋内はいつも通り人がごった返しており、エイルは贔屓の受付嬢のアンナに挨拶に向かった。

「おはようございます。エイルさん、今日もお一人様ですか?」

 亜麻色の髪をポニーテールに纏めて、ギルドの制服を着こなした女性アンナは、エイルが近付くと先手を打って声を掛けた。

「今日は『バイト』の方にしようかと思ってるんですけど、募集中のパーティーはありますか?」

 そう言ってエイルはギルドの中を見渡した。入口側の窓伝いにテーブルが配置されていて、何組かのパーティーが話をしている。そんな中にポツンと一人、短めのスカートを履いて、胸元を見せつけた如何にもな服装をした少女が居た。少女の髪は薄いピンク色で、色素の抜けたような髪は魔人種の特徴の一つだが、服に隠しているのか、他の特徴的な部位が見られなかった。

 エイルの視線に気が付いたアンナは、隙かさず軽く釘を刺した。

「あの子は『バイト』を待ってますけど、もしエイルさんが今までに一度でも私を夜の方に誘っていたなら黙って紹介します。そういう子です。ケツの毛まで毟られますよ?」

「ははは···、それは勘弁だ」

 受付嬢のアンナはエイルより一つ歳上で、既に三児の母だ。程良く(こな)れていて、ある程度は下ネタもOKな、エイルにとって頼れるお姉さん的存在だ。元々冒険者で肝も座っており、血気盛んな若い冒険者から、若い受付嬢を守ったりもしている。

「では、いつも通り荷物持ちで、お天道様が沈む前に帰れるくらいのを照会しておきます。では、お茶でも啜って暫くお待ち下さい」

 エイルは、セルフサービスのお茶を汲んで、顔馴染の冒険者に挨拶をしながら、ピンク髪の少女から離れた席に座った。10年近くも冒険者をやっていれば、顔馴染も増えては減ってを繰り返す。死別したり、冒険者を引退したりで、顔を見なくなる者は少なく無い。10年近くも続けているエイルは、一応ベテランの部類に入っている。


「よう、エイル!今日は荷物持ちか?」

 そう声を掛けて、向かいの席にドカッと腰を下ろしたのは、グレーの体毛で筋骨隆々、頭の部分は毛が長く人間の頭髪の様になっていて、顔立ちは口吻が長い犬型獣人のオルフだ。

 エイルはオルフと、オルフのもう一人のパーティーメンバー、今はギルドの受付嬢のアンナと、過去に4人パーティーを組んでいたことがあり、今でも関係は良好だ。

「オルフ、お前こそ今日は一人でどうした?荷物持ちでもしたくなったか?」

「女の子を背負って歩くなら大歓迎だ。ところであの子、同行者募集してるんだろ?お前、一緒に行かないのか?」

 オルフは、ピンク髪の少女を見てそう言った。

「ああ、あの子はアンナさんが止めとけって」

 エイルがそう言うと、事情を理解したオルフはニヤリと笑って掲示板の所へ行き、依頼書を引っ剥がすとピンク髪の少女の所へ行った。オルフが依頼書を見せて話をすると、少女は立ち上がりオルフの腕に胸を押し当て抱きついた。オルフはその状態で、わざわざアンナの所へ依頼書を持って行き、彼等はギルドから出て行った。

 エイルはアンナと目が合い苦笑いをした。オルフは断わられているが、アンナを夜の方に誘ったことがあるし、独身の女にはよく声をかけ、お互いそういう関係と割り切った仲の女を何人か抱えている。

(あの子は成人したばかりか?オルフの事だから、カモられる事は無いだろうけど···)

 エイルはそう思った。オルフは自分の事は棚に上げて、身体を大切にしない女には厳しいところがある。エイルもアンナも、「あの子はきっとお灸を据えられるのだろう、お気の毒に···」と少女を少し憐れに思った。


 待てども声が掛からないので、エイルはもうソロで採取でもしようかと考えていると、受付けのアンナの所に3人組のパーティーが依頼書を持って行った。

(見ない顔だ···新人かな?多分俺のところに来るだろう)

 少し待っているとアンナがカウンターから出て、予想通りそのパーティーを誘導し、エイルのところへやって来た。

「エイルさん、宜しいでしょうか?」

 エイルは椅子から立ち上がり、男2人と女1人のパーティーと顔を合わせた。

「こちらの方がエイルさん。このギルドに約10年所属していらっしゃる熟練者です。今日は荷物持ちとしてお手伝い頂けると伺っております」

 アンナは続いてエイルに若者達を紹介した。

「こちらのパーティーの皆さんは、天啓の儀を受け、春から活動をされている駆け出しパーティーです。『勇者』のアレクスさん。『槍使い』のキールさん。『魔法使い』のベルカノールさん。それと、今日は不在ですが、パーティーの荷物持ち係の『魔獣使い』のミーアさんの4名で活動されております。丁度、臨時の荷物持ちを探していらっしゃったので、同行されては如何でしょうか?」

 アンナによる紹介が終わると、若者達は顔を見合わせて頷いた。

「今日は宜しくなおっさん!俺がリーダーのアレクスだ」

(おっさん?俺はまだ25だぞ)

 最初に口を切り出したのはパーティーのリーダー、勇者のアレクスだ。赤髪の人間種で、腰に安価な剣を下げ、防具は安価なプレートメイルだけ。駆け出しにしてはそれなりの装備は、彼の家がそれなりの稼ぎを上げている家庭だからだろう。『勇者』それは突出した能力が無く、気を付けないと器用貧乏になり易いが、勇ましく仲間を率いる事で、大体パーティーのリーダーを務めることが多い。

「俺がキールだ。おっさん荷物持ち頼んだわ!ギャハハ!」

(ははは···これは随分舐められてるな。俺達が16の頃もこんなだったか?)

 次に名乗ったのは『槍使い』のキール。茶色の髪ををオールバックにして束ねた人間種で、背中に投擲槍(ジャベリン)の束を背負っている。防具は革製の胸当てと手甲くらいで、装備のお金は投擲槍に注ぎ込んでいる様子だ。『槍使い』は言葉通り、長柄武器の扱いに長けた者である。

「私はベルカノールです。宜しく」

(うーん、愛想が悪いなあ···)

 そして最後に名乗ったのは『魔法使い』のベルカノールだ。うっすら赤味が残った桜色の長髪で、耳の裏辺りから上方に少し巻き気味で生えた角は魔人種の特徴の1つだ。『魔法使い』は魔力増幅器として魔石入りの杖を持つが彼女は手ぶらだった。継ぎ足しや補修の跡が多いワンピースに、丈の短い新品の革のケープを身に着けている。

「俺はエイルだ。今日はおっさんを頼ってくれ!経験だけなら豊富だぞ!」

「お!おっさんノリが良いな!今日は初のゴブリン狩りに行くんだ。おっさん弱いんだろ?戦いは俺達に任せておけよ!」

 アンナはうっかり吹き出しそうになったのを必死に堪えた。エイルの装備も彼等に負けず劣らず貧相な成りだった。服は毎日の修行で擦り切れ、継ぎ接ぎだらけの一般的な庶民服で、武器は腰にナタを提げているだけなので、若者に弱いと判断されても仕方が無かった。


 ギルドから出発する際に、エイルはアンナに呼び止められた。

「エイルさん、彼等が無茶をして怪我をしないように、しっかり見てあげて下さい。お願いします」

「了解!でも怪我したら、アンナさんの旦那が儲かるんじゃないですか?」

 アンナの旦那は個人の小さな医院を経営していて、エイルも何度もお世話になっていた。

「そんな事言うんですか~?旦那に言っておきますね。もうエイルさんは看ないようにと!」

「ははは、冗談です。それじゃあ、行ってきます!」

(生意気な奴等だけど、彼等はまだ死ぬには若すぎる。全力でサポートするさ)

 エイルはアレクス達から荷物を預かり彼等の後に付いて、広大な森の中のゴブリンが目撃された場所を目指して歩みを進めるのだった。

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