表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/279

第8話 試し切り

 視認出来たゴブリンは9体で、ベルの索敵魔法に掛かったのも9体。数は合っているが前回の反省で、エイル達は見落としと他の敵の乱入には神経を尖らせておく。

 ゴブリンの集団に弓を持ったものは居ないようで、剣を持った元気な奴が3体、棍棒を持った元気な奴が1体、後は棍棒を持った手負いのようだ。

「エイルさん!剣は俺とキールで倒します!エイルさんはガルルと一緒にベルを守って下さい!ミーアは上空から援護を頼む!」

 エイルとベルは、警戒しながらガルルの荷物を下ろしていく。ミーアは腰に下げた弓を足で掴み、同じく腰の矢筒から矢を足で抜き取り、高く飛びすぎて鳥型魔物を呼ばないように、木の背丈以下でホバリングして敵の出方を伺う。


 一方、前衛の二人はゴブリン達と睨み合いになっていた。このまま二人が突っ込んでいけば、最悪2対9の袋叩きに合ってしまうだろう。

「ミーア!ベル!敵を動かしたい、何か攻撃をしてくれ!」

「はい!」「任せてよ!」

 アレクスがミーアとベルに牽制の指示を出した。キールに投擲の指示をしなかったのは、今回は下ろし立ての武器で戦いたいというキールの気持ちを汲んでの事だ。


 ベルが両手を仰角を付けて突き出す。前衛の二人の頭上を越えて、放物線の軌道で撃ち込む構えだ。それを察したミーアは、ベルの射線上に入らないように、自分の射線を確保して、矢を番えてベルの魔法を待った。

「マギアペトゥラプロフォティア!」

 魔法の石を飛ばす魔法に炎を纏わせた魔法。シンプルな炎球よりスピードと直進性が劣るが、芯の石が重力に引っ張られて放物線軌道を描くことが出来る。

 石炎弾の炎部分の直径はサッカーボールくらいある。そんな物が自分達目掛けて飛んできたら、当然蜘蛛の子を散らして逃げ出すだろう。

「グギャアア!!!」

 逃げ遅れたゴブリンに見事に命中。石炎弾を食らえば、投石の物理ダメージと、炎によって火傷を負うことになる。身体を千切り飛ばす様な威力は無いが、殆ど素っ裸のようなゴブリンの戦力を奪うには、申し分無い効果を発揮する。


 好機が訪れたアレクスとキールは、剣を持ったゴブリンに突撃した。ミーアは仲間の加勢に向かおうとするゴブリンに向けて矢を射っていく。命中精度は低く中々当たらないが、自分が的にされていると思えば何か遮蔽物に身を隠そうと動くので、牽制としては役に立っている。

「ウッヒョウ!凄っげえ切れ味!」

 前衛で初撃を入れたのは、やはりキールだった。全長2メートルの槍のリーチは想像以上に長く、剣持ちのゴブリン一体は、成す術なく額に穴を明けられていた。

 もう一体に狙いを定めたキールは、今度は斬撃主体で戦い始めた。柄の長い槍は扱いやすく、テコも効くので力負けも無い。斬撃と突きの切り替えも早いトリッキーな戦いが披露されている。横槍を入れにきた棍棒のゴブリンは、槍を引き戻す動作の流れで、石突きで顎を砕かれ何をすることも無く失神した。

 そしてキールは新しい得物の感触を確かめながら、難無く二体目のゴブリンを斬り伏せた。三体目のゴブリンはアレクスに任せるようで、キールは棍棒持ちのゴブリンの掃討に回った。


 アレクスも前回の戦いを経て人型の魔物との戦いに慣れており、剣と魔法を織り交ぜた試験的な戦い方をしている。武器と魔法の併用は冒険者としての嗜みだ。致命傷は武器や魔法使いに任せて、魔法は消費を抑え、打ち込み前の牽制や目眩ましにリソースを割くのが前衛の立ち回りになる。


 ミーアの矢筒が空になったタイミングで、3体の手負いのゴブリンが後衛に突撃してきた。こうなると近接武器を持たない後衛は苦しくなるが、ベルの前にはにはガルルが居るし、エイルも居る。

 ガルルはミーアから攻撃の指示を受けると、その巨体でゴブリンに飛び掛かり、容赦無く喉を喰い破った。その流れで二体目にも飛び掛かり、同じく喉を喰い破った。

 もう全部ガルルが倒してしまいそうな勢いだが、三体目のゴブリンはエイルの方に走ったので、ミーアが気を効かせてガルルに待てをかけた。


(良かった、これで気の実戦訓練が出来る!)

 お誂え向きに、ゴブリンが棍棒を振り上げている。エイルはあのときの様に、身を固め、腰を落とし、棍棒のインパクトの瞬間を待った。

「フゥッッ!」

 インパクトの瞬間に気合を合わせると、エイルの顔面を棍棒が打ち「ガゴッ!」と鈍い音を立てた。

「痛ってぇ!(相応の痛みがあるが、皮膚の痛点を刺激された痛みだけで、こんなのはダメージとしては効いていないな)」

 防御は出来たので次は攻撃だ。「ナンデ、コイツ、ヘイキ?」と言いたげなゴブリンの顔面にエイルは正拳を叩き込んだ。

 ゴブリンは鼻っ柱を陥没させて地面に崩れ落ちたが、今のはただの正拳だった。防御の方は気を扱えているが、どうしても攻撃の方が上手く行かずエイルは首を傾げた。


 最後のゴブリンをキールが槍で一突きして、戦えるゴブリンは居なくなった。確実に死んでいる事を確認するために投擲槍で喉を突いてから、討伐証明として右耳を揃えて持ち帰る事にした。

 エイルが手本でやってから、アレクス達はそれぞれ2体ずつ耳落としを実践した。戦いの勢いで殺すのと、冷静になって刃を入れるのはまた感覚が違う。エイルもそうだったが、ゴブリンと言えども人と似た形をしているので、最初はどうしてもナイフを入れるのに躊躇してしまう。

 ゴブリンの肉なんて買い手が居らず、持ち帰る価値が無いので、ちょっと切り取ってガルルの餌にして、死体の処理は自然のサイクルに任せる事になる。


 アレクスとキールは新しい戦術と得物に確かな感触を覚えて喜んでいたが、ミーアは「武器を変えようか?」と悩んでいた。これは武器の扱いに特化しない者ならではの悩みだ。

 エイルも気の扱いが上手くいかず、少し悩んでいるとベルに声を掛けられた。

「攻撃にキが乗らなかった事ですか?」

「おお!良く分かったな。ベルには何か見えていたのか?」

「はい。攻撃の瞬間まではエイルさんの魔力······キは確かに充実している感じでした。でも攻撃の瞬間に、何かこう······ふわっとした感じになっていました。何故かまでは分かりませんが······」

「攻撃の瞬間······か。そこが解決出来れば、気を打撃に乗せることが出来そうなんだよな」

「あー、なになに?二人だけの話してるー」

「そういえば、まだちゃんと話して無かったな──」


 丁度いい機会だったので、エイルはここで他のメンバーにも気の事を話すことにした。殆どベルに補足を入れてもらっての説明になったが、魔力や気を視覚的に捉えることが出来るのだから、エイルよりも適任だった。

「じゃあ、エイルさんの修行を進めると、魔法が使えなくなるって事っすか?」

「いや、丁度良い落とし所を見つければ魔力とキを使い分けれるって事ですね?」

「魔力と気の使い分けか······おお!そうだな!アレクス達ならそれが出来るかも知れないな!まだわからない事だらけだから何とも言えないが」


 するとミーアが、誇らしげな顔でズイッと身を乗り出した。 

「何とも言えないなら、これは私達の秘密だよー!」

「え?なんでそうなるんだ?ギルドとかに報告しなくていいんですか。凄く重要そうな事ですけど······」

「それは俺も考えていなかった。そうだなぁ、今までも気の事や格闘技の事は話す機会は有ったけど、こんなに真剣になってくれたのは、ベルを始めここの皆んなだけだ。他への報告なんか、皆んなと研究してからで良いさ」

 正論なのはアレクスだが、エイルは今まで周囲の対応へ思うところがあったのと、純粋に仲間だけで楽しみたい思いから、そう言ってしまっていた。

「良いじゃねーか黙っとこーぜ!アレクスはそんな真面目なヤツじゃないだろ?」

「ああ!そりゃそうだ!エイルさんがそれで良いなら俺もそれで良いです。それに秘密の特訓なんてカッコイイじゃないですか!」

 そう言ってアレクスはキールの肩を小突き、キールはそれにお返しをした。男共がじゃれ合い始めたので、ベルはエイルに話しかけた。

「さっきのゴブリンの攻撃を受けたキの魔法は、何か名前が有るんですか?」

「気の魔法······名前かぁ〜、硬そうなのは·····そうだな『金剛』にしよう!」

「コンゴー?強そうだねー。でもエイルさん痛いって言ってたよ。私は痛いのは嫌だから飛んで逃げるよーきゃあ!きゃはは!」

 エイルが「このヤロウ」と伸ばした腕を、ミーアは跳んで躱し飛んで空へ逃げた。緊張の糸が切れたところで、エイル達は一旦休憩を取り、森の奥へと捜索の足を進めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ