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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第7話 シグナル黄

 パーティーは順調に森の中を進んで行く。連日人が踏み込んでいる為、生きた動物や魔物の姿は見当たらないが、食い荒らされた死体は転がっているので、夜な夜な食事に来ているモノがいるようだ。

「あっ!青が上がったよー。」

「じゃあ青を上げるわ。ミーア当たらないでね」

 ベルが打ち上げた青の玉は、上空で青の花を咲かせた。青の信号魔法(マギアシメア)は、位置確認の挨拶のようなものだ。今エイル達Cラインの一番先頭が、自分達の位置を教えるために打ち上げ、後続は自分達の位置を知らせ、複数のパーティーが同じ位置に固まらない様にする為の信号だ。


 色は指定されているが、形は術者のセンスが表れる。ベルは薔薇の様な花弁の多い花だが、他のパーティーでは動物や文字、凝ったやつは自分の顔を空のキャンバスに描いている。

「さあアレクス、どうする?前のパーティーは真ん中だが、俺達はB寄りか危険なD寄りにするか?」

「俺はB寄りにしようと思っています。キールは槍を買ったばかりだし、俺達の戦闘経験は野生動物と、魔物はゴブリンだけですから。まだ安全な方で慣らしていこうと思います」

 キールは少し不満そうだが、エイルも他の二人もアレクスに賛成だ。

「危険区域の手前は、人に追いやられた動物や魔物達が、奥にも行けず戻れもせずで必死に抵抗して来る場所だ。まだ安全な方だと言っても油断はするなよ?」

 これはアレクス達と、前回他でもない自分の油断から、ベルに怪我を負わせてしまったエイル自身に対する言葉だ。

 生態系の強者達は、潤沢な食料資源の有る森の奥で鎬を削っている。人類なんて強者の生息圏に追い遣られるのは、森の序列の下っ端共だ。強者に挟まれた下っ端共は、生き残る為に必死で抵抗をしてくる為、一瞬の油断が命取りに繋がるのだ。


 山猫型の魔物の死体を見つけ、アレクスはエイルに質問した。

「エイルさんは、山犬や山猫の魔物と戦った事はあるんですか?」

「3回だけだがあるぞ。レイドに参加したのと、偶然遭遇してしまったのと、討伐対象の依頼を受けたので3回だ」

「やっぱ、強いんすか?」

 キールが聞いてきたので、エイルはガルルに視線を向けた。

「ん?山犬の魔物ならそこに居るだろ。ガルルと同じくらいの戦力だと思っていれば良い」

 全員の視線が集まって、ガルルはまるで訳が分からないと言いたげに首を傾げた。

「ガルルの爪と牙の鋭さは良く知っていると思うけど、防御の方はどうだ?強力な武器と強力な魔法があれば何とかなりそうだろ。ガルルには武器は危ない物だと教えてあると思うが、そんな事を知らない魔物は剣に噛み付いて止めようとしたりするから、まぐれで勝てたりもするぞ」

 アレクス達は「成る程」と言いながら、ガルルを構ってやっている。

「エイルさんは、どうやって魔物と戦うのですか?やっぱり素手ですか?」

「ああ、素手だ。四足歩行型の魔物は、武器である牙と、弱点の顎が一緒に付いてるだろ?蹴上げで顎を砕いた事があるが、まあ、基本的には後衛の魔法使いの盾役に徹してるぞ」

 ベルの問に答えながら、エイルがガルルの喉をポリポリ掻いてやると、ガルルは首を上げて「もっと掻いて」とおねだりをする。アレクス達は物騒な話を聞いたのもあって、心配そうにガルルを見ていた。


 雑談をしながら歩みを進めている内に、森の風景から人の痕跡が少なくなってきた。この辺りが昨日の捜索の最終地点なのだろう。アレクスの指示で、今度はミーアが青の信号魔法を打ち上げるようだ。

「ああ〜!見ないでー恥ずかしいよー!」

 ポフン!と空に開いたミーアの信号魔法は、お世辞で言えば角の丸い星型だろうか。何だか良く分からない物体が空のキャンバスに描かれていた。

「5箇所出っ張りがあるから、アレは人の形だろ?」

「違うよー花だよー」

「スゲーな、俺はただの丸しかできないぜ」

「ただの丸にしておけば良かったよー」

「形なんてどうでも良いの!色が間違って無ければ大丈夫!」

「ベルぅ······それは、何か複雑な気持ちだよぅ」

「ミーア、俺は信号魔法でさえ使えないぞ!」

「······掛ける言葉が見つからないよー」

 ミーアの芸術(アート)に呼応して、他のパーティーが信号魔法を打ち上げてきた。上手いこと横並びに列が出来てきて、ここから更に調整をかけながらローラー作戦でダンジョンの入り口を探して行く事になる。


「おいアレクス!アレ見ろよ、スゲーぜ!!」

「うおお!ヤっベ!デカすぎだろ!!!」

 男二人が見つけてはしゃいでいるモノは、大地からそそり勃つ男の象徴だった。多くの冒険者が居れば、こういう馬鹿な芸術(わるふざけ)をするやつが中には居るものだ。

「あんな無駄に大きいだけのモノ、ただの魔力の無駄使いだよー」

「不必要に濃淡を付けて、無駄に技術力を見せつけているのが更に無駄ね」

 ベルとミーアは冷やかではあるものの、お年頃の為か興味は有るようで、問題のモノはちゃんと横目で見ていた。

 この世界で16歳は、もう親になっている者も少なくない歳だ。教材として使われている神話には、神が探り探り最初の人間()を生むまでがざっくりと載っている。だいたいそれが性の目覚めで、それ以外に性教育なんてものは特に無く、親が教えるのは子供が生まれてからの事で、そこに至るまでの事は、人生の先輩になった者から聞いて覚えていくのがこの世界の性事情だ。

 

「おーい仕事しろよー。ただの散歩じゃないぞー。ギルドが奮発してくれてる分はしっかり働けよー。過去の事例だとダンジョンの入り口は、不自然に盛り上がった地面にぽっかり穴があったとか、不自然に積まれた岩の隙間だとか、取り敢えず不自然らしいぞ」

 捜索に戻ったエイル達は、鬱蒼とした森の中を草木を掻き分け進んで行く。本命はD、Eラインなので、エイル達が見つける可能性は少ないが、裏口のようなものがあるダンジョンも見つかっているので、特別報酬の為にエイル達も気が抜けない。


「みんな!敵だよ!」

 突然ミーアがそう叫んだ。ガルルは森の奥の方を睨んでグルルル······と唸り声を上げている。

「ミーア!敵は見えるか?」

「ちょっと待って、少し高い所から見てみるよ!」

 アレクスの指示でミーアが偵察に移る。この辺りは背丈の高い草が多く生えていて視界が悪いが、草が大きく成長できる程度には木々の間隔は広いので、ミーアなら視認できるだろう。

「ミーアこれを持っていけ。今朝会ったファルも飛び道具対策で良く使う」

「これは······あ、盾だよ!エイルさん、ありがとう」

 ミーアは木の板を組み合わせて、取っ手を付けただけの簡単な盾を持ち、滞空して索敵を始めた。「同じ重さの木の盾と鉄の盾なら木の方が良い、鉄はその日の天候で、熱かったり、冷たかったりで嫌だ」とはファルの談だ。


「ゴブリン!ゴブリンが3体は居るよ!もう少し右の方に回って進めば、開けた所に出られるよ!」

 ゴブリンは敵の存在に気付いているようで、警戒態勢に入っている。正確な数と得物が分からないので、エイル達はゴブリンアーチャーを警戒しながら慎重に距離を詰めて行く。どうやら他のパーティーも交戦を始めたところが出てきたようで、エイルの視界に黄色の信号魔法がチラッ入った。


 パーティーは開けた場所に出て、ゴブリンの集団と会敵した。索敵魔法の結果、数は9体。その半数は真新しい引っ掻き傷や裂傷を負っている。怪我の程度から肉食動物か、魔物と交戦して敗走してきたのだろう。このまま逃げてくれれば戦闘は避けられるのだが、どうやらゴブリン達はやる気の様だ。

 アレクスが交戦状態を示す黄色の信号魔法を打ち上げ、いざ戦闘開始だ。

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