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魔を討つは異世界の拳〜格闘バカの異世界ライフ、気合のコブシが魔障の世界を殴り抜く〜  作者: 白酒軍曹
ギルド編

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第3話 ドワーフの鍛冶屋①

 エイルは支度を整え両親に挨拶をし、家を出発して町へ向かった。魔獣は町の中には入れてはいけない決まりなので、ガルルはエイル達と別れ仲間の魔獣の所へ行った。

 町に着くとダンジョン祭りが始まった為か、多くのパーティーがアクティブになり、それに伴い街の商業施設がいつもより活気付いている印象だ。

「皆んなは装備の新調はしたのか?」

「いや、まだあれから何も変わって無いです」

「そうか······まだ贔屓の店が無いのなら、俺の知り合いがやってる店を紹介しよう」

 商店街の大通りを外れ、普段よりは人通りが多くなっている小路に入ると、珍しいものが目に入った。

「あれはお隣さんの奴隷商だな。もう金の匂いを嗅ぎ付けて来たようだ」

 荷台が幌でしっかり覆われた1台の馬車を停め、二人組の男が馬を構いながら談笑していた。清潔感のある服に隠されてはいるが、服の突っ張りからかなり鍛えられているのが感じ取れる。

「ヘぇ〜あれがそうなんすね。でも、人が見えないっすよ?」

「商品の奴隷は中にぎゅうぎゅう詰めさ。これも社会勉強だ。覗いてみるか?」

 アレクス達は誰一人反対をする者はなく、中々見る機会の無いものに興味があるようだ。


 この国『エヴィメリア』では隣国『サングロリア』に合わせて奴隷制度を設けている。が、主たる目的は生活保護にある。臣民の保護として国王から地方領主には、飢饉の為の備蓄とその際の迅速な放出は指示されている。だが、貧困や生活が立回らなくなった者の保護は、各領で責任を持てがエヴィメリア国の方針だ。

 その策の一つが奴隷であり、各領は奴隷を所有する事が出来、その奴隷を領民に貸し出す事が出来る。奴隷は名前を領主に取上げられ、意見の禁止、無償労働が義務付けられ、その奴隷を借りた主人には衣食住の保証と、子供を作った場合は扶養、亡くなった場合は葬儀、奴隷の仕事内容、健康状態の報告が義務付けられる。

 今ここでエイルが奴隷を買った場合は、奴隷商から領主へ報告が上がり、エイルは領主が所有する奴隷を借りた事になる。

「済まないが、これで商品の説明だけしてくれませんか?」

 エイルは見学料を1人二百リィンとして千リィンを奴隷商の男に手渡した。男は金額に満足したようで、エイル達を荷台ヘ案内した。

「毎度ありがとうございます。今回はトルレナでダンジョン捜索が始まったそうで、冒険者パーティーにも、冒険者を支える店にも有用な商品を揃えて来ております。ここにはほんの一部ですが、南の町外れの空き家をキャラバンで借りておりますので、是非足を運んで下さい」

 隣国の奴隷商の男は荷台の扉を開けて、アレクス達4人に流暢なエヴィメリア語で商品説明を始めた。エイルはもう一人の男を捕まえて、少し話をしてみることにした。


「今回のキャラバンはどの程度の規模で来たんですか?」

「奴隷用の馬車5台と物資用が2台、奴隷が25で我々商人が7人ですね。この国程奴隷に厚遇な国も無いでしょうから、祖国で使い潰されるより、ここで買われた方が奴隷にとっても幸せでしょう。ただ、ここの皆さんは良く選んで買われるので、売れ残りも多くなりますね。ところでお客様はお連れ様と一緒に見なくても宜しいので?」

 男は聞いてないことまでよく喋り、エイルの善意を突いて購入を促してくる。

「ああ、彼等は他国からの奴隷商は初めてのようだから、勉強に良いかなと思いまして。売れ残った奴隷はどうするのですか?」

「そうですねぇ···我々はトルレナの領主様と契約をしているだけですので、領主様や有力な地主、女の子は使ってもらえそうな店を当たってみて、それで駄目なら祖国に里帰りですね。我々の商会は人攫いとは取引はしていませんので、我々の商品になる者は資金調達の為に売られたか、自分で身売りに来たか、そんな者が大半です。何の為のお金かは我々は存じ上げませんが、今回のキャラバンの目的地がこの国だと聞いたときは皆さん喜んでおられました。ほら、聞こえませんか?商品達の売り文句が」

 荷台に耳を傾ければ「自分はアレが出来る、コレが出来る」とPRが聞こえてくる。

 サングロリアの奴隷の扱いは良い噂を聞かない。()()()の衣食住の提供しか義務が無く、奴隷の人口動態も管理されていないので、姿を見なくなっても特に問題にならない。

 エヴィメリア国では売れ残り、各領でも扱いに困った自国民の奴隷は、老若男女問わず奴隷兵として国防軍に徴兵される。体力の無い者は雑用係としてだが、自国民に対しての最後の受け皿になっている。流石にエヴィメリア国王も、他国民にまで受け皿を用意する気は無く、その場合は奴隷商が連れ帰る事になっている。

「あっちも終わった様ですね。では、俺は向こうに合流します」

「まいど〜、また明日は別の面子でここに来ますので、またのお越しをお待ちしております」


 エイルは何やら浮かない顔のアレクス達と合流して、奴隷商の馬車を後にし路地裏を進んでいく。

「どうだった?この国だと奴隷は領の施設で売買されるけど、隣国からのはあんな感じだ」

「何だか、買わないのが申し訳無い気持ちだよー」

「そうだよな。何か助けてやりたい気持ちになるよな」

 ミーアとキールは情に訴え掛けられて、心を揺さぶられてしまった様だ。

「獣人の女性が元Bランク冒険者で弓使いだったので、飛び道具を増やす面でも考える余地はあるかも······」

「なんでよ~!私も弓使えるよ~!」

 何やらまともにパーティーの戦力増強を考えていたアレクスだったが、ミーアの地雷を踏んでしまったようだ。とは言ってもミーア自身も弓の腕は三流の自覚は有るようで、ただ絡んでいるといった感じだ。


 目的の店に到着し、エイルは店の説明を始めた。

「さあ、ここがアーロイ武具店。ドワーフの家族が経営する店だ。仲良くなると特注で鍋も作ってくれるぞ!」

「ここっすか?いやー、なんと言うか······」

「ボロっちいね!」

「ミーア、それ家主の前で言っちゃ駄目だからね」

 エイルは、それはそれはボロっちい民家の玄関の扉の棒状の取手を掴んだ。取手は扉の下の方まで長く、扉の丁番は軋み音を上げることも無くスムーズに摺動し、揺れた看板が「コツコツ」と扉を打つ音だけが静かに響いた。

 雑多な武具が雑然と並べられた商売っ気の無い店内、その奥にお茶を啜りながら、研磨をしているドワーフの女性がいた。

「いらっしゃいませ───んん?エイル君久しぶりね!あら?今日は若いお友達も一緒なのね。今お茶を用意するから座って待っててね」

「ありがとうございますアルミナさん。それではお邪魔します」

 アルミナは人用の椅子から飛び降りて、戸棚から人数分のカップをお盆にのせ、その辺の木箱をテーブルの近くに蹴飛ばし、踏み台にしてカップをテーブルに上げ奥の部屋へ入って行った。

「彼女はアルミナさん。ここの店主、タングさんの奥さんだ。アレクスとキール、この椅子を並べてくれ」

 エイルは部屋の隅に積まれた、鉄の丸棒をコの字に曲げて、2本一組にして天板を付けただけの簡単な椅子を二人に渡した。この勝手に椅子を出す作業も慣れた手付きだ。

「良いですか?勝手に使ってしまって」

「良いんだよ、どうせ勝手に使えって言われるから。それに、その······小さいだろ?」

 アレクス達は納得したようで、ウンウン!と大きく頷いて椅子を用意した。

 ドワーフの成人女性の平均身長は45センチだ。そんな人に力仕事はさせられない······と思うが、筋密度が尋常では無いので、見た目に反して筋力と体重は成人の人と同じくらいはある。力仕事も出来はするのだが、見ていて危なっかしいのだ。


 奥の部屋から、背の高い台車の上にお茶セットを乗せてアルミナが戻ってきた。台車を自分の椅子の隣に付け椅子によじ登ると、レンガの上に鉄板が乗った物体をテーブルに移してアレクス達に見せた。

「さあ、これは何でしょうね?」

 そう言ってアルミナは、金槌で鉄板を数回叩き、鉄板に手をかざして「丁度良いね」と言って、陶器のポットをそれの上に置いた。

「あ!コレあれっしょ!ドワーフの······アレ!」

「ああ!学校で教わったぞ、ドワーフの······アレだ!」

 キールとアレクスは分かってはいるが、一向に名前が出てこないでいた。村の学校では教えていないようで、ベルとミーアは首を傾げていた。

「そう、これはドワーフのアレ。赤熱鋼(バルムスタイル)よ!打つと熱を持つのが特徴で、強く打ち続ければ真っ赤っ赤になるの。百年くらい前に、ドワーフの国にできたダンジョンから、衝撃で赤熱する鉄が採れるようになって、脆くて使い辛いから鋼に合金して、使い易くしたのがコレよ!」

「じゃあ、私達の町のダンジョンからも、ソレが出てくるの?」

「コレが出ちゃったら、ドワーフの交易の武器が無くなっちゃうから出ちゃ駄目よ。何か新しいものが出るかもね?」

 赤熱鋼はその便利さと希少性から上流階級向けに高値で取り引きされており、トルレナの様な地方領には普及していなかった。

「魔力は感じますが、魔法······じゃないですね。これはどうやって熱を解除するのですか?」

「貴女は勉強熱心ね。放って置くか、空気から離してやれば発熱状態は解けるわ。埋めるのが一般的ね。水に漬けると発熱しなくなるから、そのときはもう一度打ち直せば使えるようになるの。でも劣化が著しいから、ちゃんと埋めてあげた方が良いわ」

 アルミナは台車の天板をずらし、そこの収納スペースに詰まっている砂の中へ、赤熱鋼を放り込んでしっかり砂を被せた。そして香りと味が引き立つ丁度良い温度のお茶を、カップに注いで「どうぞ」と薦めた。

「もう直ぐ旦那と娘が来ると思うから、それまでお話ししましょ」

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