飛び込み症候群
新年一発目の短編!!!
「飛び込み症候群って知ってる?」
高校の屋上にて彼女は聞いてくる。
「なにそれ、病気?」
フェンスの向こう側にいる彼女に私は、そう返す。
「ん~何て言うか、行きなり飛び込みたくなって、気づいたら飛び込んでるって感じの、先天的な物だね」
彼女はあっけらかんと説明してくれる。
「ふ~ん。で、今からその自殺でもするの?」
私はフェンスに背中を預ける。
「ハッハ~それは、飛び込みじゃなくて、飛び降りだろ~」
ム。それもそうか。
「じゃあ、速くこっち側に来なよ。危ないよ」
「お前が行かせたんだろ~」
冗談交じりに、フッと笑いながら言ってくる。
「はいはい。もうすぐ終わるんだから、戻るよ」
五分前には戻って、教科書とかの準備がしたい。次の先生は、遅れたらめんどくさいから。
「ねぇ何処に戻るの?」
「教室」
私はフェンスから背中を離し、扉に向かう。
「ワタシ、虐められちゃうよ?」
また、言ってる。
「あ~信じてないな~本当だよ。ワタシ、虐められてるもん」
まだ言ってる。
「ワタシ、このままだと死んじゃうよ?」
面倒な子だ。
「別のクラスだけど、いざとなったら守ってあげるから、戻るよ?」
彼女を見ずに啖呵を切った。
「分かった、戻りますよ~この私が戻りますよ~」
そう言ったあと、ガシャンと音が鳴った。下からは悲鳴が鳴り、スマホを取り出す者や人を呼ぶ者が居た。その群衆の中には青ざめる者も居ただろう。
彼女は入学してから、一ヶ月たったある日、問題を起こした。あるカップルに飛び込んだのだ。学年の中でも人気のあるカップルに。彼女曰く、ウズウズしたからだそうだ。それから彼女は孤立した。私は出来る限り、そばに居た。私が居る限り手を出す事は無いからだ。が、それも最近では、無くなった。なので、先生に相談しカギを貰った。屋上のカギである。私たちはそれを使い、昼休みの間は屋上に逃げ込んだ。今思えば、カギを貰おうと言い出したのは彼女だった。彼女はその時から、企てていたのだろうか? 今の私には知る余地もない。まぁこれが彼女にとってのハッピーエンドなら、良しとしよう。どうしようと、私の力では彼女を幸せにすることはできなかったから。ただ、一つだけ言わせてもらう事がある。
「飛び込みじゃねぇじゃん」