第89話 ガーゴイルの魔像
ヒメラキからの強引なやり方。
俺たちは死体を安全なところまで運び、後で冒険者ギルドの職員に伝えて供養してもらうことにした。
その後、もう一度遺跡の中に足を踏み入れ他の像がないか調べる。
ここが硬貨の発端ならば、必ずあるはずだ。
俺たちはくまなく探した。
すると確かにたくさんの像が置かれている。
どうやら蛙以外にも種類はあるようで、こうして見てみると精巧な作りをしていた。
「うわぁ、こうして見てみると結構いいね」
「同じことを思った。だが、無暗に触るなよ」
「わかっているよ。だって死にたくないもんね」
当たり前のことを言うんじゃない。
俺はエクレアが当然のことを言い出すのでムカッとした。
「コレ見て。全部文字が彫られた石板がある」
「そうだな。コイツはこの蛙の像と同じ石板が彫られているな」
「ってことはダメなんだね」
「いや、そうとも言えないぞ」
「どういうこと?」
エクレアは首を捻った。
俺は石造の後ろに立つと、そこに矢印がしてあることに気が付いた。
「コレを見てみろ」
「矢印が彫ってあるね? これって意図的?」
「偶然こんな模様ができると思うか? 仮にそうだとしても、他の像も見てみろ」
俺がそう指示するとエクレアとショコラは石造に後ろに立って、矢印を見てみる。
同じ大きさの矢印がしてあるが、2人もすぐに気が付いた。
全部形が違うのだ。
「あっ、全部矢印の形と向きが違うよ!」
「そう。だけど何のために?」
「それぞれの石像を矢印の方向に90度回してみろ。おそらくそこに……」
これは経験則だ。歩い程度は俺も冒険者として未開のダンジョンに立ち入っている。
勇者パーティーに所属していた間のことも活かし、俺はそう導き出した。
「よいっしょと」
「ほいっ。結構重い」
「1つが大体20キロぐらいはあるな。頑張れ」
一応激励はしておく。
こうして俺たちが石像を矢印方向に動かすと、あることにエクレアが気が付いた。
「あれ? この像だけが動いてないよ」
「そういうことだ。つまりその先にあるのが……」
「何もないけど……もしかして!」
1つだけおかしな像が残った。
ここまで動かした石像は矢印方向に動かすと、他の石像の元の形と位置になるよう計算されていた。
けれど1つだけ、まるで違う方向を見ていて、その先には四角い石柱がある。
ショコラは石柱に近づくと、注意しながらコンコンと叩いた。
「音がおかしい。かなり軽い」
「軽いってことは密度が無くてすかすかってことだよね?」
「そういうこと。これは間違いない。中に何かある」
「そうだな。そして中に何か隠すとなると、それだけ重要なもの。この遺跡、しかも拝礼するための祭壇だと仮定するならどうだ?」
俺は少しだけ時間を与えた。
エクレアは1分間考えると、「あっ!」と叫んだ。
いや、考えなくてもスッと出て来るだろ。
「もしかして中に入ってるのかな?」
「そうだろうな。とは言え中身は確認するまでわからない。トロイの木馬の可能性だってまだある」
「トロイの木馬?」
「確か正体を偽って潜入して、内部から工作活動をする人のたとえだよね? つまり、中に誰か隠れていて私たちを待ち伏せしている可能性があるってことでしょ?」
「よく知っているな」
「これぐらい常識だよ」
常識? 開幕の狼煙の意味がわからなかったコイツがそんな難しいことを知っているのか?
まるで中身が入れ替わったみたいに、急にエクレアの反応が良くなる。
グリスでも塗っているのか、コイツは。
「とりあえず中身を確認してみないとわからないね。開けてみよっか?」
「開けられるのか?」
「もちろん。って言いたいけど、普通にやると中のものを壊しちゃうかもしれないからね。カイ君、光剣貸して」
何を言い出すかと思えばそんなことか。
俺は一度返してもらった剣をすんなり返すと、エクレアの手に納まる。
律儀に返してきたと思えば、今度も使うのか。もうお前のものだよ。
「それじゃあやってみるね。《黄昏の陽射し》!」
エクレアは光剣に《黄昏の陽射し》を使い高温に炙った。
石柱の隣に立つと高温で炙られた光剣を突きつけ、溶かしていた。
「と、溶けてる?」
「そうだよ。こうやってちょっとずつ高温にして石柱を溶かせばいいんだよ」
いや、それはお前にしかできない技だ。
簡単に溶かしているが、ジリジリと音を立てその高温で焼かれていると思うと、全身が苦しくなる。
「ちょーっと待ってね。もう少し、もう少しで開くよ」
楽しそうにしているエクレアと違って俺とショコラは警戒していた。
いつでも攻撃もしくは逃げる選択肢を持っておく。
ショコラは猟銃をいつでも構えられるようにしていて、敵に備えている。
「最悪俺は逃げるぞ。死ぬのはごめんだからな」
「当然。でも戦って勝てるならそれでいい」
「それはそうだ。そろそろ来るぞ」
エクレアは大詰めにかかっていた。
額からは汗流れている。
「そろそろ開くよ」
バターンと石柱が扉のように切られて中身が見えた。
そこに現れたのは日焼けしていない石像。
ただし並みの石像ではない。凄まじいオーラを放ち、俺の目には本物に見えた。
現れたのは鋭い牙を持つ、鬼のような化け物。
今すぐ動き出すような迫力を併せ持つガーゴイルの魔像だった。
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