第74話 壊れた猟銃
最初の出会いはかなり淡白。
白い顔と白い髪。それから能面でも張り付けているみたいなまるで動かない瞳に無表情の頬の筋肉。コイツは一体何者なんだ。もしかしたら人形なのか?
俺はついつい口にしてしまう。
「お前は人形か?」
そう口にしたが、少女は俺に怪訝を呈するでもなくあたかも日常と言った具合で平然と返した。
「違う。私は人間」
「そうか。悪いな」
「構わない。よく言われるから」
話が全然弾まない。
一体俺は何と会話しているんだ。
例えコイツが人間だとしても、ここまで会話の欠片もないのなら不気味には想う。
もちろん黙っているだけの奴はいる。だが、ピクリとも表情が動かないのは奇妙だった。偏見かもしれないが、俺にとっては非常に背筋が凍った。
「そんなことより、ここにある武器は貴方が作ったの?」
「だったらなんだ」
「それなら話が早い。私の質問に答えて」
「質問に答える? 必要ならそれに応じて俺の判断で答えてやる」
「それならいい。第一に、ここにある武器は貴方が作ったのならかなり腕が立つ。つまり噂に名だから【武器屋】って貴方のこと?」
「何の話だ?」
それは王都だけの名前のはずだ。
もしかしたら俺の武器作りの腕と冒険者ギルドでの口頭のやり取りが原因で、俺の噂が出来上がってしまうのか。正直面倒になる前に話を切り上げた方がいい。
「そうだが。それがどうした」
「やっぱり。だったらお願いしたいことがある」
「お願い?」
「コレを直してほしい」
少女はそう言うと、背中に背負っていた猟銃を手渡してきた。
先の所が劣化して白くなっている。ソレだけじゃない。コイツはもう発砲ができないくらい銃口が溶けて折れ曲がっていた。
「コレを……今何って言った?」
「直してほしい。お願い」
どうしてコイツを直したいんだ。
俺はそう思う前に、こんなもの直せるわけがない。
何故そう思うのか。それを言う前に、はっきりと断ることにした。
「悪いが無理だ。他を当たれ」
「……どうして?」
「どうしてその前に、ここまでやった自分を情けなく思え。俺は同情はしない。武器を壊したのはお前だ。寿命を迎えたのかもしれないが、それでもコイツはもう直らない」
「だからどうして直らないの。お金ならいくらでも払う。だからこの子を直して」
「だから無理だ。他を当たってくれ」
俺は少女に猟銃を押し付けると無理やりカウンターに戻った。
しかし少女は引き下がらない。
俺のことを睨むわけでもなくジッと見てくる。視線が痛いが、無理なものは無理だ。何せその銃はかなり古く、今の時代ではほとんど見たことがない骨董品だった。
「どうしても無理なの?」
「どうしても無理だ」
「どうして? ねえ、どうして?」
「お前どうしてばっかりうるさいな。第一、俺は【武器屋】とは呼ばれているが自分のための武器しか基本的には作らない。ましてや修理は対象外だ」
「それじゃあここにある武器は? 手入れはどうしているの?」
「ここにある武器は手入れをしなくても初めの内は使える。まだ新品未使用品だからな」
俺はズバリと少女の心を折りに行く。
すると今にも泣きそうな表情を浮かべ、猟銃を強く握りしめていた。
どうしてそこまでなるんだ。何か理由があるのか?
「どうしてその銃に固執する必要があるんだ」
「コレは私のお爺様から頂いたもの。私が認められた証だから」
「認められた証? 狙撃手としてか?」
「……よくわかった。やっぱりこの武器のことを知っている」
「知っているだけだ。直せるとは言っていない」
そもそもこんな代物、一旦バラさないと無理だ。
とは言えバラしてまで直してやる気もないし、直さないといけない訳じゃない。
ここには武器を卸しているだけで、俺にとって固執する理由にもならない。
「悪いが帰ってくれ」
「どうしてもダメなの?」
「どうしてもダメだ」
「脅しても?」
「俺の方がお前よりも強い」
少女の手がナイフの柄を掴んでいた。
これは単なる脅しで、本心ではない。そもそも人を殺すことに躊躇いがある時点で、コイツにその覚悟はない。
「悪いな。一つだけ忠告しておくぞ。そんな骨董品はこの町で治せるやつはいないだろ。王都の方に行ってみるか、北の大陸に行くしかないな」
「それは困る……どうしよう。私にはコレしかないのに」
そう言ってチラチラ俺のことを見るんじゃない。
悪いが俺には本当で直してやる気もないし、そんな義理もない。
それがコイツもようやくわかったのか、大人しく帰るようだ。
「また来る。だから絶対に直してもらう」
「無駄足だな。せめて他の銃を使え」
「……そうしたくてもできない」
少し待て。今の言い方は何だ。
何処か涙のようなものが滴っていたが、これは嘘ではない。
俺は長年の経験で人の嘘を見破るのは自信がある。だが今の涙は真実だった。
「ごめん。でもまた来るから」
「……ふーん」
少し面白くなってきた。
だが俺に猟銃を直す技術はない。せめて構造がわかってからだと、俺は折を付けた。
すると店の外側に、誰かの気配を感じてしまった。
ここからすでに嫌な予感がビシバシ感じる。
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