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第71話 白布の悪魔

ちょうどこの章の次の章のオチが書けました。

「もう、最悪よ」


 マーリィは全身がドロドロの液体に濡れて、げんなりしていた。

 その姿を見たバレットはゲラゲラ笑っていたが、マーリィは睨みつける。


「何せ、その笑い。不愉快なんだけど」

「けっ。動かない奴が悪いんだろ」

「何よその言い方。この私がこんな目に遭っているのよ!」

「そんなのお前が岩の陰に隠れてドロガエルの唾液を食らったんだろ。全部お前が悪いんだよ!」

「そんなの貴方たちが倒さないから悪いんでしょ!」


 マーリィはバレットと口論になっていた。

 その光景を面白がっているのはもう1人いる。

 フレアは「いい気味」と言いながらリオンの隣を歩いた。


「いい気味よね。リオンもそう思うでしょ?」

「僕はそうは思わないけど、これでマーリィも少しは協力的になってくれるかな?」


 リオンはまだ夢を見ていた。

 しかしフレアは左手を振って「無理無理」と口にする。


「マーリィがするわけないでしょ。名ばかり【聖女】なんだから」

「そうだね。僕も名ばかり【勇者】にはならないようにしないと」

「リオンは誰よりも頑張っているわ。カイの分まで必死にね」

「……そうだね。カイならもっと楽に事を運べるんだろうけど、僕にはあんなことできないよ」


 リオンはカイのことが本当に凄いと思っていた。

 カイは何でも“する”“しない”で分けて考えられる。そんな割り切ったスタイル、流石にできないとリオンは自分の性格のことがよくわかっていた。


 あれからリオンたち勇者パーティーはカイが抜けてから勝てなくなった。

 リオンやフレア。バレットの素のスペックのおかげで食いつないではいたが、既に魔王と戦う掘徒の戦力は残されておらず、その原因として1人でも強敵を打ち負かすオールラウンダーがいなくなったからだ。

 その存在はブキヤ・カイ。素性もわからないし、素顔も不明な男の存在がこの欠落したパーティーには欠かせない存在だったと気が付いた。


「カイがいたらそれだけ楽だったか。マーリィもようやくわかってきたんじゃない?」

「どうかな。マーリィは勝手だからね」

「おっ! リオンが愚痴を吐いた」

「愚痴じゃないよ。これは弱い自分を戒めているだけ」


 そんなことないのにとフレアはわかっていた。

 とは言え、剣の道を歩んだことのないリオンが星の聖剣に選ばれたことで勇者の道を歩むことになったのは知っている。それがどれだけ苦行を重ねた修羅の道なのか、リオンは今その地獄を進んでいた。


「もっと強くならないとね」

「私はそうは思わないけど……私の高みは私が決めるから」


 フレアは杖を夕焼け空に掲げた。

 その姿はまだ小さいけれど、いつかは高みに到達するだろう。


 *


 ある日の草原。

 だだっ広い平野に白い服を着た少女がいた。

 彼女は遠くの獲物に狙いを定めて猟銃を向けている。


「まさかこんな遮蔽物の無いところで戦う羽目になるなんて」


 乗って来た馬車の護衛を任されていた。

 それには割に合わない出費を彼女は受けていた。

 だから舌打ちの1つも出るけれど、それでも仕事人の目つきで敵を狙っていた。


「仕方ない。鉛は止めて、魔弾にする」


 彼女はテキパキとした動作で鉛玉を捨てると、空の銃口を向ける。

 中には何も入っていない。撃ち出すものがないのに、一体何をしようとしているのか。傍から見てもわからない。自分の武器を捨てた行動に奇妙だと思うだろう。


「頼みますよ。冒険者さん!」

「あんなのがいたらのんびり町に行けねえよ!」


 彼女の耳には聞こえていなかった。

 ただ遠くの獲物を狙って視線を釘付けにする。

 すると彼女は何も入っていないはずなのに、銃の引き金を引いた。

 するとマゼンタ色の弾丸が放たれた。


「仕留めた」


 まだ当たってもいないのに確信していた。

 しかし間違いではない。彼女の狙いは完璧だった。


 マゼンタ色の弾丸が空気を切ると、草原の先。

 およそ800メートル先の巨大なミミズをぶち抜く。

 もちろん殺すのではない。魔弾が直撃しても、ミミズは魔石に変わることはなかった。一瞬気を失うと、ゴテンと音を立てて倒れてしまった。


「命までは取らない。ミミズは大地の竜。土をよくしてくれる」


 決め台詞を吐いていたが、表情の起伏は薄かった。

 声色も変わらなければ表情も瞳孔の意識も何一つとして変わることはない。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「やっぱ凄ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 何処が凄いのか。彼女にはわからなかった。

 一仕事終えると不意に違和感を感じた。

 銃口が煙を出して折れている。壊れてしまったのか? 彼女は焦った。酷く焦った。


「マズい。どうしよう。これじゃあ……どうしよう……」

「何だよ壊れたのか?」


 すると馬車に乗っていた他の客が彼女に声を掛けた。

 今にも泣きそうになっていたので可哀そうになったんだ。


「それならこれから行く町に言い武器屋がいるらしいぜ」

「武器屋? 武器屋はあるんじゃないの?」


 彼女は首を傾げた。

 普通はそう思うだろう。だけどあの武器屋は違う。何故なら異名が武器屋だからだ。


「いんや、あの町にいるのは本物の武器屋だぜ。何たって【武器屋】だからな」

「どういうこと?」


彼女は首を傾げた。

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