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第55話 攫われた少女

台詞多めだけど、コミカルなストーリーにしたいと思っているのでスカッと読んでください。


 冒険者ギルドの中がゴブリンの話で引っ切り無しになっていた。

 俺はエクレアに情報収集を任せ、適当に座って待っていると、別の冒険者に声を掛けられた。

 白いマントを羽織った背の高い男と女だ。


「お前は混ざらないのか?」

「混ざるわけがないだろ」

「そうか。あの子、かなり頑張っているみたいだな」

「頑張りすぎだ。体は1つしかないくせに、無茶のしすぎで目が痛い」

「でもそれだけ頑張っているのにはきっと訳があるのよ。もしかしたら単に戦闘狂なのかもしれないけど」

「俺は後者を押すね。それで、俺に何の用だ?」


 世間話はほどほどに、俺は話しかけてきた2人に話を急かさせる。

 すると怪訝そうな表情を浮かべることなく笑みを浮かべ、俺の前の席に座った。


「俺はコーフィン。こっちは相棒のソーダーだ」

「こんにちはカイ」

「俺の名前は触れ込み済みってことか。ってことは、武器だな」

「まあそれも興味があるよ。君たちがファフニールを幼体であれ倒したことは知っている」

「尾ひれは付いていないんだな。それで合っている」


 とりあえず情報が尾を引いてはいないらしい。流石はフルードの冒険者ギルドだ。

 とは言え、俺のことは広まっているようで、こんな風に普段話しかけても来ない上級冒険者が話しかけてきた。今更言い逃れはできるような状況でもない。俺は素直になって、話しを検討しようとした。


「それで何の用だ。御託はいいからさっさと話せ」

「そうか。話が早くて助かるよ。実はね、今回のゴブリン騒動、冒険者の間で提携が進んでいて今度一斉に討伐する運びになったんだ」

「そうか」

「お前も知っての通り、ゴブリンは数が多い。1匹は弱いが、銃弾線を得意としている奴ら相手に初心者は任せられない。聞いたことがあるだろ。ゴブリンは家畜を襲い、農作物を奪い取る。さらに女性相手には卑猥な行為をすることもあるらしい」

「まさに女の天敵よね」

「あくまでも一部の種だけだがな。ゴブリンのメス種は出生率が低い。とは言え、モンスターはダンジョンが生み出すものだから、あくまでも後天的な種に限るが、確かに野放しにはできないな」


 俺は頼んでいたオレンジジュースを飲みながら、話しを聞いていた。

 すると話の筋が通ったのか、白いマントの背の高い男ことコーフィンは俺にこう言う。


「カイ、一緒に戦ってくれないか」

「俺に? どうしてだ」

「君も上級冒険者だということはエクレアから聞いている。君の腕ならきっと多くのゴブリンを倒せるはずだ。ましてやお前の相棒は、女ではあるがゴブリンの天敵。【太陽の(サンシャイン)鬼狩り(ゴブリン・スレイヤー)】の異名が付いているほどだよ」

「【太陽の怪物殺し】の方が的確だろ」

「それもそうだな。本当は【太陽の剣姫】が正式な呼び名だ」

「アイツらしいな。悪いが、俺は俺のやり方でやらせてもらう。アイツらは金策になるからな」

「金が要るのか?」

「あって越したことはない。とにかく俺はもう帰る。エクレアにはお前たちから伝えておいてくれ」


 俺は換金した報酬をエクレアの分と分けると、冒険者ギルドを出ようとした。

 扉に手をかけて外に出ようとすると、誰かが思いっきり扉をくぐろうとした。

 危うくぶつかりそうになるが、身のこなしが軽く俺は怪我の心配もなくかわすことができた。


「ど、どうしたんだよアンタ」

「はぁはぁ……娘が、娘が……」

「娘?」

「娘がゴブリンに攫われたんだ。頼む、娘を助け出してくれ!」


 俺は中年の男に泣きつかれてしまった。

 腕を掴まれ、涙と鼻水をダラダラと垂れ流す男は俺の顔を見ると頭を下げてきた。


「えーっと、どうなさったんですか?」


 そこにパフィがやって来る。

 俺は腕を引き剥がすと、後のことをパフィに任せることにした。

 とは言えこのまま帰るのもばつが悪いので、最後まで話は聞くことにする。

 すると男はゴブリンが荷物の運搬中に馬車を襲撃されて攫われたと語った。

 護衛も付けずにここ最近のゴブリン騒動を知らなかった他の町の商人だったらしく、何もできずに各々と逃げてここまでやって来たらしい。


(賢明な判断だな)


 俺は男を称賛した。

 立ち向かって痛い目を見るぐらいなら力あるものに頼るのは悪いことじゃない。

 その方がゴブリンたちを刺激せずにもっと穏便に解決する糸口が見えてくるはずだ。


「娘はきっと酷い目に遭って……嫁に行けない体にされるんだ!」

「まあゴブリンは性欲の強い種もいるからな」

「カイ君!」

「本当のことだ。嘘をついてどうする」


 事態は一刻を争う。つまらない嘘をついている時間はない。

 俺は溜息を混ぜながらコーフィンに目配せをする。

 意図が通じたのか、鼻息を立てると俺は一足先に冒険者ギルドを出ることにした。


「あっ、ちょっと待ってよカイ君!」

「待つか。こんなところにいても時間の無駄だ」

「そんな酷いこと言わないでよ!」

「酷いだと? じゃあお前はこのままみすみすゴブリン共の好きにさせてもいいのか?」

「それは……よくないよ!」

「だったらやることは決まっているだろ。なあアンタ、攫われたのは森の近くだな。偉く静かな森だ」

「あ、ああそこだ!」

「やっぱりな。助かる」


 俺はそう言い残すと、冒険者ギルドを後にした。

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