第50話 とりま3000本
ノルマのようなもの。
香水の香りを吸い込むとアイツらのことを思い出した。
懐かしいと感じる一方で大変だろうなと憐れむ気持ちで溢れてくる。
とは言え、俺が気にしても仕方ないので香水を仕舞って忘れることにした。
「さて、エクレアの奴が戻ってくるまで寝ておくか……」
「お待たせ、カイ君!」
「早いな、今寝るとこだったんだぞ」
俺は眉根を寄せていぶかしむ表情を浮かべた。
しかしエクレアは満面の笑みを浮かべ、背中に背負った風呂敷きを下ろす。
ゴトン!
「な、何だこれは……」
「急いで買って来たんだよ鉄鉱石に銅鉱石! 鉛もあるよ!」
「おいおい、まさか買って来たのか素材を。しかも無駄に多いな」
こんなに買ってこなくてもよかったのだが、俺は呆れてものも言えない。
エクレアがまさかこんなに買い付けて来るなんて想像もできなかったので驚きだが、この量の鉱石を一度に持ち帰って来る体力が怖い。
エクレアは華奢な体格ではあるが、もしかしたらかなり筋肉質なのかもと変な想像力を働かせた。
しかしエクレア自身、答えを早々に教えてくれる。
「あっ、もしかして私のこと筋肉馬鹿とか思ってるでしょ!」
「そこまでは思ってない」
「ほんとかなー? でも私の《黄昏の陽射し》は筋肉促進効果もあるんだよー」
「そうか、そういうことか」
「納得してくれたね! これが光を熱エネルギーに変える私の魔法だよ。えっへん!」
回復だけでなく筋肉促進効果も備わっているとは思わなかった。
利点が大きい分、欠点が凄まじい。
俺は今一度呆れていいものか今度は悩んだが、エクレア自身が馬鹿っぽいので普通に呆れておいてやる。
「わかった、とりあえずわかった」
「絶対わかってないじゃんか!」
「当たり前だ。結局他人は他人だ」
「ドライだなー。私はカイ君のこと、もっと知りたいって思ってるのに」
「そうか? なら勝手にしろ」
「だから勝手にするね」
エクレアとの無駄話にも近い押し問答を繰り広げる一方、俺は早速武器作りに着手することにした。
「とりあえず、ここにある鉱石を剣や槍にするぞ。売り出しはお前がやれ」
「またお前って言った!」
「もういいだろ、このやり取り。とにかくお前は俺が武器を作るまでの間に客引きを散々して来い。もちろん俺の作った武器とは言うなよ」
「じゃあ何って言えばいいの?」
「適当に“いい武器があります”とで持ってアピってこい。お前の顔なら大抵の男は引っかかる」
「それって私のこと可愛いってことだよね! ねえねえ可愛いってことだよね!」
「ダル絡みするな。とっとと行け!」
「はーい!」
俺はエクレアを店から追い出した。
それから1人きりになると扉を閉めて完全に密閉される。
これでろくなことに意識を回さずに集中して作業ができる。人に売るものだ。良いものを作ってやらないとマズいだろうと、粗悪品を作りたくない意識に駆られて指先の神経を鋭くした。
「仕方ない。久々に限界を計るか……《武具生成》!」
俺は鉱石を大量に翳した。
それから右手で生み出した空間の中に鉱石が飲み込まれていき、俺のイメージを吸って変化する。
「まずは剣だな。とりあえず、500本!」
脳裏に閃光が過った。大量の剣が俺の魔法で生み出されていくイメージが湧いてくる。
しかし同時に体から急速に失われていく感覚が襲った。
これは魔力だ。魔力が根こそぎ吸われていくのが、いつも以上に体感で伝わる。
少ない量の魔力を込めればその分だけ数が生まれる。俺の蓄積された経験値とイメージがあれば、それなりの武器ができる。
とは言え俺のピーキーな仕様の武器を生み出さないようにするにはあまりに邪念が多すぎるので、普段は使えない。けれど密閉された空間だからこそ、この魔法は俺の魔力を吸って大量の武具を生成する。
「とりあえずこれでよし。次は槍だ……最初の500本を生成する!」
俺は次に槍を製作し始めた。
しかし魔力には限界がある。俺の蓄積されている魔力は魔法使いのそれには決して及ばない。
剣士である俺の魔力では一度に作れる武具に限りがあった。
「とりあえず今日は終わりだな。これ以上はしんどい……ってか、無理だ」
俺はぐでーんとして仰向けになった。
全身を襲う強烈な疲労感に苛まれ、体中が怠い。魔力欠乏症になってしまっている。
これを治すには休むしかない。
俺は瞼が重たくなると、抗うこともなく眠りについた。
また明日も同じことを繰り広げる。
「今日は盾と防具だな。サイズも合わせておくか」
俺は魔法で大量に武具を生成。それからすぐに寝た。
ご飯を食う元気もなく、体が重たくなって動かなかった。
そして当日、俺は朝目覚めるともう一度魔法を使った。
完全回復とまではいかない体を起こし、最後の力を振り絞って俺は粗有るものを作った。これでエクレアからの依頼は果たせただろうと満足し、俺は眠りについた。
「おはよう、カイ君! 調子は……ああっ!」
エクレアは扉を開けた。
するとカイが倒れていたので仰天し、すぐさま駆け寄るのだった。
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