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第49話 三度目の正直

今回は勇者パーティー視点です。

まだ黒龍相手に苦戦してます。

 一方その頃、リオンたちは苦戦を強いられていた。


 未だに黒龍を討伐することができず、血と汗を流している。

 フレアは魔力を消耗し、連日の疲れから意識も朦朧としていた。

 バレットもそんなフレアを庇いながらの戦いに、全身が悲鳴を上げている。

 リオンも勇者としての責務のため、何度でも黒龍に挑んでいた。


 これで三度目になる。


「はぁはぁ……今回こそは絶対に倒す!」

「その意気ですよリオン様!」


 後ろの方では何もしていないマーリィが声掛けをしている。

 フレアとバレットには目もくれず、優雅にアイスティーを一口。

 その様子を見ていた2人は既に反感を抱く気すら失せていた。

 役立たずの貴族女には何も期待しない。


「ちょっと、その目は何ですの」

「別に何でもないわよ」

「そうだな。何でもないぞ」


 明らかに含みを抱いていた。

 しかしマーリィは自分が真のお荷物だとも知らずに、貴族の身分を盾にして優雅な一時を味わっていた。

 その様子を見て誰しもがこのパーティーにとって必要のない存在だと気付けている。


「くそっ、なんでこんな奴に従わないといけねえんだ」

「仕方ないでしょ。私だって我慢しているんだから」

「ちょっと貴方たち、真面目にやりなさい。リオン様のおかげで仕方なくこのパーティーに入れて貰えているのよ!」

「そんなの要らないわよ。マーリィも回復魔法を使いなさいよ!」

「いやよそんな疲れること。私はこのパーティーの花で姫。私のために私の名声のために貴方たちは動けばいいのよ!」


 マーリィは勇者パーティーの汚点だ。

 彼女がいる限りこのパーティーは満足になれない。

 今も1人で頑張っているリオンを横目に自分の地位と名声だけを気にしている。

 王家と通じているからと言う理由だけで傍若無人すぎる。


「ほら、貴方たちも早く行きなさい。頑張ってくださーい、リオン様ー!」


 リオンの耳には聞こえていなかった。

 とっても真面目なリオンは黒龍相手にも怯むことなく、星の聖剣を叩きつけていた。


「はぁーっ!」


 黒龍の翼を切りつけた。流石にここまでの連戦で、左翼も右翼もボロボロになっている。

 火を吐くこともままならない状況に追い詰められた黒龍を前に、リオンは一切気を抜かない。

 星の剣を天にかざして火山灰を引き裂いた。


「フレア、魔法を頂戴!」

「わかったわ。《紅炎の煌めき(フレア・プライム)》!」


 星の聖剣がフレアの魔法を受けて炎に煌めいた。

 剣身が眩く輝いている。

 リオンはフレアの魔法を浴びた剣を突き出して、黒龍に叩きつけに行く。


「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 珍しく腹から声を出すリオン。

 けたたましい魂の雄たけびに、フレアとバレットは歓喜した。

 けれど対照的にマーリィは訝しい表情を浮かべる。


「何熱くなっているのかしら。勇者なんだから倒せて当然でしょ」


 眩しすぎるリオンの感情に気圧されていた。

 明るい感情から身を隠すように、皮肉った態度で眉根を寄せる。

 けれど黒龍もリオンに殺されるわけにはいかないと、口から黒い火球を吐き出した。

 最後の力を振り絞った死力の一撃だ。


「僕は負けられないんだよ。だから、僕は!」


 リオンは火球を切り裂いた。

 黒龍の切っ先に剣先を叩きつけるかと思えば、そこでリオンが取ったのは一度地面に着地してから黒龍の喉を貫く作戦だった。


「ごめんねカイ。君の戦い方、少し真似させてもらったから」


 リオンはカイの真似をして的確な一撃を打ち込んだ。

 けれどそれはリオンの戦い方ではなかった。

 もちろん【勇者】の称号には似合わないような戦い方だった。


「はぁはぁ……はぁ、やっと終わった。三度目の正直……まだまだだね、僕も」

「そんなことないわよ」


 リオンは疲れ切っていた。

 溜息を吐くリオンにフレアが声を掛ける。


「やったわね、リオン。お疲れ様」

「フレア、バレット。うん、なんとか倒せたよ」

「がっはっはっ! 久しぶりにリオンらしくない戦い方じゃねえか。なんだ、何かあったのか!」

「うん。カイならどんな戦い方するのかなって」


 リオンの口から出たのは親友の名前。かつて共に戦ってきた仲だった。

 フレアにバレットもカイのことを思い出していた。

 【武器庫】の彼がいてくれたことを今となってはもう遅いが、非常に後悔している。


「カイ、もう一回戻って来てくれないかしら」

「無理だろうな。アイツは一度抜けたパーティーに手は貸しても戻ってくるような奴じゃない」

「そうよね。ほんとあの女ムカつくわ」

「おい、聞こえるだろ」

「でも本当のことでしょ。あの女、自分の立場を利用して私たちの親に圧迫を掛けているんだもの。本当、嫌になるわ」

「確かにな……リオン、さっきから黙ってどうしたんだ?」


 リオンは香水を嗅いでいた。

 ピンク色の香水だ。フレアがマーリィが加入する前にお揃いで買い揃えたものだった。

 バレットもらしくなく香水を嗅ぎあの頃を懐かしみ、フレアも涙を浮かべるようだった。


 その様子を背後から見ていたマーリィは1人奥歯を噛んでいた。

 眉根を寄せて、表情は訝しむ。


「このままじゃマズいわね。何とかしないと……」

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