第43話 買い物を終えてフルードへ
きっとこんなことになったら普通の人はパニックになってしまうんだろうね。
俺は必要な買い物を全て終え、フルードの町に戻ることにした。
結局買いたいものは全部買えたし、クルミナさんから頼まれていた鍋も取ってきた。
よくわからない獣人の強盗団も無事に倒して感謝され、丸半日事情聴取に付き合わされたこと以外は満足のいく結果となった。
そして現在に至るのだが——
「やっぱりお前に乗っている時は最高だな。帳」
カァー!
俺はモトライドの姿になったトワイライト・クロウの帳の背に乗り悠々と来た道を戻っていた。
景色が反転しただけで、こんなに気持ちがいいなんて思ってもみなかった。
何より素晴らしいのは邪魔するものが何もないので、堂々と道の真ん中を走ることができたのだ。
帳も気持ちが良さそうに超高速で駆けている。
「相変わらず速すぎるのはいいとして、まさかあんなに高値になるなんてな」
予想通りと言えば予想通り。だけどその現実を上手い具合に引き寄せることができたので満足だ。
とは言えこれだけ大金を確保しても、そのほとんどはエクレアとの山分けになる。
俺の取り分も半減するが、アイツが一体何に金をつぎ込もうとしているのか。俺の想像を遥か上を行っていてもおかしくはない。
「まさかとは思うが孤児院にでも寄付するのか? アイツの性格だ。その可能性は十分にあるな」
とは言え肝心の孤児院はフルードにはない。
そのため何処に寄付するかによっては俺の知れる範囲外になる。
だがそのために俺を巻き込むのだろうか? 確かにいいことではあるが、己の自己満足のために俺を巻き込むかと言えばそうではない。正直に言おう。俺は寄付などしない。
「まあいい。何かあれば、別の町にでも拠点を移すだけだ」
俺の中でフルードは居心地のいい町でしかない。
とは言え冒険者は自由気ままだ。その気になればどこか別の場所を拠点にだってする。
ただし王都にはまだ戻れない。
あの忌々しい女がはびこっているとなると、まともに動くことはできないからだ。
「さてと。そろそろ町に着くな」
クカァー!
帳が寂しそうに鳴いていた。どうやらまたしばらく会えなくなるのが悲しいみたいだ。
俺は優しく翼を撫で、「またそのうち会える」と語りかけた。
そうこうしているうちにフルードは目の前だ。
俺は帳と別れ、1人町に戻るのだった。
*
「まあ、3日じゃ変わらないな」
俺は腰に手を当ててのんびりとした長閑な町に戻ってきた。
今日も綺麗な花たちが咲き誇るフルードの町で、何故かお祭りでもあるみたいに一段と盛り上がりを見せている。
どうやら何かあったらしく、人だかりができている。
「何だ、アレ?」
俺は気になって人混みの中に飛び込んだ。
男や女の束にもみくちゃにされて息苦しい。というか蒸し暑い。
絶対にただ通りたい人もいるはずなので迷惑だったが、中心に行くと誰かいる。
少女が1人立ち尽くしていたが、見たことのある姿だ。というか、エクレアだ。
「何やっているんだ、アイツ」
エクレアが立ち尽くしていた。悠然としている姿には気品すら感じる。
この間のファフニールとの戦闘で全身に怪我を負っていたが、どうやら完治したらしい。
少し見ない間に随分と額が付いたようだが、本人はそれを受け入れている。
気乗りしない訳ではないみたいで、太陽には相応しい称号だ。
「はっ、まあいい。とにかく俺は……」
「やっと戻ってきたね、カイ君!」
「はっ? ぬがぁっ!」
俺はエクレアに見つかってしまい、何故か腕を掴まれた。
信じられない力に引き寄せられ、俺は抗うこともできない。
人混みから引っ張り出された俺は中央に躍り出ると、何故か腕を上げられた。
まルで何かの覇者のような立ち位置だ。
「はいはーい注目!」
「な、何エクレア。それにその頭のティアラはなんだ」
「そう言うのいいからいいから。今回のファフニールの討伐、実はこの人が手伝ってくれました! みんな拍手拍手! さあお手を拝借。パチパチパチパチ!」
エクレアは突然俺を引っ張り出して、大観衆の前に俺を晒した。
一体何が起きているんだ。この大団円は何だ。
ここにいる全員はこの町の人のようだが、中には冒険者もチラホラ混じっている。
しかし拍手されてこんなに気持ちが悪い経験は少ない。
「おい、どうなってるんだ。洗脳でも受けたのか!」
「そんなことないよ! もう、人のこと疑いすぎ」
「疑うだろ。それより怪我の方はもういいのか?」
「おかげさまでね。これ、退院祝いだってみんながくれたんだ」
「そ、そうか。センスを疑うがまあいい。……ところで何に拍手されていたんだ?」
「それはね、この間のファフニールとの件だよ。最後にとどめを刺したのは、カイ君だもん。知ってもらわないとね」
「そんなのどうだっていいだろ。倒したんだ、功績なんて二の次だ」
「おお、流石はカイ君」
俺を玄人みたいに言うな。
功績なんかよりも倒した事実が問題だ。誰が倒したのかなんて考えている時点で冒険者の慣れの果てで、目がくれているゴミ以下だ。
俺はくだらないことに巻き込まれたとうんざりだったが、何故か町の人からは感謝されている。
「お前何かしたのか?」
「ううん。私はただ英雄は他にもいるよって言っただけ」
「問題発言が過ぎるだろ! 本当に英雄がこの町にいるわけでもないのに」
エクレアの頬をつねった。
エクレアは痛がっているが笑ってもいた。
不気味なムードに包まれた町の中、俺は戻って来る時間を間違えたと頭を抱える。とは言えエクレアが無事でよかった。
俺は安堵の溜息でも浮かべていたらしい。
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