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第34話 トワイライト・クロウ

過去編の続きです。

是非1話前とセットで読んでください。

 俺は困っていた。


 キュピー! キュピー!


 雛鳥に懐かれていた。

 俺のことを親と思っているわけではないみたいだが、さっきから俺の周りを飛び回っていて正直言えばウザい。


「お前親はどうした?」


 雛鳥は首を傾げる。どうやら親の姿がないらしい。

 見たところ白い小鳥のようだが、おそらく本来の色とは違う。

 大抵の生き物は子供の頃は体色が周囲の地形に溶け込むようになっている。

 けれどこの鳥は真逆の色をしていた。もしかしてアルビノ種なのか。


「俺はもう行くからな。早く親を見つけろよ」


 このままにしておこう。親と離れた雛鳥がどうなるのか。それを鑑みればこれ以上俺が手を出すことは自然の摂理に反している。反しているはずなのだが……


 キュピー! キュピー!


 雛鳥は俺の足元をトコトコ歩いて付いて来る。

 俺のことを良い人間とでも思っているのだろう。正直面倒ごとはごめんだ。

 楽しいことや新しいことは嫌いじゃないけれど、子供の面倒みたいなタルいことは俺の性格に合わない。


「はぁ、いい加減しつこいぞ」


 俺は睨みを利かせた。蛇睨みだ。

 これで逃げ出すかと思ったがすり寄って来る。さっきの戦闘で懐かれたのは明白だ。


「仕方ないか。親を探す……って、この暗闇でか?」


 正直無理がある。こんな暗闇だと、鳥の眼だと見つけることすら困難だ。

 俺は雛鳥を抱きかかえて周囲を一瞥したがそれらしきものはない。

 一旦下山しよう。また明日再度来ようと思ったが、何かが急接近する鋭い気配を感じ取った。


「何だこの威圧感……うわぁ!」


 俺は頭を持って行かれそうになって、右に飛んだ。

 鋭い爪が颯爽と切り裂いたが、俺はギリギリのタイミングで回避することができた。


「何が飛んできたんだ。間一髪でかわしたが、危なかったな」


 俺は雛鳥を落としてはいなかった。

 けれど目の前に突如として現れた巨大な黒いカラスは俺を睨みつけていた。

 凄まじい威圧感と優雅な姿に俺は目を奪われる。もちろん敵意を向けられているからだ。


「おいおい嘘だろ。これが噂に聞く怪鳥かよ」


 まさか夜間に出くわすなんて運が悪い。

 俺は急いで武器を取り出そうとして武器庫の空間(チェスト・スペース)を展開したが、手を突っ込もうとするもののカラスが襲い掛かる。

 俺は武器を取り出すことができずに仕方なく腰に帯刀していた剣を抜いた。

 簡単に折られてしまい、万事休すだ。


「マジかよ。武器を取る隙もないのか……」


 俺は気が付けば雛を落としていた。

 けれどその方が動けるので好都合だが、白い雛鳥は急に飛び立ってカラスの元に寄る。

 どうやら親鳥だったらしく俺のことを雛を誘拐しようとした犯人と思っているらしい。困ったものだ。


「流石にこれで大人しくなってくれよ。って全然じゃねえか!」


 俺はまだカラスに襲われている。

 突風を起こされて木の幹に叩きつけられた。まさか自分の雛も見えていないなんて、よっぽど血の気が多いらしい。

 こうなればやることは一つだ。俺は自分の体を囮にしてカラスを突っ込ませる。


「さあ来いよ。お前に鉄槌を下してる」


 俺はスタンガンを取り出してくちばしに当ててやろうと考えた。

 カラスはとんでもないスピードで体当たりをしてくる。槍のように鋭く尖ったくちばしを俺に向けていた。

 目を逸らしたりはしない。いつでも食らわせてやる覚悟を示した。


 キュピー!


 雛鳥が親鳥の目の前に飛び出した。親鳥も間一髪のところで動きを止める。

 どうやら雛鳥は俺がスタンガンを食らわせる前に親鳥を止めてくれたらしい。

 親鳥は我に返り、俺に向けていた敵意をすぐさま解いた。そもそも無視されていた。


「何だよそれ。どんだけ俺が不憫なんだよ」


 正直貧乏くじを引かされた。

 心の底から怒りが込み上がり、俺がイライラしていた。

 しかし親鳥は雛鳥から事情を聞かされて納得したのか、俺に頭を下げる。まさかモンスターがこんなことをするなんて。俺は初めての経験だが、死線を潜り抜けた後なので冷汗をかいてしまった。

 今はそれしか思い出せない。

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