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第28話 黄昏る前に敵を討つ

エクレアVSファフニール

 ファフニールはエクレアにブレスを吐いた。

 黄金色をしたブレスをエクレアはギリギリのところで回避するが、鉄鉱石が金に変わる。

 たまたま転がっていたものだが直撃していれば死んでいたかもしれない。


「あまり舐めて掛かるのはやめた方がいいぞ」

「そんな! だったら助けてよ」

「助けてもいいが、問題なのはファフニールに隙がないことだな」

「隙がないとダメなの?」

「怒らせたのはエクレアだ。少しだけ頼めるか。足止めでいい。何なら倒してくれてもいいんだぞ」


 俺はエクレアにそう促した。するとエクレアはムッと頬を膨らませると、ギンギンにキマった目で太陽の聖剣を振るった。

 《黄昏の陽射し》は確かに強力だが、自らも太陽に変えてしまう。

 それはすなわち、血液の流れをよくする血行の促進とは対照的に自らの体や脳に相当な負荷をかけることになる。それが《太陽の陽射し》がもたらす細胞の変化と圧倒的なまでの潜在能力の結果だった。


「エクレア、無理はするな。最悪死ぬぞ」

「大丈夫だよ。私こう見えても頭は冷静なんだよ?」

「本当か?」

「本当だって。じゃあ全力で叩き潰しに行くよ!」


 凄く心配だ。俺は少しだけ作業を速めた。ここまでの経験と見た情報を確保する。

 そこから得られる情報はかなり大きい。大きな意味を持つのは言うまでもないが、それはつまり俺の能力の真価に直結する。


「本当は俺が直接戦って情報を得た方が早いんだが、今は2人だ。パーティー戦を意識した武器にも慣れておかないといけないからな」


 正直効率は最悪。俺は今の状況で得られる情報アドバンテージには限界がある。

 だからこそ五感の全てで確保する。

 全てはこの時のためにある。そうだよな、フレア。


「はぁはぁ……もっと、もっとだよ!」


 キィーンキィーン!!


 けたたましい音が風切り音みたいに直に通達していた。

 エクレアは耳が痛くてほとんど音が聞こえない。ファフニールの体は硬く、熱で少しずつ溶かしてはいたがまだ足りない。だからもっと切り刻まないといけない。


「《黄昏の陽射し》!」


 さらに光を凝縮し熱量を生み出す。完全に太陽の聖剣は応えてくれていた。

 指先にまで馴染む感触。今の彼女は剣と一体となっている。まさにそんな姿が美しく……それ故に脆い。


「そろそろ決めに……ぐはぁつ!」


 エクレアは身をひしゃげた。全身が悲鳴を上げるような痛みを痛感する。

 体中が痛い。まるでナイフで刺されたみたいだ。だけどどこか違う。そのことに気が付いたのは、刺されたからではなくはたかれたと気付けたからだ。

 エクレアの右脇腹を抉っていたのは尻尾、ファフニールの太い尻尾だ。

 しなやかで滑らか。良く曲がる。

 警戒はしていた。だけど足りなかった。全身の骨が軋み、直観的に《黄昏の陽射し》は太陽の聖剣の効果も付与され、回復能力に回る。もちろん細胞分裂を度返しした、自然治癒だ。


「ふがぁっ!」


 エクレアの体が吹き飛ばされた。

 俺はそれを見て武器の生成を早めた。もう少し。もう少しで活路を見出す最強の武器ができる。それまで耐えられるか……もう少し。後20パーセントもない。


「くっ、はぁはぁはぁはぁ……あはは、油断しちゃった、かな?」


 エクレアはダメージを負い、ボロボロになりながらも立ち上がろうとする。

 けれど指先に力が入らない。何とか振り下ろされた腕を受け止めるのは筋力から来るもので、剣の力を頼れない。全身が痛くて辛かった。

 だけど投げ出しはしない。エクレアはまだ戦える。戦わないと、前に立たないといけない。


「私は……まだ……」


 エクレアは前屈みになって意識が途切れた。

 体が空気みたいに軽くなり、投げ出される。もうダメだ。

 ファフニールの攻撃が迫り、死を覚悟した——


 けれど……


「よくやった、エクレア。おかげで間に合ったよ」

「カイ、君?」


 エクレアの意識が一瞬だけ回復した。

 暗闇から抜けた時、見えてきたのは俺の姿。

 不思議な炎の剣を握り、ファフニールに対峙した。

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